昭和四十六年大久保清の犯罪 「戦後最大の連続女性誘拐殺人事件」

監督 山泉脩
製作 1983年 日
出演ビートたけし、手塚理美、佐藤慶、東野英心、坂野比呂志、大塚道子、木内みどり、三上寛、水島美奈子、辻萬長(辻万長)、菅本烈子、志方亜紀子、岡本かおり、紗貴めぐみ、八神康子、川上麻衣子、太田あや子、左右田一平
受賞  
紹介筑波昭「昭和46年、群馬の春大久保清の犯罪」を原作にTBSが製作したテレビドラマ。
婦女暴行罪で服役後模範囚となって仮釈放された清は、出所後わずか二ヶ月の間に8人もの女性を次々と暴行殺人に及ぶ。しかしその一方で、彼は一日に十数人もの女性をナンパしており、その大部分は、肉体関係があったにせよ和姦であり、無事帰宅している。それどころか、清を愛していると公言してはばからない女性さえいる。果たして、殺された女性と無事だった女性との運命を分けたものはなんだったのか。本作では、そこに焦点を当てて、大久保清という人間を作り出した環境と、彼の心の琴線を解き明かしてゆく。

「世間を騒がせた大事件の当事者すべてを演じて見せる」と豪語するビートたけし。しかし、彼が次々と歴史的犯罪者の役に採用されるのには、確固たる理由がある。それは、演技の巧さとか顔が似ているとか、そういった技巧的、表面的なものではなくて、彼の存在から香り立つ「匂い」にある。犯罪者・・・、それは、人間の弱さや醜さ、ずるさ、そして社会の歪みさえもが凝縮された存在。皆がふたを開けることを拒み、顔をそむける汚物溜めのようなものだ。そうしたものと通じる香りを、ビートたけしという俳優は備えている。それは、彼の太い首であり、小さい頭であり、落ち着きの無いそぶりであり、背が低く猫背である背格好であり、その全身から醸し出されている。そして、彼はそうした自らの匂いを発散させる術を持っている。だから、皆が知っている著名犯を演じたとしても、顔が似ている必要はない。観初めて数分で、彼自身がモデルを自分へと引き寄せてしまう。本作でも彼のそうした魅力と異様な存在感が遺憾なく発揮されている。最も素晴らしいのは、被害女性の自転車のところへ諮問をふき取りに現れたのを見咎められた際に見せる目と顔の微かな表情の歪みと、直後に逃走する瞬間の息。見た者の全てに彼が犯人だと確信させたであろうその行動の再現は、もはや演技の枠を超えている。

評価 ★★★
  

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