GLOW 僕らはここに…。

監督 前田哲
製作 2000年 日
出演上原歩、斎藤重人、生田いづみ、乙津大作、小島裕二、綾田俊樹、角替和枝、松田美由紀
受賞  
紹介ストリートムービープロジェクト第1弾。
若者のファッションに絶大な影響力をもつティーン向けファッション誌の読者モデルたちや、半端じゃない不良だったり人気DJだったりと、メディアには登場しないけれど若者の誰もが名前を知っていて噂し合うようなストリート系ヒーローたち。本作は、オーディションで選ばれた演技経験のないそんな彼ら彼女らが、彼ら自身の日常から切り取った物語をビビッドに、リアルに演じる。プロの俳優は、大人役の三人(綾田俊樹、角替和枝、松田美由紀)のみ。
 高校を中退して実家の喫茶店をひとり切り盛りするアユミ(上原)は、親友との喧嘩がもとで町を離れていた元番長シゲト(斉藤)をひとりずっと待ちつづけていた。そして、シゲトは帰ってきた。無言でアユミの店を訪れるシゲト。酒屋で働き始めた彼は、前掛け姿だ。アユミは、そんなシゲトを悪くないと思う。こうしてぎこちなく再開した二人の友情と交流。しかし、町ではシゲトの後を受けた番長グループと、アユミの弟が所属する新興の不良グループとが対立の度を深めつつあった。アユミの弟を庇う中で、否応なくまた抗争に巻き込まれてゆくシゲト。彼の自分への気持ちがわかるアユミはそれを止めることができない。アユミの粋なはからいで親友と和解したシゲトだったが、皮肉にも、シゲトは彼の存在を快く思わない番長グループの手に落ちてしまう。。。
 新宿ツタヤでうろうろしてたら偶然見つけた本作。しかもメイキング・ビデオとセットでの貸し出し!「パコダテ人」「sWinGmaN」つながりの前田哲監督作品とあって、衝動的に借りてしまったのだ。そして早速鑑賞してみて、マジにビックリ。アユミとシゲトの見せる男女関係を超えた友情の美しさに、ものすごい感動が波状的に襲ってくる。ヤバイ。この映画、大好きかも。ハートにストレートパンチ!
 こんな物語、よっぽどピュアな心を持った人にしか書けないし、演出できない。前田哲恐るべしである。携帯メールの使い方も最高!ふと「パコダテ人」を思い出してしまう。
 ピュアでシリアスなストーリーなのだが、彼らの間で交わされる会話は時に軽妙で、爆笑を誘うシーンもそこかしこに。
 主演の上原歩さんのカワイさは最高級!その上演技もナチュラル。特に、悔しさや屈辱をこらえるときに下唇をグっと噛み締めるあたりなどは、とってもイジラシイ。
 同じく主演の斉藤重人は、カリスマの名に恥じない存在感で、シゲトの役どころにピッタリ。さすがストリートで名を鳴らした筋金入りの不良だけある。
 こうした俳優陣が素人ばかりとは、メイキングを観るまでは思いもしない。それほどに監督の演出はカンペキ。僅か二週間あまりの撮影期間でここまでの完成度に仕上げるとは、これぞプロの所業だと感心。
 ロケーションの設定も素晴らしい。特にアユミが働いている喫茶店がすごく素敵。カウンターの位置や窓の大きさが、外を行き交うシゲトの運転する配達車を寂しく見送るアユミのシーンの演出を最高に盛り上げてくれる。さぞかし探すの苦労されたことだろう。監督によると、この喫茶店は撮影後取り壊されたはずとのこと。残念だけど、このフィルムの中で出演者たちの流した汗や涙と共に永遠に生き続ける。それもまた、素敵だ。
 音楽にもコダワリが。そう、全曲がインディーズ・アーティストの楽曲なのだ。これがまた、それぞれのシーンに見事にマッチしてクール!

 この物語の続編など、早く彼らの次の出演作が観てみたいものだが、このプロジェクト自体は継続が困難な状況にあるようで、残念だ。


評価 ★★★★★
  

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