ことばの解説   「梅雨」

<梅雨明け>

 一口に「梅雨明け」と言っても、明け方にはいろいろあるのをご存知ですか? 

(1)梅雨前線が北に移動し、かわって「太平洋高気圧」に南から覆われる形になる標準タイプ
(2)「梅雨寒」や「ヤマセ」の元凶である、冷たい空気でできた「オホーツク海高気圧」が、梅雨前線を押し下げながら次第に南下し、いつしか冷たい空気を失い、「太平洋高気圧」と区別がつかなくなって・・・という居直りタイプ
(3)日本付近に停滞していた「梅雨前線」が次第に弱まって雨や雲の区域が狭まり、ついに消えてしまう、というウヤムヤタイプ

 (1)が典型的、というか、みんなが思い描く明け方で、雷を伴うような雨とともに前線が南から北へ通過して梅雨が明けた後はしばらく「太平洋高気圧」が安定して強く覆うために「梅雨明け10日」と言われるような暑い晴天が続くことが多い。 今年の西日本の明け方(梅雨明け宣言が正しかったとすれば)はこのタイプだったと言えるでしょう。

 関東はここ1週間以上、天気図に特に前線が描かれていないのに、くもりがちの天気が続いていますが、これは、東海上で南下した前線と、西日本で北上した前線との間をつなぐ、湿った空気の通り道がちょうど関東の上空に位置する状態が続いているからです。 つまり、(3)のウヤムヤタイプに近い状態なのです。 このタイプは梅雨明け宣言を出すタイミングが難しく、また晴れ間が多くなっても夕立ちが起こりやすいなど、どうもすっきりしない天候が続く、いやなタイプです。

<梅雨前線って?>
 そもそも、「前線」とは、別名「不連続線」とも言われるように、気温などの性質の違う空気どうしの境界線の事。 よく聞く「温暖前線」とは、板に乗った砂を息で吹き払うように、暖かい空気(息)が冷たい空気(砂)をまくり上げて押しやってゆくときにできる両方の空気の境界線。通常は北上します。 「寒冷前線」とは、冬の夜、暖房の効いた部屋の窓を開けた時に「サーッ」と足元に冷たい空気が広がるように、暖かい空気の底に冷たい空気が潜り込みながら広がってゆくときの冷たい空気の先端部にできる両空気の境界線のこと。通常は南下します。

 一方、「梅雨前線」は「停滞前線」と呼ばれる種類の前線で、特に決まった移動方向もなく、遠くインド洋から、あるいは太平洋高気圧の周りを回ってきた南西から吹く風と、「オホーツク海高気圧」(地上)や中国大陸(上空)から吹く北よりや東よりの風との間に挟まれて、空気が吹き集まる帯状の領域のこと。 
 もともと前線の南側の南西風は暖かい海の上を長く吹き渡って暖かく湿っている。また、「帯」には南北から空気が集まってくるので、行き場のない空気は上に逃げる。つまり、梅雨前線に沿って集まってきた暖かく湿った空気が上に昇ることで、濃い雲ができ、雨が降ることになるわけです。
 



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