テルミン 2001/10/21

■「テルミン」(1993 米) 評価 ★★★ 
監督/スティーヴン・M・マーティン
出演/レオン・テルミン、クララ・ロックモア、ビーチ・ボーイズ、ほかゆかりの人々
<恵比寿ガーデンシネマにて公開中>
 
□あらすじ
「テルミン」という、無粋な木箱から突き出た二本のアンテナに両手をかざすことによって電子音を自在に操る不思議な楽器。発明者であるソ連のテルミン博士とともにこの楽器が辿った数奇な運命を、電子楽器の始祖と言えるこの楽器を愛した人たちの証言と、テルミンが使用された数々の映画やコンサートの映像によって綴るドキュメンタリー。

□感想
 テルミン(英語圏の人はその綴りから「サーミン」と発音している)という名前は知らなかったが、この楽器の楽器とは思えない奇妙な外見とあの独特の音色は一度見たら忘れられない。日本でかつて「コーネリアス」(小山田圭吾)が数度テレビでの演奏に使用していたことを今でもはっきり覚えている。ドラマでも(「ブラックアウト」だったか・・・?)部屋の片隅にこうした楽器を置いて主人公が時に奏でる情景に、なんとも言えないハイソな印象を持ったものだ。この映画では、聞きようによっては人の声のようにも感じるこの音色が、宇宙ものやお化けものの映画の効果音やロックの新時代的味付けに意外に多用されている身近な楽器であることを教えられる。少なくとも「伝説の」とか「幻の」などという修飾語はこの楽器に対して適切ではない。バイオリンだと思っていたらこのテルミンだった、というものも多そうである。音の性格上あまりメジャーな作品には使われなかったようだが、我が愛するバーグマンの「ガス燈」の映像を拝めたのは儲けモノ(が、はじめは時代背景を示そうとしての演出と勘違いして、耳を澄ます事をおろそかにしてバーグマンの姿に見とれてしまったので、あのシーンのどこにテルミンが使われていたのか気付かなかった・・・)
 若くして楽器発明家としてニューヨークに本拠を置いて活動していた最中にソ連に逮捕監禁され、その後20年以上にわたりKGBの技師として諜報活動に携わることになるテルミン教授。そのために、メジャーになるチャンスを逸することになった楽器テルミン。でも、そのマイナーさが逆にミュージシャンたちに強い信奉を生み、その愛され方は他の楽器の比ではない。
 「NHK特集」を見ているようで、ドキュメンタリーに徹するあまり映画としての演出には欠けるが、実はシンセサイザーの大祖先にあたるこの斬新な、でも超原始的な楽器の不思議世界に身を置く二時間も悪くはない。

<koala>

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