青い夢の女 2001/12/23

■「青い夢の女」(2000年 仏独) 評価 ★★★★ 
監督/ジャン=ジャック・ベネックス
出演/ジャン=ユーグ・アングラード、エレ−ヌ・ド・フジュロール
<渋谷シネ・アミューズにて公開中、ほか大阪・福岡で公開予定>
□あらすじ
 カウンセリング中の居眠りから目覚めた精神科医の前には、患者の死体が。これは精神科医のトラウマの仕業なのか?それとも・・・
□みどころ
 同じ俳優は二度と使わないと言うジャン=ジャック・ベネックス監督をして、アングラードはそのあまりの成長ゆえ、「ベティー・ブルー」以来16年ぶりに主役に再抜擢させた。そして彼はその期待に十二分に応えている。恋に落ちる男を演じさせたら、今やアングラードの右に出る者はいない。彼と女性との間にはどんな膜も物質も存在しないかのように、彼はスッと愛する女性の懐に滑り込む。女性にそれを拒むかどうかの判断をする余裕を与えずに。本作でも彼のそんな特異なキャラクターは遺憾なく発揮され、代表作の一つとなった。
 精神科医が精神を病み、患者との関わりの中で逆に癒されてゆく。ブルース・ウィリスの名作「薔薇の素顔」を髣髴とさせる本作だが、「正常って、何?」と言いたくなるほどに登場人物の誰も彼もが精神を損なっている都会の闇にあっと驚く物語の重層構造が加味されて、サスペンス度は本作の方がずっと高い。
 それでいて、意外なまでの穏やかな結末。だから、サスペンス嫌いの人でも十分満足できるし、カップルでの鑑賞には大吉。もちろん、アングラードのファンには、一作で二作分堪能できる贅沢さがたまらない。

<<<<<<<<<<関連作品紹介>>>>>>>>>>>
■「ベティ-・ブルー〜愛と激情の日々」(1986年 仏) ★★★★
監督:ジャン・ジャック・ベネックス
出演:ジャン=ユーグ・アングラード、ベアトリス・ダル
□みどころ
 奔放な19歳の少女と売れない作家の破滅的な恋。彼を支えたくて支えきれなくて、そのジレンマがやがて自傷的行動へと彼女を走らせる。短くも鮮やかな彼女の記憶は、彼に無限のインスピレーションを与える。
 愛の伝道師、アングラードの真骨頂。激しくも脆い「愛」という存在をこれほど鮮烈に描き出した作品が他にあるだろうか?

■「恋の病い」(1987年 仏) ★★★★★
監督:ジャック・ドレー
主演:ナスターシャ・キンスキー、ジャン=ユーグ・アングラード
□みどころ
 老医師との穏やかな日常と、若く有能な医師との激しい愛の日々の間で揺れる美しくも薄幸な女。彼女を不治の病による絶望の淵から救い出すことができるのは、はたして・・・。
 恋に対する純粋さを表現することのできる数少ない俳優二人の夢の共演。ナスターシャの熱烈なファンである筆者が、中でも最も愛する一作。

■「二キータ」(1990年 仏) ★★★★★
監督:リュック・ベッソン
主演:アンヌ・バリロー、ジャン=ユーグ・アングラード
□みどころ
 存在を消され、殺し屋として特殊教育された少女が、愛を見つけ、職務からの開放を掴み取るまでの苦悩と悲しみの日々。
 後にブリジット・フォンダ主演でリメイクされた「アサシン」のオリジナル。本作に関してはこのリメイク版も大変な秀作で優劣つけ難いのだが、「ニキータ」は、ギリギリの精神状態にあるヒロインをそっと包み込むようなアングラードの静かな優しさが非常に魅力的で、幻想的でさえあるエンディングが深い印象を残す。

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