２００１年ベスト３＆各部門賞発表

ChapterＩ　年間ベスト３

　上半期、下半期の各ベスト５を既に発表していますが、あらためて昨年１年間を振り返ってみて、劇場で鑑賞した全６９作品の中から新作映画に絞った形で、作品の完成度から上位３作品を選定してみました。何れも、１００余年の歴史が築き上げてきた映画の魅力をギュっと詰め込んだ贅沢な内容と、無ジャンル感、無国籍感、無時代感といったユニバーサルな感覚が成功に結びついています。観終わって映画館を出るときの、思わず頬が緩むような満足感はこの三作に共通するところ。

第一位　「ショコラ」　＜J・ビノシュ＆J・デップ＞
　上半期一位のこの作品の地位は不動。ストーリー、演技、音楽、映像のコラボレーションがあまりに見事で、映画の世界に心から酔いしれることのできる夢の時空間を提供してくれた。ヨーロッパ映画の色香を漂わせながらも台詞は英語。フランスが舞台でありながら、ジプシーも登場し、音楽はエスニックなフォルクローレ。計算されてのものか偶然かはわからないが、こうしたフュージョンが醸し出す無国籍感も、メジャー派・ミニシアター派の枠を越え、民族の違いも超えて、より多くの人に違和感なく受け入れられる大きな要素となっている。

第二位　「ムーラン・ルージュ！」　＜Ｎ・キッドマン＆Ｅ・マクレガー＞
　下半期からのエントリー。ミュージカル、コスチューム劇、喜劇、ラブストーリー、ファンタジー、悲劇。あらゆる映画の要素を取り込み、それらを見事に融合して全く新しいジャンルを築き上げた功績は大きい。日本人の多くが持つミュージカルという形態への抵抗感も本作には全く当てはまらない。本作も「ショコラ」同様、ジャンルのフュージョンや時代設定を交錯させたことによる無時代感といったユニバーサルな感覚が多くの人に心の敷居を下げさせた。

第三位　「マレーナ」　＜Ｊ・トルナトーレ監督＞
　ドラマティック、ときめき、笑い、悲しみ、美しきヒロイン、あっと言わせる伏線、そして音楽。古きよき映画の楽しみのすべてを凝縮した贅沢な一作。
子供というのがトルナトーレ監督メジャー三作の共通項だが、本作では、少年が大人の女性に抱く微妙な感情という普遍的なテーマを据えることで、より多くの、特に男性に共感を得ることに成功した。

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ChapterII　部門賞の発表

　今年からの新企画として、各ライターが勝手に創設した部門賞の発表があります。毎年選定に悩むベスト３に漏れた作品にも授賞できるので、ライターにとってはありがたい企画^^;

★最優秀作品賞　：　「ショコラ」
　ベスト１作品が自動的にエントリー。自らを見事に作品の中に溶け込ませてファンタジーの世界を構築することに貢献したベテラン主役陣の演技センスに乾杯。

★監督賞　：　ロウ・イエ監督　（「ふたりの人魚」　製作：中日独）
　ストーリーと映像の完全なまでの融合を成し遂げた、みごとな脚本と演出に驚嘆を隠せない。そしてこれが、新人監督の独立第一作であり、インディーズ作品であることを知って、その驚きは倍加する。

★最優秀主演男優賞　：　ジュード・ロウ（「スターリングラード」）
　愛する者のため、ナチを射殺し続けた孤独なスナイパー。主人公の悲しき冷徹さを見事に体現したJ・ロウの演技力と存在感は鳥肌モノだ。本作では、ロウに限らず配役の素晴らしさが目立った。

★最優秀主演女優賞　：　裕木奈江（「光の雨」）
　次に誰が＜総括＞の犠牲者となるのか。挫折した革命闘争の末路、恐怖の館と化した潜伏拠点で日夜繰り広げられるリンチ殺人を冷静に支配する女戦士。浅間山荘事件をリアルタイムで知らない世代であるにも関わらずのこの演技。女優・裕木奈江ここにアリ、を改めて強く印象付けた。

★撮影賞　：　「ＥＵＲＥＫＡ」
　カンヌで世界を唸らせた""クロマティック・ブラック・アンド・ホワイト""（＝彩色白黒）という技法が、トラウマから抜け出そうともがく主人公たちの心象風景を見事に映像化した。

★最優秀助演男優賞　：　エド・ハリス　（「スターリングラード」）
★最優秀助演女優賞　：　宮崎あおい　（「ＥＵＲＥＫＡ」）
★脚本賞　：　「青い夢の女」
★音楽賞　：　「マレーナ」「ショコラ」
★特別賞　：　「エレベーター」　（トルコ，　Ｍ・アルトゥノクラル監督）
★観客賞　：　「アメリ」

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監督：前田哲　主題歌：Whiteberry（1/23発売アルバム『カメレオン』収録）
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