スカーレット・ディーバ 2002/03/01

 あのイタリアン・ホラーの巨匠、ダリオ・アルジェントの愛娘、アーシア・アルジェントが監督・脚本・主演を努める「スカーレット・ディーバ」の感想をいち早くお届け。あわせてアーシアの今までの出演作から幾つかを紹介。

■「スカーレット・ディーバ」(2000年 伊) 評価:★★★ 
監督・脚本:アーシア・アルジェント 原題:SCARLET DIVA
出演:アーシア・アルジェント、ジーン・シェパード、カーク・ヴェインズ、ヴェラ・ジェンマ
<東京渋谷 シネ・アミューズにてレイトショウ公開中>
□あらすじ >>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
 若くして高い評価を受けたイタリア人女優アンナは、底知れぬ孤独と不安を癒すべくドラッグとセックスに溺れて行く。そんな中で彼女はオーストラリア人ミュージシャンに出会い、一夜で激しい恋に落ち、未来に光明を見出すのだが・・・。
□みどころ >>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
 アーシア・アルジェント。言わずと知れたイタリアン・ホラーの巨匠、ダリオ・アルジェント監督の愛娘である。そして本作は彼女の初監督作品だ。
 いやはや、壮絶である。かの「雨上がりの駅で」(1996伊)で、その清楚で理知的なたたずまいとみずみずしい演技で我々を魅了してくれた愛しのアーシアは何処へ?!彼女が演じるのは、秘部を含め全身にタトゥーを施し、夜毎男を漁り、ドラッグに恍惚とする緋色の女神(=スカーレット・ディーバ)と謳われた女優アンナ。この主人公像は、多くの点でアーシア自身と共通項を持つ。一体どの程度の部分までが<自伝>なのか・・・。アーシアファンとしては心配せずにはいられない。しかし、そうしたプライベートな興味とは別に、清楚なお嬢様女優の域を出なかった「雨上がりの駅で」から僅か4年でこれほどまでに「成熟した女優」としての技量を磨き上げた彼女の才能と努力には驚きを隠せない。たとえ<自伝的>ではあれ、やはり銀幕の中でのアーシアは主人公アンナを<演じて>いるのだから。
 興味深いのは、アンナを通して浮かび上がるイタリアでの女優事情。「イタリアでは、女優は娼婦。」この衝撃的なアンナの発言は、つまらないヌードグラビアの仕事に辟易し、仕事と引き替えに公然と彼女の体を要求する大物プロデューサーの魔手をかわしつつ、女優から映画監督へと転向すべくもがく彼女自身の姿によって裏付けられて行く。
 作品では、そんなアンナの軌跡を、アンナの過去の記憶へのフラッシュバックをドラッグに媒介させつつ、粘り着くようなアングラミュージックに乗せてスタイリッシュに描いて行く。自身を投影しながらも、監督と主人公とは適度な距離で客観性が保たれ、初監督作品とは思えない洗練度を見せている。一線を越えた感情表現には「王妃マルゴ」で共演したフランスの女優イザベラ・アジャーニを彷彿とさせるものがあり、演技面で影響を受けているように感じられる。気になる向きは、アジャーニの「ポゼッション」や「アデルの恋の物語」での狂気を味わってみられては如何だろうか。

:+:+:+:+:+:+:+アーシア・アルジェント出演関連作品紹介+:+:+:+:+:+:+:
■「雨上がりの駅で」(1996伊) 評価:★★★★ 原題Compagna di Viaggio
監督:ピーター・デル・モンテ 共演:ミシェル・ピコリ(「約束」)
□ものがたり >>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
 ひとり虚無で刹那的な日々を送る少女が、あるボク老人と出会い、旅を共にする中で、失望を恐れずに他人に対して期待し、また働きかけることの大切さ、そして自分が存在することの意味を見つけ出してゆく。
□みどころ >>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
 今冬にヒットした「約束」というボケ老人と不治の病に冒された少年との交流を描いた感動昨があるが、本作での少女の心の闇は失望の分だけ深い。アーシアのすばらしい演技と、少女が恍惚老人に受け入れられた瞬間の喜びに酔いしれてください。

■「オペラ座の怪人」(1998伊・ハンガリー) 評価:★★
監督:ダリオ・アルジェント 共演/ジュリアン・サンズ
□みどころ >>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
 アーシアの父、ダリオ・アルジェントが、愛娘をクリスティーナに据えて描くオペラ座の怪人リメイク版。
 スプラッター・ホラー的な要素が強い分ドラマ性は低く、アーシアの精一杯の熱演を除いて見るべきところはない。筆者は、怪人のクリスティーナに対する純粋な愛情が前面に出た、ロバート・イングランド主演の前作の方が好きだが、怪奇スリラー好きにはたまらない一作。

■「王妃マルゴ」
監督:パトリス・シェロー 評価:★★★★
共演:イザベラ・アジャーニ
□みどころ >>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
 中世ヨーロッパ。王家同士の勢力争いの渦中に翻弄された王妃マルゴの悲劇。ロウソクしかない当時の実際の明るさを再現したインテリアの精緻さと、そのくすんだ背景の中で光を放つイザベラ・アジャーニの美しさに乾杯!


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