害虫 2002/03/09

■「害虫」(2002年 日本) 英題/Harmful Insect 評価:★★★★ 
監督/塩田明彦  音楽/ナンバーガール、櫛引彩香、草野マサムネ
出演/宮崎あおい、田辺誠一、りょう、石川浩司(たまのランニング)、蒼井優
★フランス・ナント三大陸映画祭 審査員特別賞&主演女優賞受賞!!
★2001年 ヴェネツィア国際映画祭「現代映画部門」正式出品
<渋谷・ユーロスペース、横浜西口名画座にて3/16公開、以後順次全国公開>
<櫛引彩香&ナンバーガール新曲2曲のPVを『害虫』本編上映前に併映>
オフィシャルサイト:http://www.gaichu.org/top.html
公開劇場一覧:http://www.gaichu.org/theater.html
□あらすじ >>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
 女子中学生・北サチ子(宮崎)。小学校の時教師(田辺)と恋愛経験あり。母子家庭。安定しない母の男性関係と精神状態。友達は、いない・・・いや、たった一人、夏子(蒼井)がいる。ボーイフレンドも、夏子の紹介で、できた。でも、サチ子の悪い噂が校内に広まる。家には母の男が。さよなら、学校。さよなら、母さん。不良少年と路上で暮らす精神薄弱者キュウゾウ(石川)との出会い。反社会的行為の快感。ひとときの心の憩い。そして、彼女は教職を離れた愛する教師の許へ向かう。が、・・・。
□みどころ >>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>
 塩田明彦監督&宮崎あおい待望の最新作がいよいよ公開される。しかも、フランス・ナント三大陸映画祭審査員特別賞&主演女優賞ダブル受賞という素晴らしい看板付きで! 欧米のこれほどの規模の国際映画祭で日本人女優が主演女優賞を獲得するというのは極めてマレ。すごいことなのである。
 さて、塩田監督と言えば、高校生カップルがSMプレイにはまる過程を描いた「月光の囁き」や、小学生の日常を鮮やかに描き出した「どこまでもいこう」など、緻密な映像・演出で知られるところ。ところが本作は、場面場面の説明もつながりも省略された非常にラフなタッチとなっていて、過去作の延長線上には位置しない。
 上記<あらすじ>欄に筆者は多くの情報を書いたが(チラシやオフィシャルサイトにはもっと詳しく書いてある)、最低限この程度の流れを押さえてから見ないと展開に付いて行けないのだ。これは多分に、実力・実績・個性のある俳優陣をキャストに迎えたところに原因がありそう。監督は大枠を示し、その中で俳優たちに自由に演じさせた無演出感。評価が分かれるかもしれないが、これが本作の魅力でもある。
 美しきりょうの、恐らく子供にとって最悪の母親像。単発TVドラマ「青と白で水色」で宮崎と共演した蒼井優の、サチ子にとって聖母のような親友像。そして何より、女子中学生と精神薄弱の路上生活者という、ある種ファンタジックでさえある異色のツーショットをスクリーンに焼き付けた宮崎あおいと石川浩司(たまのランニング)両者のコラボレートする存在感!
 宮崎あおいは本作について、観た後に喫茶店にでも行って、いろいろ考え、思い返して欲しいと語っている。その時に脳裏に蘇るのは、サチ子の行く末を案じずにはいられないラストシーンと共に、サチ子とキュウゾウが共に歩み、語り、悪事に心躍らせるシーンの数々なのだ。
 もうひとつの魅力は音楽。監督の選曲の冴えは、「史上最大の作戦」を用いた前作「どこまでもいこう」で証明済み。静かな前半部とは一転、寡黙なサチ子の中に鬱積した感情のほとばしりは映画後半、ナンバーガールの激しく無機質なロックと見事にシンクロする。サチ子の心の中でひとりでに走り出した何かを、この音楽に浸って肌で感じ取って欲しい。
 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆関連作品・人物紹介☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
■「月光の囁き」(1999年) 監督/塩田明彦 評価:★★★★
出演/水橋研二、つぐみ
□あらすじ
 原作は喜国雅彦の連載マンガ。
 高三の夏。「相思相愛の片思い」にやっとピリオドを打って、ハッピーな毎日を手に入れたはずの二人だったが、ある日彼の部屋で彼女が彼のヒミツを見付けてしまったことから、二人の関係は意外にも、エキセントリックな方向へと暴走を始める。
□みどころ
 およそ常人が思い描く高校生の日常とはかけ離れた倒錯の世界を描いた作品なのに、なぜか心が瑞々しさで満たされ、洗い流される感じを受ける不思議さ。思春期の感受性豊かな時期に、異性はおろか、自分のことさえまだ把握できていない男の子と女の子とが出会い、惹かれあい、恋に落ち、傷つけ合う。そうした中で、相手のこと、自分のこと、友人のことについて理解し、成長して行く。そんな基本的で大切なことに、改めて気付かせてくれる作品なのだ。
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■「どこまでもいこう」(1999年) 監督/塩田明彦 評価:★★★★
出演/鈴木雄作、水野真吾、芳賀優里亜、木下ほうか
□あらすじ
 塩田版「大人はわかってくれない」と言える作品。小学生の仲良しワンパク二人組みを軸に、友情、女の子、遊び、そして家庭環境が彼らに落とす影を描き出してゆく。
□みどころ
 本作の魅力は、花火ピストルなどの子供たちの手製のおもちゃや、学校内。団地の風景に関して徹底的に精緻に描写がなされ、ふと映画を離れてノスタルジーに浸らされてしまうところ。そして、外見からはわからない子供たちの中で無限に広がる心の世界の素敵さ。これはタイトルとも重なるラストシーンで明らかになる。何か結論が用意されているわけでもなんでもないが、このラストシーンとそれまでの出来事とを重ね合わせて、なぜかすごく納得した気分にさせられる不思議な作品だ。
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■<宮崎あおい>   ========1985年東京都生まれ=========
 4歳の頃からモデルとして活躍。映画デビューは大林宣彦監督の「あの、夏の日 とんでろじいちゃん」(レンタル中)での薄幸な少女役。そして前田哲監督「sWinGmaN(スイングマン)」(レンタル中)での素晴らしい演技で映画ファンを魅了。カンヌ映画祭ダブル受賞の栄冠を勝ち取った青山真治監督「EUREKA」(レンタル中)では準主役として出演、バスジャック事件のショックで心を閉ざした少女を演じ、主役の役所広司を凌駕する強い印象を残した。
 本年はこのあと、主役を演じた前田哲監督の美少女ファンタジー「パコダテ人」(北海道先行公開中)が4/27に東京で公開され、「富江4」「ラヴァーズ・キッス」にも準主役で出演し、本年中の全国劇場公開が予定されている。「映画女優と呼ばれたい」という彼女にとってはハッピーな飛躍の一年となりそう。
 TVで彼女を見るには、サントリー「緑水」のCMと、4/11開始のTBS新ドラマ「しあわせのシッポ」(毎週木曜10:00〜)でどうぞ。
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  ■■■ 笑って、泣いて、シッポの分だけやさしくなれる。 ■■■
  ■■ 函館生まれの恋するファンタジー映画 【パコダテ人】 ■■
  ━……━…━…━…━━4/27より東京公開…━…━…━…━…━…━
ひかる(宮崎あおい)は恋の予感にときめく16才。クラスメートの隼人(勝地涼)との初デートの朝、目覚めるとシッポが生えていた!デートをドタキャンしたスキに親友(野村恵里)が彼に急接近。自称ファッションデザイナーの姉みちる(松田一沙)はフェイクシッポをつけてひかるを街に連れ出すが、その姿を函館スクープ記者(萩原聖人)に撮られ懸賞金が懸けられる羽目に。両親(徳井優・松田美由紀)はシッポを切る切らないで大喧嘩になる。一方、市役所職員の古田(大泉洋)も突然生えてきたシッポに振り回される毎日。男手ひとつで育てている娘は無邪気に面白がるが、憧れの保母にシッポがバレないかヒヤヒヤ。やがて二人のシッポは函館中を巻き込む大騒動に発展して……。
  ━…━…━ 応援サイト http://www.pakodatejin.com…━…━━…
出演:宮崎あおい 大泉洋 松田美由紀 徳井優 松田一沙 萩原聖人ほか 
監督:前田哲 主題歌:Whiteberry(1/23発売アルバム『カメレオン』収録)
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<koala> e-mail::pakodatejin@yahoo.co.jp
Homepage::http://www.asahi-net.or.jp/~ns8m-hgc/
宮崎あおい:http://www.asahi-net.or.jp/~ns8m-hgc/movie/fan/Aoi/index.htm


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