活きる | 2002/03/31 |
「紅夢」「紅いコーリャン」「初恋のきた道」「あの子をさがして」・・・稀代のストーリー・テラー、チャン・イーモウ監督の幻の作品「活きる」が、遂に日本初公開の運びとなり、ただいま東京渋谷にて上映中。追って福岡・大阪・京都でも順次公開されてゆく予定となっています。 これを記念して、今号では「活きる」のレビューの他、チャン・イーモウ監督のオススメ作品を紹介します。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------- ■「活きる」 (1994年 中国) 評価:★★★★☆ 監督:チャン・イーモウ 原題:活着(Lifetimes / Living / To Live) 出演:ゴオ・イオウ、コン・リー、ニウ・ベン、グオ・タオ 上映:東京<渋谷ル・シネマ>/大ヒット公開中 大阪<梅田ガーデンシネマ>/4月GW公開予定 京都<京都朝日シネマ1・2>/上映待機中 福岡<KBCシネマ1・2>/4/20より公開予定 ◆あらすじ >>>>>>>>>>>>>>>>>>> 1940年代から60年代の動乱の中国を舞台にしたある夫婦の歴史。戦争、革命、文革。今までの価値観が根底から覆るような出来事が次から次へと起こる無常の世。勝者が敗者に、敗者が勝者にめまぐるしく変転するなかでも、人々は食い、働き、喜び、悲しみながら日々生を全うしてゆく。その様を没落貴族の夫婦を中心に鮮やかに描き出して行く。 ◆みどころ >>>>>>>>>>>>>>>>>>> これほどに作風が安定している巨匠も珍しいのではないか。本作も、既に公開されている旧作同様、イーモウを信じて観に来てよかった、と心から思える素晴らしい作品だ。本作を例えて言うなら、「喜びも悲しみも幾年月」の物語を今村昌平が監督した、といったテイスト。主人公の夫婦に降りかかる運命は、明らかに悲しみの方が勝っている。なのに観て<楽しめる>のは、ひとえに監督の、時に場内を笑いで包む適度に力の抜けた演出と、生活を「食」で象徴させた脚本、そして道化に徹した主演のグオと中国版田中絹代と言ってもいいコン・リーの素晴らしい演技のなせる技だ。悲劇のきっかけになる人生の選択があまりに間抜けなのも、もう笑うしかない。そう。過ぎたことは、悔やんでも仕方がない。アホだったと笑うしかないのだ。笑ってしまえば、明日からも生きてゆける。そんな簡単なことに気付かせてくれるのもまたこの映画だ。 オマケとして、美少女趣味の向きには、3人の何れ劣らぬかわいこちゃんを起用した娘・鳳霞の無垢な魅力が強力にアピールしてくれる。 また、共産党革命から現代に至るまでの中国国内の世相も丁寧に描かれていて、中国近代史的視点からも興味深い作品である。 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 関連作品紹介 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ ■「初恋のきた道」 (2000年) 評価:★★★★★ □出演:チャン・ツイイー、スン・ホンレイ、チョン・ハオ □父の葬儀の日、人手で村の長い道を通ってその亡骸を野辺送りしたいと頑なに主張する母。そこから、この村と町とを結ぶ細く長い道が結んだはるか昔の母と父との恋路に思いを馳せる。ツイイー演じる若き母の健気さとともに。「時間」を効果的に利用した監督の演出の巧さが光る。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------- ■「あの子をさがして」 (1999年) 評価:★★★★ □出演:ウェイ・ミンジ(本人)、チャン・ホエクー(本人) □家庭の事情で学校を辞めさせられ、出稼ぎのため村からも姿を消したヤンチャ坊主の行方を、僅か13歳の代用教員の少女が単身追う。実話に基づき(出演者も一部本人)、キアロスタミ監督を髣髴とさせる無演出な手法で子供たちの姿を追うことで、社会の実態や人々の心が浮き彫りになってゆく。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------- ■「紅いコーリャン」 (1987年) 評価:★★★☆ □出演:チアン・ウェン、コン・リー、トン・ルーチュン、リウ・チー □20世紀初頭の中国を舞台に、男と女の、そして中国民衆の息吹を描き出した秀作。チャン・イーモウ監督の、そしてコン・リーのデビュー作でもある。 うっそうと茂る自生のコウリャン、そしてその穂の向こうに輝く紅い太陽。日食下深紅に染まるコウリャン原。あまりの映像美に息を呑むばかりだ。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------- ■「紅夢」 (1991年) 評価:★★★★☆ □出演:コン・リー、フー・チャイフェン、マー・チンウー □主人公は、父の急死で継母の命により大学を中退して富豪宅へ第四夫人として嫁いだ少女。主人に尽くすことで寵愛を受けるというシステムに迎合できなかったことが回りの人々をも巻き込んで引き起こす不幸。重いテーマだが、イーモウの手腕で壮大で感動的なドラマに仕上がっている。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------- ■「菊豆(チュイトウ)」 (1990年) 評価:★★★★ □出演:コン・リー、リー・パオティエン、リー・ウェイ □田舎の老いた染物屋に金で買われて来た若く美しい「妻」菊豆。不能な夫の折檻に耐える中、夫の甥との関係に溺れ・・・。大島渚監督の「愛の奴隷」を髣髴とさせる、道に背いて愛し合った男と女の逃げ場の無い人生行路である。苦しく重い、それであってとってもエンターテインメント。イーモウの真骨頂。 -------------------------------------------------------------------------------------------------------- ■「上海ルージュ」 (1995年) 評価:★★★★☆ □出演:ワン・シャオシャオ、コン・リー □首領の愛人である歌姫チンパオ<金宝>(コン・リー)の付き人として採用され田舎から上海に上京した少年シュイション<水生>(シャオシャオ)が体験するあまりに刺激的な一週間を日めくり式に描く。孤島で出会った一人の美しい少女アチャオ(チェンチェン)との水辺での交流のシーンがあまりにも美しく印象的。丁寧に紡ぎあげられた秀作だ。 ━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━ ■■ 函館生まれの恋するファンタジー映画【パコダテ人】 最新情報 ■■ ━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━ 4/27よりいよいよ銀座シネパトス及び新宿東映パラス2にてロードショウ。 現在、各劇場窓口にて前売り券を発売中。また、インターネット通販のe-movie からは、シッポ携帯ストラップやメイキングDVD「宮崎あおいinパコダテ人」 と前売り券との超オトクなセットをなんと!送料無料にて販売中。詳しくは http://www.emovie.ne.jp/store/store_etc.html で。 一方、「パコダテ人」発祥の地・函館では、東京公開と同じ4/27から函館シネマアイリスにて一日一回のアンコール上映が決定。 ━…━…━…━ 応援サイト http://www.pakodatejin.com ━…━━…━… 出演:宮崎あおい 大泉洋 松田美由紀 徳井優 松田一沙 萩原聖人ほか 監督:前田哲 主題歌:Whiteberry(1/23発売アルバム『カメレオン』収録) ━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━ |