「パニック・ルーム」公開記念 ジョディ・フォスター特集 2002/04/13

 当初主演に予定されていたニコール・キッドマンの負傷降板を受け、「ハンニバル」出演要請を辞退し、カンヌ映画祭の審査委員長の座を捨ててまで代役として取り組んだ新作「パニック・ルーム」が間もなく(5月)公開されるフォスター。子役時代から順調に大人の女優へと成長し、アカデミー賞主演女優賞を二度受賞(「告発の行方」「羊たちの沈黙」)するという大きな成功を手にしてきた彼女。
 今回は、そんな彼女の足跡を振り返ってみることにする。紹介した作品は何れもビデオ化されているので、気になるものはぜひご覧になって頂きたい。 

(1)子役時代
 幼少の頃から映画・テレビドラマに出演していた彼女は、「アリスの恋」(1975年★★★☆)での主人公の子供時代の子役ばなれした見事な演技がきっかけでマーティン・スコセッシ監督に見初められ、続く「タクシー・ドライバー」(1976年★★★★★)でその名を世界に轟かせることになる。やり場のない怒りのはけ口として娼館を襲ったロバート・デニーロ演じる主人公に「救出」されながらも、醒めた表情を崩さない13歳の娼婦アイリスを演じた彼女は、その存在感だけでアカデミー助演女優賞にノミネートされる。
 その興奮さめやらぬ同年、彼女は「白い家の少女」(1976年★★★★★)で、大きな秘密を抱えて一軒家に一人で暮らし、周囲の干渉を激しく拒絶し続ける主人公の少女を好演し、その評価を盤石のものとする。セリフが少なかった「タクシー・ドライバー」に対し、「白い家の少女」では、家を調べようとする大人に空きっ歯で""My House!""(マイ・ホウス!と少し訛って聞こえるのが面白い)と繰り返し吐き捨てるように言い放ち、大人を戸惑わせる不気味な少女を見事に体現。高い演技力の持ち主であることを証明した。
 二作品以外は子役という限界もあっていい脚本に恵まれなかった彼女だが、全キャスト子供によるマフィア映画「ダウンタウン物語」(1976年★★★)でのあまりに色っぽい厚塗り情婦役や、SEXとドラッグに溺れる少女たちの危ない青春を小粋に描いた「フォクシー・レディー」(1980年★★★)は一見に値する。

(2)世界の頂点へ
 81年に彼女の熱狂的ファンを名乗る男がレーガン大統領暗殺未遂事件を起こし、一時芸能界から身を引いていた彼女だったが、大学卒業とともに復帰。
 皮切りはテレビ作品「スヴェンガリの魔力」(1983★★★☆)。スカウトされた歌手の卵(ジョディ)とボイストレーナーの老人(ピーター・オトゥール)との全身全霊をかけたトレーニングと恋の軌跡を描いた本作は、B級作品ながら、ありがちな師弟凌辱ものとも一線を画し、ストイックさ故に惹かれ合ったふたりの心の変遷をしっかりと描き込めていて、意外な快作に仕上がっている。
 続く「ホテル・ニューハンプシャー」(1984年★★★)では、コメディも演じられることをさらりと証明して見せた。弟と××に耽るというかなりエッチなシーンも登場するのだが、幸か不幸か彼女がお色気派ではないために、エログロ化せずに済んだとも言える。
 同年のヨーロッパ映画「他人の血」(★★★)では、一転して政治色の濃い愛憎劇に挑戦し、イングリッド・バーグマンを彷彿とさせる押さえた演技で観客を魅了する。この時点で彼女は、演技力・存在感共にもはやベテランの域に達したと言えよう。
 その後4作を経て、彼女自身が強くオファーして出演叶った、レイプを題材にした「告発の行方」(1988年★★★)は、そのテーマの社会性が批評家たちの好評を得、彼女は見事オスカーを手中に収める。僅か26歳の若さで、彼女は名実共に世界の頂点に立ったのだ。
 そして、いとこ同士の禁断の一夏の恋を描いた名作「君がいた夏」(1988年★★★★)、誘拐犯と被害者女性が恋に落ちるというデニス・ホッパーが監督した偉大なるB級映画「バックドラフト(「ハートに火をつけて」は同作品の監督非承認・プロデューサーズカット版)」(1988年★★★)を経て、「羊たちの沈黙」(1990年★★★★★)で再びオスカーを手にしてしまう。

(3)製作者としても才能を発揮
 '90年代に入ると、彼女は女優だけではなくその製作面にも頭角を現し始める。オスカー女優という肩書きから来る信用がそうした仕事を進めるにあたって大きく役立ったことは言うまでもないだろう。
 初監督作品は「リトルマン・テイト」(1991年★★★★★)。この製作発表を聞いたときは、いかにもコケそうな気がしたものだが、蓋を開けてみると、彼女自身の好演もあってこれが素晴らしい出来映え。しかも、自ら演じた主人公は「処女懐胎」と、人工授精出産を決行する彼女自身のその後の人生にも通じる意味深な内容。母子家庭という設定も彼女自身の幼少時代に重なる。
 以後、「ウディ・アレンの影と霧」(1992年★★)はまぁいいとして、「ジャック・サマースビー」(1993年★★★★★)のリチャード・ギア、初の本格的アクション・コメディ「マーヴェリック」(1994年★★★★★)のメル・ギブソンと共演者に恵まれて、伝説的名作を相次いで世に送り出したのは未だに記憶に新しい。
 「ジャック・・」では、「風と共に去りぬ」で使用された衣装で身を包み、南北戦争から帰郷した<夫にそっくりの別人>を、暴君から生まれ変わった夫として愛した南部の女性を好演。出征前に隣町で起こした事件で逮捕された<夫>について、あくまで真の夫であると法廷で主張し続けるヒロインの気高さは、彼女でなければ演じることができなかったろう。
 「マーヴェリック」は、西部とある町で開催されるポーカー大会に急ぐ無敵の男女ギャンブラーの騙し騙され珍道中に仄かな恋心を交えた小気味いい展開で、重層構造のドンデン返しが最後の最後まで観客を飽きさせない。筆者は今でも、友人に家族で見るオススメ旧作を聞かれると、迷うことなく「マーヴェリック」を薦めてしまうほど。
 そして同年、自ら設立した映画製作会社(エッグ・ピクチャ−ズ・プロダクション)の第一作は「ネル」(1994年★★★)。人間社会と隔絶された環境下で育った山女ネルの目を通して、文明社会に痛烈な批判と反省を促すメッセージ色の強い作品で、四回目のオスカーノミネートの名誉を勝ち得た。
 この後、初のスペースSF「コンタクト」(1997年★★☆)、そして第一子の出産を挟み、かつてユル・ブリンナー&デボラ・カーが演じたタイ王とその子息の女家庭教師との悲恋を描いた名作「王様と私」のリメイクである「アンナと王様」(1999年★★★)とコンスタントにヒットを飛ばし今に至っている。
 脚本を厳選する余り出演作が少なくなる彼女がいつになく入れ込んでいる次作への期待は高まるばかりだ。

 なお、ジョディ・フォスターについてもっと知りたい人は、ルイス・チュノヴィック著・原美奈子訳「ジョディ」(パンドラ社発行/現代書館発売)がオススメ。

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■■ 函館生まれの恋するファンタジー映画【パコダテ人】 最新情報 ■■
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札幌では二段階にわたって上映期間が延長されるという大ヒットを記録している本作は、いよいよ4/27に銀座シネパトス及び新宿東映パラス2とで関東公開の運び。新宿東映パラス2は夕刻のみの一日二回上映なので、公開初日には、主役日野ひかる(宮崎あおい)の愛すべき家族(宮崎あおい、松田一沙、徳井優、松田美由紀)に、ひかるの親友(野村恵里)と恋人(?;勝地涼)とひかる縁の登場人物総出演の舞台挨拶が両映画館で相次いで行われる予定になっています。前日の26日には宮崎あおいの「パコダテ人」メイキング写真集「HappyTail」が発売されます。また4/30にも何やらスペシャルなイベントが劇場で予定されていて、リピート鑑賞必至の情勢。オトクなグッズ付き前売り券はe-movie(http://www.emovie.ne.jp/store/store_etc.html) にて送料無料にて発売中。
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出演:宮崎あおい 大泉洋 松田美由紀 徳井優 松田一沙 萩原聖人ほか 
監督:前田哲  応援サイト http://www.pakodatejin.com
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