泣ける映画 ベスト3 2002/05/02

 文句無しに泣けてしまうといえば、反則技かもしれないけれど、やっぱり子供モノでしょう。ということで、定番とも言える古今3作品をご紹介。いずれも慟哭まちがいなしです。ここまで書いただけでも、筆者は徐々に涙目になりつつあったりして。

■「禁じられた遊び」(1952年 仏) オススメ度:★★★★★
監督/ルネ・クレマン
 第二次大戦下のフランス。ドイツ軍の爆撃で両親を失ったパリの少女ポーレットは、原野を彷徨ううち農家の少年ミシェルに助けられ、彼の家で預かられることとなった。死んだ飼い犬の墓をつくりたいという彼女の願いを叶えようと、ミシェルは墓標を盗み、自宅の水車小屋にたくさんの動物たちの墓をつくるが、やがて大人に見つかってしまう。神をも欺く行為。ポーレットに対する大人たちの視線は冷たい。果たして彼女はどうなってしまうのか。ミシェルは彼女を救えるのだろうか・・・。
 有名なテーマ曲の調べに、ポーレットのミシェルを呼ぶ声が重なるラストは、あまりにも切ない。
 大人が始めた戦争という悲劇。子供のせいではない貧しさ。そんな厳しい現実の中で子供たちが作り上げた無邪気な世界。それさえも「神」などという正当性の衣まで着て許そうとしない大人たちの論理。
 戦争のもたらす悲劇を、戦闘シーンから離れ、ファンタジックにさえ脚色して描き出す・・・これぞ芸術。フランス映画のすばらしさを象徴する作品の一つである。こうしたテイストは、同じく第二次大戦を扱ったフィリップ・ド・ブロカ監督の「陽だまりの庭で」「まぼろしの市街戦」でも味わうことができる。

■「汚れなき悪戯(いたずら)」(1955年 西) オススメ度:★★★★★
監督/ラディスラオ・ヴァホダ
 名曲「マルセリーノ」の切ない調べに乗せて、村の祝日にさえなった少年「マルセリーノ」の奇蹟の物語が昔語りの形式で進行する。
 マルセリーノの汚れを知らない純粋な心がキリスト像を借りた神の降臨を叶える。その、彼の心と神の御心が通じ合う瞬間がすばらしい。特撮など一切使わないで、カメラの目線とマスセリーノの目線、そして像の「指」の動きで奇蹟を表現する映像の素晴らしさ。そして彼が神に召されるシーンの荘厳さ。目の当たりにした修道僧たちの驚きと畏怖の表情・・・。この感動は、見る人と作り手との間に横たわる宗教の壁を超越する。
 故淀川長治氏による「クラシック名作選」として新たに復刻ビデオ化され、ようやく簡単に観ることができるようになった作品の一つである。

■「シュウシュウの季節」(1998年 米) オススメ度:★★★★★
監督/ジョアン・チェン 
 以前、上映時に一度紹介したこの作品。泣ける、という点では近作随一ということで、再度のご紹介・・・。
 中国全土に文化大革命の嵐が吹き荒れる1970年代。「下放」政策によって労働奉仕のために都市から農村へ親元から引き離され一人派遣された少女シュウシュウ(秀秀)のたどる、あまりにも非情で過酷な運命。
 いまだかつて、いたいけな少女にこれほどの絶望と試練を課した物語があったろうか? 極限に達した望郷の念を癒すため、半ば偽りと知りながら、「帰郷」の甘い希望を携えてやってくる男たちに身を任せるシュウシュウの哀れ。彼女を深く愛しながら、「男」として彼女を抱きしめてやることすらできないチベット人老金(ラオジン)のやるせなさ。スクリーンの中で淡々と進行する半年間に及ぶこの修羅の日々に、泣くことすら忘れてただ呆然としてしまう。本来なら「悲劇的」と言えるラスト・シーンは、逆にハッピー・エンドのようにすら思えてしまう。童話「マッチ売りの少女」がそうであったように。
 かわいそうなシュウシュウ。でも最後の最後、よかったね。本当の愛がみつかって、本当の愛に包まれて、ほんとうによかったね。。。

<koala> 

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