子役の輝き 〜「I am Sam」公開記念〜 2002/05/23

 天使のような笑顔が魅力のダコタ・ファニングが出演する期待度満点の新作「I am Sam」が6/8より公開されます(http://www.iamsam.jp/)。子供を扱った映画に於いては、多くの場合能力が未知数の子役を採用するという大バクチを余儀なくされ、その成否が映画自体の運命をも決してしまうことも少なくありません。そこで今号では、子役が映画自体の輝きを倍加させた旧作から幾つか紹介してみることにします。あ、「泣ける」作品として前回の特集で紹介した「禁じられた遊び」や「汚れなき悪戯」も当然、子役の抜擢が大成功した例ですし、「タクシー・ドライバー」、「レオン」などは今さら挙げるまでもないでしょうから、今回は省略。有名なんだけど、忘れられがちな作品から紹介してみます。

■「陽だまりの庭で」(1995年 仏) 監督:フィリップ・ド・ブロカ
 出演:クロード・リッシュ、サロメ・ステヴナン
□みどころ
 終戦間近のパリが舞台。お父さんがドイツ兵に銃殺されたことを孫娘に知られまいとするおじいちゃんが、彼女をマタ・ハリに仕立てて、「お父さんのレジスタンス作戦」を支援するスパイごっこを始める。一方の孫娘は、とっくにお父さんのことを感付いているんだけど、おじいちゃんを悲しませまいと、その「ごっこ」遊びに乗って、いっしょにパリの地下道を駆けめぐる。。。
 「まぼろしの市街戦」同様に、戦争というむごい出来事をファンタジーにしてしまうド・ブロカ・マジック。この魔法の中で、サロメ・ステヴナンは自由に飛び回る。ファンタジーをファンタジーに思わせない無垢な彼女の存在すべてがこの作品に命を与えた!

■「フェアリー・テイル」(1997年 英) 監督:チャールズ・スターリッジ
 出演:フロレンス・ハース、エリザベス・アール、ピーター・オトゥール
□みどころ
 第一次世界大戦只中の1917年。英国ヨークシャー地方コティングリーの森で、従姉妹同士の少女が妖精の写真を撮った。この写真は人づてに広まり、やがて全世界を巻き込んでの神秘学の一大論争に発展する。この少女たちを演じたのが、13歳ながら、母性と、どっしりとした名優の落ち着きさえ感じさせる従姉役フロレンス・ハースと、10歳とは思えぬ美しい髪と美貌の持ち主、エリザベス・アール。丹念な手作り細工の模型による特撮が醸し出すファンタジックな雰囲気に、この二人の少女たちは完全にとけ込んでしまい、観客もろとも、妖精たちの住む世界へと誘ってくれる。そして、名優ピーター・オトゥールとハーヴェイ・カイテルが彼女たちを「控えめな存在感」のある演技でしっかりと支えている点も見逃せない。

■「ふたりのロッテ」(1993年 独) 監督:ヨゼフ・フィルスマイアー 
 出演:フリッツィ・アイヒホーン、フロリアーネ・アイヒホーン
□みどころ
 両親の離婚で赤ん坊の頃に生き別れになった双子姉妹のチャーリーとルイーズは、サマースクールで偶然出会い、その出生の秘密に気付く。なぜか性格が正反対の彼女たちは、両親の愛を取り戻すためにある計画を実行する。。。
 国民性からか今一つ面白みに欠ける映画が多いドイツ映画なのだが(ヴィム・ヴェンダースのせい、という説も)、この作品に出会ってからそのイメージは大きく変わった。90分を泣き笑いで顔がぐしゃぐしゃになって過ごせること請け合いの超オススメ作。

■「都会のアリス」(1974年 独) 監督:ヴィム・ヴェンダース
 出演:リュディガー・フォグラー、イェラ・ロットレンダー
□みどころ
 で、問題のヴィム・ヴェンダース作のドイツ映画からも一本。いや、さすがのヴェンダースのアクも、子供にはすっかり中和されてしまったようで。
 独身で孤独癖のあるドイツ人フリー・ジャーナリストがふとしたきっかけで一人の少女アリスをアムステルダムに送り届けることになるが、予定の日になっても母親は現れず、やむなく彼女の親族探しの旅が始まる。。。というもの。ヴェンダース版「長屋紳士録」とも言え、彼の作品の理屈臭さが苦手な人にもオススメできる一作。

■「秘密の花園」(1993年 米) 監督:アブニエスカ・ホランド
 出演:ケイト・メイバリー ヘイドン・プラウス アンドリュー・ノット
 製作総指揮:フランシス・フォード・コッポラ
□みどころ
 両親を亡くした少女が身を寄せた親類の屋敷には、生まれてからずっと寝たきりの少年が住んでいた。少女は屋敷内にある閉じられた秘密の庭を密かに花園として蘇らせ、少年に奇跡をもたらす。。。
 西洋の子供たちに愛読されているメルヘンの世界を、英国の美しい草原を舞台に見事に映像化。終始子供の低い視線で表現された映像は、子供たちをして「我らが宇宙」と呼ばしめた秘密の花園を彼らの聖域=サンクチュアリとして幻想的なまでに映し出す。なんと言っても主演のメイバリーのミステリアスな表情がこの作品のすべてを決している。ぜひとも一見を。

■「打ち上げ花火 下から見るか? 横から見るか?」(1995年 日)
 監督:岩井俊二 出演:奥菜恵、山崎裕太
□みどころ
 日本からはこの一作を。みんな知ってるか・・・
 夏のある日。「打ち上げ花火はどこから見ても丸いのか?」 二説に分かれたこの疑問を解こうと奔走する子供たちの無邪気さの中に、この時期特有の男女の心の成長のずれの中ではかなく過ぎ去る淡い恋の感情を繊細にからませて描く秀作。ちょっとオマセで危うい女の子を演じる奥菜恵がいい。「スワロウテイル」「リリィ・シュシュのすべて」が好きな人も嫌いな人も、ぜひ試して欲しい一作。


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