ことの終わり 2000/11/04

■「ことの終わり」(1999年 英) 評価 ★★★☆
監督/ニール・ジョーダン
出演/レイフ・ファインズ、ジュリアン・ムーア、スティーブン・レイ
受賞/ゴールデン・グローブ賞、米・英アカデミー賞各ノミネート
 
■あらすじ
 堅物の夫との冷えきった日々を慰めた人妻の禁じられた恋に終焉をもたらせたのは、最愛の人の命と引き換えの、ある誓いだった・・・

■感想 
 ひとことで言うと、意外ほどに宗教色が強くて、少々期待を裏切られた、というのが正直な感想。少なくとも予告編からは想像もつかないほどに神々しくご立派な話のまとめ方には、終演後しばし唖然(ちょっと大げさ)。
 実質的無神論者(なのにミッション・スクール出身)で宗教には些か被害妄想を持つ筆者からすると、信仰へのいざない、の強い香りにかなり抵抗があった。そして、人と人、情と情との葛藤を神へと預けてしまった展開に、肩透かしを食らったような少々「ずるいナ」という印象を持った。
フランス映画好きな私としては、もっとエゴイスティックに主題を突き詰めて欲しかった。
 もっともこれは、仏教の国に生まれ、確たる信仰心を持たないという、キリスト教からは数段階も遠い位置にいる筆者の感想であって、信仰篤き方々、キリスト教圏の人々が受ける印象は全く異なったものであろう。そちら方面の方の感想をぜひ聞いてみたい気がする。

 ・・・と、いろいろ文句を並べたけれど、作品としては各賞ノミネート実績からも分かるとおり、非常に完成度の高いもの。レイフ・ファインズ&ジュリアン・ムーア。香り立つエロスと、年令的なアンバランス−−脚本のイメージを完璧なまでに体現するこの見事な配役。そして、焦がれる女と心閉ざした男の感情のすれ違いを表現する仕草や手の動き、眼差しといった細かい演技。ストーリーのナビゲートと、ちょっとした展開上の無理を処理してくれる「私立探偵」の存在。<プロのお仕事>だ。

 この作品で一つ、非常に不思議な印象を受けたのは、女性が再三愛の「永遠」を確信的に口にすること。従来、こうした台詞は男が刹那の激情に任せて口走り、自ら容易く破棄してきたはずのもの。本作では、これを女性側が口にすることで、そして「誓い」を立ててしまうことで、自らが追い込まれてしまうという構図になっている。男女入れ替われば全く異なった展開になったであろうこの仕掛けに注目して鑑賞してみてはいかがだろう?

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 「ことの終わり」のラスト、愛すべき女性を「絶対的な存在」によって永遠に奪われた二人の男が、一つ屋根の下で寄り添う光景は、どっかで観たことあるような・・・。そう、イヴ・モンタンの「夕なぎ」だ!

 ということで、今回の""フレンチ・コネクション""は「夕なぎ(セザールとロザリー)」を取り上げてみることにする。

■「夕なぎ(セザールとロザリー)」 (1972 仏)
監督:クロード・ソーテ
出演:イヴ・モンタン、ロミー・シュナイダー、サミー・フレイ、ウンベルト・オルシーニ、エヴァ・マリー・ミネケ、イザベル・ユペール
■あらすじ
 裕福な事業家セザールは若く美しいい女性ロザリーと恋に落ちて結婚する。が、直後、行方不明だった彼女の元恋人ダビッドが現れ、ロザリーは揺れる。セザールは嫉妬に狂うが、やがてダビッドとの「共生」を図り、二人は不思議な友情で結ばれる。しかし、それが彼女を一層苦しめることとなるのだった・・・。
■みどころ
 男の「束縛しない愛し方」に苦しめられる女を描く一級の大人の恋愛ドラマ。このテーマは、同監督の後年作「僕と一緒に幾日か」へと引き継がれてゆく。
 愛をオール・オア・ナッシングで割りきらないフランスならではのファジーな恋愛模様。一人の女性を挟んで彼女に恋する老若ふたりの男が仲良く浜辺を歩む姿が印象的。元祖「ドリカム状態」(笑)とも言えるかも。
 しかし、現実に目を遣れば、二人の男性がもし共に老境に達していたなら、こうした「調和」の成立は受け入れられるだろうけれど、若さはこの不自然な妥協に耐えられないだろう。だからこそ、映画的!なのだ。


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