台湾より 2002/03/23

 前回ご紹介した「害虫」はもうご覧になりましたか?この作品は一回観ただけでは理解できないことも多く、重要なシーンについて大きな勘違いをしてしまうことも。だから、一度観て、パンフを買ってシナリオを読んでポイントを押さえ、その上で更にもう一度観る、というのがオススメの鑑賞法。
 そして観た後にも残るタイトルや主人公の心情への疑問や思いは、筆者が設置した<ネタバレOK!「害虫」感想トークBBS>
http://www.asahi-net.or.jp/~ns8m-hgc/movie/fan/Aoi/talk.htm
で大いに語り合いましょう!
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 さて、今号は台湾から届いた二人の対照的な監督の作品をご紹介。
 そのひとりは、監督わずか第二作目の「愛情萬歳」でヴェネチア映画祭の金獅子を獲得した天才ツァイ・ミンリャン監督。「河」「Hole」とシュールな作品を続けて制作し、今回の「ふたつの時、ふたりの時間」では名優ジャン=ピエール・レオーを迎え、台北とパリを股にかけて男女の心の空洞と孤独を描き出そうとする。
 もうひとりは、台湾でCMディレクターとして活躍するウー・ミーセン。このたび長編監督第一作「恋愛回遊魚」を引っさげての堂々の日本進出は快挙である。
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■「ふたつの時、ふたりの時間」(2001年 台湾)評価:★★
監督:ツァイ・ミンリャン 
出演:リー・カンション、チェン・シアンチー、ジャン=ピエール・レオー
<渋谷ユーロスペースで上映中、大阪・福岡で公開予定>
◆あらすじ ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
 路上で時計を売るシャオカンはある日時計を買ってくれた美しい女性シアンチーと知り合う。パリに発つという彼女が去った後、シャオカンは父の死の悲しみに取り乱す母の姿に絶望し、パリにいるシアンチーへの思いへと逃避する。街じゅうの時計を危険を冒してまでパリ時間に変えて行く彼の姿は痛ましくもある。一方で、パリではシアンチーが寂しさを埋めようと刹那的な人間関係に逃避していた。。。
◆みどころ ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
 いったいどれだけの人がこの作品に共鳴し、また鑑賞の喜びを感じるのだろうか。芸術性の高さは認める。しかし、単に説明を省き難解にすることが芸術ではないはずだ。映画の持つ、言語の違いを越えて世界観を共有できるという普遍性を真っ向から否定し、監督の共鳴者にのみ宛てられた私信と言ってもいいかもしれない。
 この作品の世界観は「河」に酷似するので、「河」を見て感動を覚えた人は是非鑑賞することを薦める。
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■「恋愛回遊魚」(2000年 台湾) 評価:★★★★
監督:ウー・ミーセン
出演:チャン・ジャーホイ、ツァイ・ツェンリャン、イェ・シャオフー
<渋谷ユーロスペースで公開中、大阪で公開予定>
◆あらすじ ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
 医学部を出たあと就職せずにスチュワーデス・メイの恋人と同棲しているワン。ワンはCMタレントの女子高生ミャウミャウと知り合い、付き合い始める。そしてミャウミャウはレズの<恋人>に振られ、悲しみの中でワンを呼び出す。優しいワンは一晩中彼女に付き合ってやり、そのままメイの不在をいいことに二人は恋に落ちる。
◆みどころ ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
 原題は「起毛球了」(=毛玉ができちゃった!)。
 この意味はともかく、まずはウー・ミーセン監督というあらたな才能の出現に乾杯である。
 時間軸を自在に前後させ、ファンタジックに恋の駆け引きやいきさつを描き出してゆく手法は見事。そして、恋人たちの待ち合わせの不安、毎朝の別れの不安をピュアに繊細に描いてみせる。「あなたとわかれて15分・・・」の手紙は片時も離れたくない恋人たちの思いを象徴する名作だ。
 本作でもう一つ注目すべきは、台湾を席巻する哈日族(ハーリーズー=日本狂)ブームの荒。文学論は川端康成、女の子の部屋に何気に転がる「だんご三兄弟」のぬいぐるみ・・・シーンのそこここに日本趣味のアイテムがあふれる。こうした台湾文化の「今」をビビッドに捉えた視点もなかなかだ。

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆  関連作品紹介  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 ツァイ・ミンリャン監督の旧作を紹介。

■「河」(1997年 台湾) 評価:★
 無職の青年シャオカンは、街で再会した旧友の女性に頼まれ、映画の撮影現場で河に浮く死体の役を演じ、その流れで彼女とねんごろになる。しかしその後彼は首が曲がったまま硬直する奇病にかかり、疎遠だった父親に連れられて各地の医者や祈祷師の許を訪ね歩くが、病状は悪化するばかり。その傍ら、父親は夜毎男色の密会を重ねる。
 底知れぬ絶望感は伝わるものの、たったそれだけを表現するのにこの2時間はあまりに長すぎる。シーンの間の連関性もなく、人間関係にも何も目立った動きがない。娯楽という意味では全く評価できない退屈な作品だ。
 「Hole」のモチーフとなるのだろうか、激しい雨漏りのする部屋、というシチュエーションがここにも登場する。
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■「Hole」(1998年 台湾) 評価:★★
 アパートメントの8階と7階の部屋の間に開いた大きな穴。階下のひどい水漏れの原因検査に来た水道屋が調査の為にあけた穴だ。折りしも台湾熱という新感染症が流行する中、穴を挟んで8階の部屋に住む男と7階の部屋に住む女とがもどかしくも恋に落ちる。。。
 ラストシーンは美しいが、どうも展開が重たく、感情の流れが汲み取りにくい。設定もファンタジーなのか現実なのか、スタンスがはっきりしない。
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■「愛情萬歳」(1994年 台湾) 評価:★★
<ベネチア映画祭グランプリ(金獅子賞)受賞>
 合い鍵を拾った男が忍び込んだ空き部屋に一組の男女が。女は部屋を管理する不動産屋、彼女を街でナンパした男は路上で洋服を販売する若者である。やがて部屋でハチ合わせした二人の男は友人関係に。。。
 台詞が非常に少なく、若者の刹那的な生き方とその背景の寂しさを描こうとする。ただ、必要以上の長回しのシーンが多く、映像の意味も分かりにくい。

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出演:宮崎あおい 大泉洋 松田美由紀 徳井優 松田一沙 萩原聖人ほか 
監督:前田哲  応援サイト http://www.pakodatejin.com
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