約束 2001/12/31

■「約束 ラ・プロミッセ」(2000 仏) 評価 ★★★★ 
監督/ドニ・バルディオ
出演/ミシェル・セロー、ジョナサン・ドマルジェ、フロランス・エベリンク
<新宿武蔵野館にて公開中>
□あらすじ
 小児ガンに冒された少年マーティとアルツハイマーに冒された物言えぬ老人アントワーヌとの、病院を舞台にした心の交流記。果たして、二人の「約束」とは・・・?
□感想
 予告編を見るたびに泣かされ続けていた作品が、やっと公開された。筆者はこの作品で、新世紀最初の年の映画ライフを締めることに。
 予告編で泣かされたというのは良し悪しで、作品のオイシイところが予告編にみんな出てしまっているということの裏返しであることがままある。でも、監督の処女作である本作には、まるで主人公の少年のように、氏の頭に詰まっていたいろんなアイディアが溢れ、そんな心配など吹っ飛んでしまう快作だ。
 不治の病に冒された主人公たち。次々と亡くなる登場人物たち。こんなお先真っ暗なストーリーでも、視点を変えることでこんなに心温まる作品にしてしまうのは、監督の手腕もさることながら、遊び心を大切にするフランスという風土のなせる技でもある。その筆頭は「陽だまりの庭で」「まぼろしの市街戦」のフィリップ・ド・ブロカ監督だし、あの「禁じられた遊び」だって、子供たちだけの世界は戦争を超越していて、微笑ましい。だからこそ、現実の悲惨さが際立つのだ。本作もその伝統をしっかりと受け継いでいて、中盤ではマーティとアントワーヌの「沈黙の」応酬のおかしさにテーマの深刻さをしばし忘れされてくれる。だから、ラストで急に現実に引き戻されて、涙がどっと溢れてくる。
 「約束」。観る前は、きっと、いっしょに海に行こうね、とか、そんなことだろうと思っていた。ところが、アントワーヌと病院を抜け出したマーティは、ウワァッと声を上げてしまうほどに予想もつかない実に味な演出をしてくれる。そしてややあって、とても意外な「約束」の中身を観客は知ることになる。見事な脚本と演出!
 この監督のアイディアを十二分に演じたベテラン、ミシェル・セローと映画初出演の子役、ジョナサン・ドマルジェ(L・ディカプリオを髣髴!)の演技がまた見事。特にミシェルは、全身麻痺という設定上、目の動きだけでの演技。まさに「これぞ演技」。これにかぶせられる彼の心の声との呼応がまた絶妙。このミシェル、「とまどい」や「クリクリのいた夏」での老人ぶりを見て実は筆者、「なんだか鈍い俳優だなぁ」とずっと思っていたのだが、この作品は彼を大きく見直すきっかけになった。アラン・ドロンとの共演作もあるようなので、過去作を見直して見ようかな。
 
 
<<<<<<<<<<関連作品紹介>>>>>>>>>>
■「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」(1997 独)★★★★
 末期患者の病院脱走物語と言えばなんと言ってもコレ。""♪のっのっのきのんえぶんずどー♪""で有名なボブ・ディランの名曲をモチーフにして、絶望を希望に、そう、一瞬にせよ希望に変えて見せた。重苦しくて笑いがない、というドイツ映画の印象を大きく変えた名作。

■「とまどい」(1995 仏) ★★★☆
出演:エマニュエル・ベアール、ミシェル・セロー
 若く美しい人妻と老紳士、そして若き編集者との三角関係。ストーリーはキレが今ひとつでパッとしないが、とにかくベアールが上品で美しい。ひたすらミシェル演じる老人を羨みつつの100分。

■「クリクリのいた夏」(1999 仏) ★★★★
出演:ジャック・ガンブラン、イザベル・カレー、ミシェル・セロー
 戦争の傷を癒すために田舎の沼地で肩を寄せ合って暮らす人々を主人公に、自由とは何か、幸せとは、裕福とはどういうことかについてを考えさせてくれる。

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