ハッシュ!&オカマ映画大特集 2002/06/02

 いよいよ6月。最高気温も30度を超えるようになり、梅雨入りも間近。こんな時こそ、じっとりと汗ばんで抱き合う男二人を画面いっぱいに楽しむことができるホモ映画で暑さ倍増!せっかくの夏。サウナ気分でとことん堪能しましょ! では、今大ヒット公開中の「ハッシュ!」から。

■「ハッシュ!」(2001年 日) オススメ度★★★ 
監督/橋口亮輔
出演/片岡礼子、田辺誠一、高橋和也
◆あらすじ ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
 ホモカップルの間に割り込んだ、子供が欲しい30女。。。
◆みどころ ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
 橋口監督<ホモ映画三部作>第三弾。
 季節の設定は<夏>。ナツナツナツナツココナッツ。じっとりと汗ばんだホモ二人が小さなベッドで抱き合う・・・あー、気持ち悪い。監督の人格を疑う。でも、ある意味ではこの上ない演出、とも言えようか。
 正直、同性愛モノは苦手である。でも、軸をホモに据えることで初めてフィルターが外れて見えてくる男と女の恋模様、というものもある。
 「渚のシンドバッド」では、ホモが加わることで形成された<閉じた三角関係>の妙味が楽しめたが、本作ではホモが女に「あなたの子供を産みたい」と言い寄られ、その一方で同僚の思い込み女には男として言い寄られ、挙げ句断ったらストーキングされてしまうという、オモシロ着想の泉。バラバラにしたら映画が3本くらいは作れてしまいそうなほどの贅沢な一品なのだ。
 出演陣では、やはりインディペンデンス映画界の女王・片岡礼子の存在感が群を抜いている。何ともイヤな香り〜家庭に入れたくない〜を漂わせた三十路のヤリマン女を熱演。当のホモ男(田辺)の義姉役・秋野暢子に「あなたには子供は育てられません!」と言わしめるだけの説得力を役柄のキャラクターに持たせている。
 その他では、主役のホモ二人はそこそこいいとして、この礼子お嬢のセックスフレンドを年下風味たっぷりに演じる沢木哲君がいい。ストリート系の少年ならこの俳優、と塩田監督に言わしめた沢木君。若いのに、よくこうした「崩れた」雰囲気が醸し出せるものだ。「害虫」でもよかったし。将来が楽しみな役者の一人だ。

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆  関連作品紹介  ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 橋口監督は今までに二本のホモ映画を世に送り出している。「ハッシュ」に手を染めてしまったら、もう勢いでみんな観ちゃいましょう!
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■「渚のシンドバッド」(1995年) オススメ度★★★☆
出演/浜崎あゆみ、岡田義徳、草野康太、山口耕史
 ホモっ気のある男の子・伊藤(岡田)とその恋の相手の親友・吉田(草野)、その吉田が思いを寄せる、悪い噂が絶えない危うい少女相原(浜崎)そして相原は伊藤にほのかな思いを寄せている。この<閉じた>三角関係を軸に、友情と恋が少年たちにもたらすとまどい、悩み、迷いを描き出し、恋とは、友情とは何かを問いかける。
 設定に面食らったのかぎこちない男子勢とは対照的に、浜崎あゆみの自然で、のびのびした演技が光る。故郷のミカン畑での思い出を語るシーンなどは、彼あゆみ自身の想い出を語ったアドリブではないかと思えるほど。そしてこのシーンがクライマックスに対するカギともなる。クライマックスでも、岩陰から吉田に懸命に語りかけるあゆみが強く印象に残る。
 寄り添うにせよ対立するにせよ、世の中には男と女しかおらず、この二者の関係を描こうとすれば、どうしても一面的になってしまうきらいがある。ところが、そこにホモやレズといった、ノーマルな人たちにとっては異性でも同性でもない性を介在させることによって、今まで描き得なかったような繊細な心理描写が男にも女にも可能になってくる。
 本作はホモをとりたてて前面に押し出した描き方ではなく、このテの世界が苦手な人にもオススメできる。
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■「二十歳の微熱 A TOUCH OF FEVER」(1993年) オススメ度★★
出演/袴田吉彦、片岡礼子、遠藤雅
 橋口監督第一作。麗しの片岡礼子、そして袴田吉彦の記念すべき映画初出演作でもある。助監督は「洗濯機は俺に任せろ」「月とキャベツ」「死者の学園祭」の篠原哲雄。
 男娼たちが主人公の本作に至っては、上で書いた<中性>の効用もいずこへか。やはりこうした世界を前面に出されると、おぞましくもあるし、そもそも根底の部分で彼らの心理が理解できない。あー、こういう世界もあるんだなぁ。彼らは彼らなりにつらいんだ・・・そんな程度だ。
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 さて、オカマを主人公に据えた秀作として忘れてはならないのが「非・バランス」。やっとビデオ化されたので、店頭で見つけたらぜひ借りてみて欲しい。心の垢がスーっと剥がれ落ちる思い。説教がましい理屈もヌキ。何も考えずにファンタジーに身を委ねられる。「オカマかぁ・・・」とタカをくくっているあなたをも、身震いするほどの感動に浸らせること請け合いのスーパー・オススメ作品なのだ。

■「非・バランス」(2000年 日) オススメ度★★★★☆
監督/富樫森 出演/派谷恵美、小日向文世、はたのゆう
□あらすじ
 小学校で親友にイジメを受けて人間不信になった女の子チアキは、(1)クールに生きて行く(2)友達は作らない、という2つのモットーを掲げて中学生活を送っていたが、ある日オカマのキクちゃんに出会い、彼(彼女?)を助け、また助けられての一夏の交流の中で、人生に真正面から向き合うことを学び、友達のすばらしさを再発見してゆく。
□みどころ
 とにもかくにもキクちゃんを怪演した小日向文世の存在が大きい。悲しい人生を悲しく見せない根っからの道化・キクちゃん。そして、最後は逆にチアキに勇気づけられて、忽然と姿を消したキクちゃん。やっぱり彼女(?彼?)こそがミドリノオバサンなんじゃないかな?彼のてらいのない演技は、観る者をすんなりとそんなファンタジックな気分に引き込んでくれる。ケセラセラ!ビバ!ラ・ビータ!!


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