映画祭に行ってみよう! 2002/07/24

 みなさんは映画祭というものに行ってみたことはありますか?関東の映画ファンなら、日本やアジアの未公開の新作映画がいち早く観られ、ハリウッドからも豪華な新作映画やゲストが来訪する東京国際映画祭には一度ぐらいは行かれたことがあるかもしれません。
 映画祭と言えばカンヌ、ヴェネチア、ベルリン、四大大会まで入れればモスクワといった、世界から集まったその年の候補作品の中から代表作を選考することを目的としたものを思い浮かべ勝ちです。また、邦画が長い低迷期にあったことや、邦画製作者の目がやはりこうした海外の大会に向いていたこともあって、映画と言えばハリウッド、映画祭と言えば海外、といったイメージがあることも否めません。
 しかし、国内の映画産業が復活の兆しを見せ、それに歩調を合わせるように国内で若手の映画クリエイターたちが台頭してきたここ数年、我が国でも映画を愛する人々の映画に対する接し方が受け身から育てる側へ、そして憧れるだけだった映画人とも積極的に交流するようにと変化してきたようです。そして都会や地方のそこかしこで、映画好きの首長や有志が核となって、様々な視点と目的を持った大小の映画祭が誕生し、成果を上げ始めています。
 今回のコラムでは、こうした比較的小規模な国内向けの映画祭の楽しみ方について簡単に紹介してみようと思います。

 映画祭は、目的別には大別して<1>コンペ型<2>啓蒙型<3>テーマ特化型の3種類があると言えます。<1>は三大国際映画祭がそうであるように、出品された作品やそのクリエイターの中から代表作・者を選考することに主眼を置くもの、<2>は映画館環境の整備されていない地方都市の住民に近作の秀作を観賞する機会を提供することに主眼を置くもの、そして<3>は、特定のテーマに特化して招待作品を選定し、そのファンに向けてまとめて上映することに主眼を置くものです。<1>の中にも、細別すればカンヌのようにただ優劣を競い合うものの他、ロバート・レッドフォードが主催する米・サンダンス映画祭のように、インディーズ作家を育てることに主眼を置くものもあります。また、<3>には地方ゆかりの作品や映画人を特集する「ご当地型」のものも含まれましょう。実際には多くの映画祭がこれらの目的を複合的に有することになります。
 映画祭の楽しみと言えば、未公開新作の上映と、上映前に行われる監督や俳優などのゲストによる舞台挨拶やティーチ・イン、そしてこうした映画人と観客とのオフ・シアターでの交流。この多寡は映画祭や主催者の企画意図によって大きく異なります。
 それでは、実際に有名なもの、筆者の体験したものを実際に紹介して行きます。
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■東京国際映画祭 目的:<1> ふれあい度★★ 開催地:東京渋谷
 http://www.tiff-jp.net/ 開催時期:秋(10〜11月)
 長編映画を対象とするコンペティション型の映画祭。作品は国内外から広くエントリーされ、ハリウッド系作品などの招待作品も豪華。授賞の主目的は若手監督の奨励。多彩・豪華なゲストと、観客による質問タイムを交えた充実の舞台挨拶&ティーチ・インは大きな魅力。ただ、海外作品は既に他の国際賞などで評価された作品や作家の後追い招待のことも多く、作品ラインナップとしてはなかなか独自性が出せないでいる。また、もともと映画ファンの多い東京での開催とあっての入場券の競争率の高さや、平日日中という社会人にはつらい上映時間設定の多さも難点。
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■「東京国際ファンタスティック映画祭」 目的:<3> 開催地:東京渋谷
 http://www.nifty.ne.jp/fanta/tokyo/ 開催時期:秋(10〜11月)
 東京国際映画祭の協賛企画で同時期に開催される。ファンタスティックと銘打ちながら、発足当初のファンタジー作品中心のラインナップからは脱却し、国内外からの招待作品のジャンルは多彩。
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■「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」 目的:<3> 時期:2月
http://www.nifty.ne.jp/fanta/yubari/index.htm ふれあい度:★★★★★
 上記東京国際、東京ファンタの協賛企画。かつて炭坑の町として栄え、交代制の炭鉱労働者のため24時間営業する映画館がひしめき合っており、のべ入場者数は全住民の三倍に上ったという文字通りの映画の街・北海道夕張市で開催される。上映作品は多彩で、ゲストも豊富。狭い街なので劇場外であこがれのスターと遭遇する確率も極めて高く(実際筆者も小さなラーメン屋で宮崎あおいさんに遭遇しました!)、また映画人と観客が膝を並べて夜ごと語り合える場も用意されている。なにより嬉しいのは、町じゅうの建物に百枚を超える新旧の映画の手書き看板が掲げられ、町総出で映画祭や来訪者を歓迎する機運が漲っていること。地元民も見知らぬ観光客に気軽に声をかけてくれて、「また来年も来よう」という思いにさせられること必定。この熱い雰囲気は他の映画祭の追随を許さない。
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■「高崎映画祭」 目的:<1><2> 時期:3〜4月 於、群馬県高崎市
http://www.gunmanet.or.jp/tff/tffFrame_1.html ふれあい度★★★★
 前年中に都内を中心に上映された秀作邦画・アジア映画を中心に70余本を一気に上映。作品はスタッフが実際に鑑賞して選定され、独立系の映画に触れる機会の少ない周辺住民にその鑑賞の機会を与えることを大きな目的としている。特筆すべきなのは、新進クリエータの才能や将来性に対する先見性。コンペ型としての側面も持つこの映画祭では、招待作品に対し独自の賞を選定しているのだが、「EUREKA(ユリイカ)」でカンヌを驚かせる4年前、1997年に奇作とも言える「Helpless」で青山真治監督に若手グランプリ賞を授与し、また同年、後に「HANA-BI」でヴェネチアを制する北野武監督の名作「Kids Return」に最優秀作品賞・最優秀主演男優賞(2名)を授与。さらに1998年には、後に「ギプス」で存在感を示す尾野真千子にいち早く「萌の朱雀」での演技で最優秀新人賞を授与するなどなど。そしてもう一つの特筆事項は、一般客も6000円程度の前売り券さえ買えば、ゲストスターたちが集うパーティー会場に入って共に飲食することができるということ。まさに夢のような一夜となること間違いなし。望むべくは、もうすこし街全体としての盛り上げを工夫することと、授賞式参加のためには徹夜で並ばざるを得ない現状の改善か。
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■「日本映画プロフェッショナル大賞」 目的<1> 時期:4月 於:池袋
http://www.filmcity.co.jp/fc/n/npro/11th.htm ふれあい度★★
 ミニシアター事情通の大高忠雄氏が中心となって開催する、評価されるべくしてされなかった作品・俳優・監督に対する授賞を目的とした奇祭。現役プロデューサー、脚本家、評論家、配給・宣伝・興行関係者たちからなるパネラーの投票がすべてを決める。一般映画館(新文芸座)での豪華受賞者たちの挨拶と記念上映会がメイン行事。興業成績など気にせず選ばれた受賞作品に対する大高氏の偏見のこもったコメントを聞くのも楽しい。
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■「横浜フランス映画祭」 目的<3> 時期:6月 於:パシフィコ横浜
http://www.unifrance.jp/yokohama/ ふれあい度★★★
 本邦未公開のフランス新作映画を豪華なゲストのティーチ・イン(舞台挨拶&観客との質疑応答)を交えて上映。フランス映画は時にフランス国内上映後2〜3年も立たないと本邦で公開されないことがあるため、お目当ての出演者の作品がある場合は貴重な観賞チャンスとなることが多い。上映終了後に一部ゲストにより開催されるロビーサイン会が魅力。筆者もあこがれのパトリス・ルコント監督に映画のパンフ表紙にサインを頂いた経験あり。おかげで終電を逃して翌朝横浜からの出勤となってしまったが。そう、年々人気を増すこの映画祭の難点は、チケットの取りにくさと、タイトなスケジュールがこなせずプログラムが後にずれ込むことが恒常化していること。
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■「あおもり映画祭」 目的<2><3> 時期:7月 於、青森県内各地
http://www.7-dj.com/jp/cinema/special/spe054/spe054.html 
 今回(7/20)宮崎あおいさんと前田組(前田哲監督ファミリー)の登場を見届けるためと、本邦初公開となる中原俊監督の新作「でらしね」の観賞を果たすために夜行バスにて東京より入青。ということで、地方映画祭の代表として紹介してみよう。今年はメロンの里・木造町の町営ホールをメイン会場に、青森市内、弘前市内の公共施設や一般映画館で2週間あまりにわたって上映会を実施。招待作品は11本+αと少なめで、県内初公開となる作品が多く啓蒙的な色彩も強いが、今年は地元に縁の故・相米慎二監督の追悼企画として8名の豪華ゲストを招いてのメインイベントも実施し、郷土色、独自色を出すことにも成功。県外からの参加客はほとんど想定していない祭典だが、これを契機として来年からの更なる発展が期待される。
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 その他、探してみると驚く程たくさんの映画祭が国内各所で開催されています。HPのあるものについていくつか以下に列挙してみますので、興味のあるもの、近所で開催されるものがあれば、ぜひ覗いてみて下さい。

■横浜映画祭 http://homepage3.nifty.com/yokohama-eigasai/
■湯布院映画祭 http://www.d-b.ne.jp/yufuin-c/ycf/ycftop.html
■京都映画祭 http://www.kyoto-filmfes.jp/2001J/index.html
■函館港イルミナシオン映画祭
  http://illumination.dish.ne.jp/info/27_index_msg.shtml
■宮崎映画祭 http://www.bunkahonpo.or.jp/mff/
■キンダーフィルムフェスティバル http://www.kinder.co.jp/frame-j.htm
■水戸短編映画祭 http://www5a.biglobe.ne.jp/~eigasai/
■長岡アジア映画祭 http://www.mynet.ne.jp/~asia/index.html
■にいがた国際映画祭 http://niigata.cool.ne.jp/film/index.htm
■秋田十文字映画祭
  http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Stage/4841/jcf/index.html
■ヨコハマ映画祭 http://homepage3.nifty.com/yokohama-eigasai/
■しんゆり映画祭 http://siff.moon.ne.jp/home.html
■調布映画祭 http://isweb39.infoseek.co.jp/cinema/chohu/index2.htm
■古湯映画祭 http://www2.saganet.ne.jp/kasuke/eigasai_top.htm

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     ★連日「害虫」「EUREKA(ユリイカ)」を上映!★
          とき : 7/27〜8/9
 ところ : 東京・吉祥寺バウスシアター http://www.baustheater.com/
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        ★★★★★舞台挨拶決定!★★★★★
   8/3(土)5:10の上映前に「害虫」主演女優の宮崎あおいさんと、
   日本映画の新鋭、沢木哲さんが来館し、舞台挨拶を行う予定です!
    詳細は劇場まで。 吉祥寺バウスシアター 0422-22-6631
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