クリスマスと言えば、この映画! 2002/12/23

 えっと、クリスマスに全く縁のないkoalaから、クリスマスにちなんだ旧作映画のご紹介です。イヴには間に合わないけれど、お正月休みにでもホッコリと楽しんで下さいまし。最初は、ベタなものから・・・

■「クリスマスに雪は降るの?」 オススメ度:★★★★
監督/サンドリーヌ・ヴェイセ (1996年 仏)
出演/ドミニク・レイモン、ダニエル・デュバル
□あらすじ
 毎日農作業に汗を流す一見幸せそうな母親と7人の子供たち。でも、彼らの家庭はいわゆる<妾宅>。訳あっての選択ではあったが、旦那の冷たい仕打ちに疲れ果てた母親は、クリスマスの夜に・・・。神は彼らを見捨てるのだろうか?
□みどころ
 夏から冬へと向かう南仏プロヴァンスを舞台に繰り広げられる家族の愛の賛歌。ラストに重なる名曲「雪は降る」の歌詞がこれほど重い意味を持って響くものであることに驚かされる。単調で厳しい農家の日常を描いただけなのに、そこから家庭のぬくもりや母親の子供たちへの愛と苦悩、父親の葛藤が自然と伝わってくる。訳あって妾宅での暮らしに甘んじる母。母を愛するがために私生児であることを甘受する子供たち。みんないじらしく愛おしい。神の使徒になった気分で、罪なき彼らに奇跡の起こらんことを、共に祈ろうではないか・・・。
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■「ロレンツォのオイル 命の歌」 オススメ度:★★★★
監督/ジョージ・ミラー (1992年 米)
出演/ニック・ノルティー、スーザン・サランドン
□あらすじ
 不治と言われる遺伝病にかかった我が子の回復を狂信的なまでに願い、自ら行動した夫婦の軌跡を描くドキュメンタリー。
□みどころ
 はじめ、子供の病気によって家庭が破壊されて行く「普通の人々」のような暗澹たるストーリーかと思わせるが、ラスト30分の展開によって、まるで「ショーシャンクの空に」を思わせる感動に包まれる。
 この作品の感動を普遍的なものにしているのは、夫婦の行動や思考に宗教的な色彩が希薄なところ。それどころか寧ろ、唯物論的とも言える極めて科学的な探求心と信念に導かれた、神をも恐れぬ行為であると言えるかもしれない。「ER」並みに医学用語が飛び交うが、夫婦が学ぶ過程に沿って、観る者もちゃんとついて行けるから不思議。クリスマスは、ちょっと出てくるだけですけど。
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■「ポンヌフの恋人」 オススメ度:★★★★
監督/レオス・カラックス
出演/ドニ・ラヴァン、ジュリエット・ビノシュ
□あらすじ
 修復のため閉鎖中のポンヌフ(=第9橋)で寝起きする大道芸人アレックスは、初恋に破れ不治の眼病に悩んで放浪する娘ミシェルと橋上で出会い、恋に落ちる。別れの後、約束通りクリスマスの夜に二人は再会するが・・・
□みどころ
 「ボーイ・ミーツ・ガール」「汚れた血」と連なるレオス・カラックスによる<アレックス青春三部作>の最終章。ちなみにアレックスは監督の本名。
 カラックスの映画は、いわば計算され尽くしたスナップショットの連続だ。恋であれ、人生であれ、個々の「瞬間」にこそ真実がある。ほとばしる熱情はたとえ持続せずとも、ほとばしったその瞬間は、真実だったはずだ。だから、彼の作品は、それぞれのシーンに脈絡が無くても、全て観終えたあとには、強いメッセージが心に残る。むしろ観客は脈絡を期待してはいけないのだ。次々とフラッシュするシーンの連続を「感じる」ことが大切なのだ。
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■「ロッタちゃん はじめてのおつかい」 オススメ度:★★★★
監督/ヨハンナ・ハルド (1993年 スウェーデン)
出演/グレテ・ハヴネショルド、ベアトリス・イェールオース
□みどころ
 2000年に、前作の「ロッタちゃんと赤いじてんしゃ」と共に公開されて大ヒット。実はこの作品、製作は古く、「ロッタちゃんとクリスマス」というタイトルで一度ビデオ化されている。文字通り、チビ助でワガママでオテンバな5才の少女ロッタちゃんが、ツリーのないクリスマス、お菓子のない復活祭という家族の一大事を、積極果敢な行動力と見事な頭の回転で次々と解決してゆく痛快な一作。未見の方はこの機会にぜひ!
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■「ブッシュ・ド・ノエル」 オススメ度:★★★
監督/ダニエル・トンプソン (1999年 仏)
出演/エマニュエル・ベアール、シャルロット・ゲンスブール
□あらすじ
 浮気ものの父と三人の娘。そしてなぞの居候青年。クリスマスという一大イベントに各人各様穏やかならざる心境で集った複雑な家族関係の父娘+αが繰り広げる兄弟と男女と親子の愛にまつわる悲喜こもごも。妻子持ちの男を相手の高齢妊娠、青年との淡い恋とそこに持ちあがる<血縁疑惑>、母が打ち明けるそれぞれの娘の<本当の父親>に関する衝撃の事実。
それらはすべて、クリスマスという聖なる夜の闇に収束してゆく。
□みどころ
 「王妃マルゴ」「ラ・ブーム」「恋の病い」「愛する者よ、列車に乗れ」などの脚本を担当したトンプソン女史の監督デビュー作。フランスでは異例のロングラン・ヒットとなった本作だが、「愛する者よ、列車に乗れ」同様、哲学や理屈が前面に押し出された展開にはストレートさが乏しく、今一つ馴染めない。「恋の病い」や「王妃マルゴ」のように、一本強い筋の通った脚本の復活を願うところ。
 でも、ベアールとゲンスブールを同時に楽しめるだけで、フランス映画ファンには充分価値あり!

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■「スモーク」 オススメ度:★★★
監督/ウェイン・ワン (1995年 米・日)
出演/ハーヴェイ・カイテル、ウィリアム・ハート
□あらすじ
 14年間欠かさず店から見える街角の風景を毎日撮り続けているブルックリンの煙草屋の主人。。。
 14年前、彼は万引きした少年を追ううち、彼が落とした財布を拾った。中には少年の写真が。クリスマスの日、主人はふとその財布に書かれた住所へ財布を届けに行く。出迎えた盲目の老婆は、彼をその少年と間違え、二人はしばし、かりそめの祖母と孫の役を演じて時を過ごす。そして・・・
□みどころ
 妻と死に別れて以後書けなくなった作家。車に轢かれそうになった彼を助けた黒人少年。そして煙草屋。無関係に見える彼らの人生も、ちょっとしたタイミングやきっかけで、互いに交わりあってゆく。その繊細なタッチがすばらしい。

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■「群衆」 オススメ度:★★★
監督/フランク・キャプラ  (1941年 米)
出演/ゲーリー・クーパー、バーバラ・スタンウィック
□あらすじ
 リストラされそうになった新聞社の女性コラムニストがやけくそで書いた、悪政に抵抗しての自殺予告に関するでっち上げ投稿記事が思わぬセンセーションを巻き起こす。
□みどころ
 名匠フランク・キャプラによる名作。
 改めて,人間の宗教性について認識させられる。暗い時代。何かにすがりたい人々の気持ちを捉えたのは、助け合い運動。一年中をクリスマスにしよう。そんな単純なキャッチフレーズ。しかし、運動の終焉のありさまを見ると、人々は運動の中身よりも、なにか心の支えとなる行動規律を欲しているだけなのだと分る。運動の背景に何があるにせよ、その始まりがでっちあげだったにせよ、運動が謳う精神自体は普遍的なもののハズだ。ところが、多くの人々は、運動の終焉と共にその精神までもあっさりと捨ててしまう。その結末がなんとも寂しい。


<koala>

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