「Jam Films(ジャムフィルムズ)」で日本映画を知ろう! 2002/12/31

 今、「Jam Films」という短編映画のコンピレーション・フィルムが東京から順次全国公開中です。北村龍平、行定勲、堤幸彦、岩井俊二、望月六郎、篠原哲雄、飯田譲治という、日本映画界で最もイキのいい若手(?)七監督が結集し、個々の好みで自由に撮った20〜30分程度の短編映画をまとめて標準サイズの映画一本分にしたもの。ファンはもとより、日本映画入門者にも、監督の物色に最適。ここから邦画の世界をグっと深めていって欲しいところ。
 行定監督は「GO」「ひまわり」、堤監督はテレビドラマを中心に「TRICK」「金田一少年の事件簿」「ケイゾク」、岩井監督は「ラブレター」など多数、篠原監督も「木曜組曲」「命」「月とキャベツ」、飯田監督は「NIGHT HEAD」「らせん」で有名。今回は残る二監督過去作について簡単に紹介してみましょう。
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北村龍平監督の代表作はコレ。
■「VERSUS」(2000) オススメ度★★★★
    出演/坂口拓、榊英雄、松田賢二、新井雄一郎、松本実
□みどころ
 普段アクション映画をあまり見ない筆者でも、公開時の予告編映像には思わず触手が動いた程の、素晴らしい切れ味のドライなバイオレンス・エンタテインメント。
 ストーリーは単純で、500年昔の因縁の対立に端を発した宿命の対決を強いられている兄弟が現世に転生し、一人の少女を巡って傭兵や殺し屋、警官、そしてゾンビまで交えた壮絶な殺戮戦を森の中で繰り広げるというもの。とにかく、人と人が出会えば即武器をかざし合うという、対決シーンのみで構成された二時間。ストーリーは、そうした対立劇に理由付けするためだけに編み出されたもの。
 確固とした兄弟の対立軸以外は、対峙するたびに敵味方が変動し、いつ何時味方に脳髄を撃ち抜かれるやも知れないという極度の緊張感と、飛び散る肉片や血液も絵空事に思えるような乾いた、そう、ゲームのような殺戮が痛快。ワイヤーアクションを取り入れた多彩な動きも楽しい。登場人物のキャラクターも明確で無駄がなく、俳優の布陣も適役ぞろいで、それぞれに存分に個性を発揮。このあたりもテレビゲーム感覚で楽しい。
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 望月監督はこの二作。ほかに原田芳雄・片岡礼子主演「鬼火」★★。
■「恋 極道」(1997) オススメ度:★★★★
        出演/奥田瑛二、夏生(なつお)ゆうな、オール巨人
□みどころ
 落ち目の組を率いるヤクザの武闘派組長(奥田)が、ふと出会った女子大生(夏生)に一目惚れし、彼女を拉致。やがて彼女も彼を愛し始め、二人は組織の追求から逃れて落ち延びて、小さな幸せをみつけたかに見えたが・・・
 ジョディー・フォスター&デニス・ホッパーの「ハートに火をつけて」や一連の「完全なる飼育」シリーズ(現在、第三作が上映中!)のような、誘拐犯と被害者との間に芽生える恋情を描いた作品。プロット自体は陳腐とも言えるのだが、とにかく夏生ゆうなの、ちっちゃなちっちゃな生き物のような愛らしさがいい。奥田演じるヤクザの荒ぶる心を奪うだけの魅力が彼女には宿っていて、物語に説得力を与えている。

■「皆月」(1999) オススメ度:★★★
         出演/奥田瑛二、吉本多香美、北村一輝、荻野目慶子
□みどころ
 愛妻に逃げられ、金も仕事も未来もすべて失った中年男と、何もない彼になぜか惚れてしまったソープ嬢、そして妻の弟の三人が、妻と情夫と持ち逃げされた金を取り戻すために二人の足跡を追う。
 非常に古風な作風である。美学は伝わるが際立った表現力、繊細さはない。そこを、主役俳優やマドンナ的主演女優の存在感を際立たせることで補って余りある。古き良き低予算日本映画。20年ぐらいタイムスリップしたような独特の映像世界は、俳優と一体化した主人公たちの生身の存在が強く印象に残り、安らぎを得た孤独な魂の穏やかな寝息が聞こえるようだ。
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■「SF Short Films Japan Tour 東京公演」in 渋谷公会堂 1/20(月)
 さて、「Jam Films」に対抗したわけではないのでしょうが、「SF サムライフィクション」「Stereo Future 〜 episode 2002」「RedShadow赤影」で熱狂的なファンを獲得した中野裕之監督プロデュースの短編映画コンピレーション作「SF Short Films」が、Japan Tourと銘打って、多彩なゲストと共にホール上映ツアーを展開します。第一弾は東京公演
 日時:2003年1月20日(月)19:00〜 渋谷公会堂。
 ゲスト:中野監督、安藤政信、桃生亜希子(^^)vほか(予定)
(入場券は、12/31現在まだ余っている模様!ぴあなどで。)
 短編は、
「Slow is beautiful」「Return」(中野裕之監督/麻生久美子主演)
「仲良き事は良き事かな」(中野裕之監督/シティーボーイズ主演)
「アダー・ジェット」(安藤政信監督/麻生久美子主演)
「県道スター」(ピエール瀧監督/安藤政信・ゲッツ板谷主演)
「ハナとおじさん」(芦沢康久監督/ピエール瀧・ハナエ主演)
の全6作品で構成されている。
 以前にも書いたが、筆者としては、有名監督作品のノーコンセプトの寄せ集めである「Jam Films」より、例えばこの「SF〜」のように、有名監督の名の下に、映像を志す新人たちの作品を合わせてパックした企画の方が、将来への展望もあって好感が持てるし、楽しい気がする。寄せ集めにしても、何か一貫したテーマがあった方が、一本にまとめる意味があるのではないだろうか。
 映像コンテンツがネット配信されるようになると、手軽にDL・視聴ができる短編が大きな位置を占めるのではないかとも言われている。また、新人にも製作が手軽で、隠れた才能を発掘するのにも絶好の土俵。本作にも大いに期待したいところ。
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■短編映画といえばココ! 短編映画専門映画館<Tollywood>
 館名は「トリウッド」と読み、「東京」と「ハリウッド」をかけた造語。名付け親はあの関根勤さん。
 ここでは、約50分以下の短編だけを毎時プログラムを変えて上映していて、専門館としては日本随一。最近では「演じ屋」という短編による連続ドラマシリーズが大ヒット。そのほかにも、新人監督の自主作品や有名監督の隠れた短編の貴重な上映の場として最近注目を浴びている。
http://homepage1.nifty.com/tollywood/

■日本映画雑誌「QRANK」第二号 やっと発売!
 予定から7ヶ月余り遅れての第二号がようやく完成。有名書店やテアトル新宿内で販売されている。日本映画ファンにはこの上ない濃い内容。
http://www.p2p-network.com

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