ナチのユダヤ迫害モノ、あなたはどんなのがお好き? | 2003/01/25 |
「テス」で有名なロマン・ポランスキー監督のカンヌ受賞作「戦場のピアニスト」がいよいよ2月に公開されます。物語の舞台は、ナチス占領下のポーランド。そう、ユダヤ人迫害ものです。一方、新宿高島屋上階のテアトルタイムズスクエアでは、「バティニョ−ルおじさん」という、こちらはナチス占領下のフランスを舞台にしたユダヤ人迫害モノが大ヒット公開中。ということで、今回はユダヤものの特集とゆきましょう。 ■「バティニョールおじさん」(2002年 仏) オススメ度★★★★☆ 監督/ジェラール・ジュニョ 出演/ジュール・シトリュック、ミシェル・ガルシア、ジャン=ポール・ルーブ 劇場/新宿 テアトルタイムズスクエア □あらすじ 小心者の食品店主・バティニョ−ル。気が弱いから放っておけなくて、あろうことかユダヤ人の少年をかくまうハメになり、危険が迫っているのをやっぱり放っておけないから、遂には国外逃亡の手引きまですることになって、またまた放っておけないから。。。 □みどころ 「まぼろしの市街戦」や「陽だまりの庭で」のフィリップ・ド・ブロカ監督ファンは必見! ヨーロッパのトラウマであるナチスとユダヤの問題に、当事者でありながらファンタジックでコミカルな味付けをしてしまうフランス映画のすばらしさ(ナチに協力してしまった過去が少〜し後ろめたいのかも?)。頼りなげに見えるバティニョールが、ここぞという窮地に際して意外な機転を利かせる、そのギャップが痛快。ドイツ軍の協力者として生き抜こうとする者、ユダヤ人の亡命に絡んで一儲けをたくらむ輩、裸の王様チックなドイツ軍人たち、そして、内心反対しながらも当局の摘発を恐れてユダヤ人に何もてを差し伸べられない大多数の小市民たちと、見事にプロトタイプ化された登場人物たちが、深刻な物語にえも言われぬ滑稽さを醸し出す。筆者大推薦。 ────────────────────────────── ナチ、フランス、スイス、ルノアール、指輪という「バティニョールおじさん」のキーワードで思い出すのが、このビデオ作品。 ■「ダニエル・スティール 標的(1)(2)」 ★★★★☆ 監督/アーマンド・マストロヤンニ ビデオレンタル中 出演/ナスターシャ・キンスキー、マイケル・ヨーク、ジャン・マーシュ □みどころ 第二次世界大戦を挟んで、ドイツ人銀行家令嬢アリアナとの波乱の半生を、三十余年の時間にわたり、ドイツ、フランス、ロシアを股にかけて描く壮大なロマン。アリアナを巡る家族や友人、恋人たちを、母から受け継いだ指輪とルノワールの静物画が巡り、結びつけてゆく。 ────────────────────────────── ■「小さな赤いビー玉」 (1975年 仏) オススメ度★★★ 監督/ジャック・ドワイヨン ビデオレンタル中 出演/リシャール・コンスタンティーニ、ポール=エリック・シュルマン □みどころ 1941年、ナチスドイツ占領下のフランス。ユダヤ人ジョゼフ一家は、ナチによるユダヤ人掃討を避けて、ドイツの手に落ちていない南仏へ、一族の存亡をかけて、家族それぞれの方法での脱出を試みる。知恵の限りを尽くして身を潜める主人公たちは、はたしてこの密告の恐怖に満ちた社会を生き抜くことができるのだろうか。。。 フランス映画にしてはひねりのないガチンコなストーリー展開。ドイツ本国ではない被占領国でのユダヤ人の現実は、「戦場のピアニスト」が描くポーランドの状況に通じ、興味深い。 ────────────────────────────── ■「耳に残るは君の歌声」(2000年 英仏) オススメ度★★★ 監督/サリー・ポッター ビデオレンタル中 出演/クリスティーナ・リッチ、ジョニー・デップ、ケイト・ブランシェット □みどころ ナチス・ドイツが席巻する動乱のヨーロッパ。家族の許を去った愛しい父の姿を求めて、ロシアからロンドン、パリ、そしてニューヨークへとユダヤ人少女の旅は続く。一枚の父の写真と、父に授かったその美声だけを頼りにして。。。 さながら、「父を訪ねて三千里」である。ドラマティックである。少女の澄んだ歌声と遠くを見つめる瞳と、父を髣髴とさせる圧倒的なテノールの美声だけは、観終わった後も脳裏に焼きつく。 ────────────────────────────── 最後に、新作映画の激早紹介を。。。 ■「戦場のピアニスト」(2002年 仏独波英) オススメ度★★★ 監督/ロマン・ポランスキー 2月劇場公開予定 出演/エイドリアン・ブロディ、トーマス・クレッチマン □みどころ カンヌ映画祭パルムドール受賞作。東京国際映画祭特別招待作品。 ナチス・ドイツの侵攻、ユダヤ人迫害、ワルシャワ蜂起、ソ連進攻、そしてワルシャワ開放。そんな中にあっても、動乱のワルシャワに留まり続け、見事生き抜いた一人のユダヤ人ピアニスト・シュピールマン。生きるか、戦うか、あきらめるか。彼は名誉よりも意地よりも、生きる道を選んだ。そして。。。 シュピールマンの奏でるピアノが実に心に染み入る。そしてそれは、荒み疲れきったドイツ将校の心さえ動かしたことにも大きな説得力を与えている。 <koala> |