「僕のスウィング」 ジプシーの魅力 2003/02/13

■「僕のスウィング」 (2002年 仏) オススメ度 ★★★★
監督/トニー・ガトリフ 出演/オスカー・コップ
上映/シネマライズ HP/http://www.my-swing.jp/menu.html
□あらすじ
 ジプシー居留区にジプシーギターを習いにやってきたフランス人少年マックスと、ジプシーの少女スウィング、そして音楽に満ちた日常を送るジプシーたちとの、一夏の甘くて熱く、やがて切ない交流記。
□みどころ
 奔放な母が不在の日々、祖母と兄弟たちだけでひっそりと暮らすマックスは、「ギター」が結んだ縁で、誰をも拒絶しないジプシーの人々の中に入って、様々な事物を見、聞いて、めくるめく興奮の毎日を送る。とりわけ美しい少女スウィングに彼は虜にされる。野に、水辺に、二人は飽きることなく来る日も来る日も共に時を過ごす。永遠に続けばいい。。。心底そう思える至福の日々。でも、子供にはどうすることもできない親の事情が、やがて彼らを引き離すことになる。展開の端々で、終わりの日が遠くないことが仄めかされ、その一点に向かって、楽しい時が収束してゆく。
 二人の様子が楽しいそうなほど、切なさが余計募ってくる。これがまた実に自然な演出で、恋とも友情ともつかない二人の微妙な親密感が描き出される。ジプシーたちが自らの悲しい歴史を語るシーンも、ジプシーたちがフランス人女性にコンサートの指導をするシーンも、時間的にはかなりの尺を割いているにもかかわらず、物語の流れの中でごく自然に受け入れられる構成・演出の妙。
 何よりも、彼らの紡ぎ出す無国籍なサウンドがあまりに心地よくて、時のたつのも忘れてしまう。もしかすると、彼らが殊更に人々から差別されるのは、彼らの文化無き文化が持つ麻薬のような魅力に人々が恐れをなしての所作ではないのか、そんなことさえ想像してしまう。少女スウィングの持つ怪しいまでの魅力も、その畏れのひとつなのかも、と。

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 ジプシーものと言えば、まだ記憶に新しいのが、メジャーファン・ミニシアターファンを共に魅了した「ショコラ」.。その他、ジプシーもので思いつくのを何作かご紹介。。。
■「ショコラ」 (2000年 米) オススメ度 ★★★★★
監督/ラッセ・ハルストロム
出演/ジュリエット・ビノシュ、ジョニー・デップ、ジュディ・デンチ
□みどころ
 フランスの小さな田舎町を舞台に、因習と流浪、それぞれの囚われ人たちが、不思議なスパイスを忍ばせたショコラによって癒され、解放されてゆくさまを描いた、涙あり、笑いあり、芯から心温まる一級のファンタジー。ジプシーを演じるジョニー・デップの香り立つ色気には、男の筆者もメロメロ。

■「耳に残るは君の歌声」 (2000年英仏) ★★★
監督/サリー・ポッター  出演/クリスティーナ・リッチ、ジョニー・デップ、ケイト・ブランシェット
□みどころ
 ナチス・ドイツが席巻する動乱のヨーロッパ。家族の許を去った愛しい父の姿を求めて、ロシアからロンドン、パリ、そしてニューヨークへとユダヤ人少女の旅は続く。一枚の父の写真と、父に授かったその美声だけを頼りにして。さながら、「母を訪ねて三千里」のドラマティックな展開。
 J・デップがまたまたジプシー役で登場。リッチ演じる少女の澄んだ歌声と遠くを見つめる瞳と、父を髣髴とさせる圧倒的なテノールの美声、そしてブランシェット演じるダンサーの小粋さに酔う2時間。

■「ムーラン・ルージュ!」 (2001年 米・豪) ★★★★★
監督/バズ・ラーマン 
出演/ニコール・キッドマン、ユアン・マクレガー
□みどころ
 世紀末の1900年パリ。歌姫にして高級娼婦である一人の美女サティーンを巡って夢のナイトクラブ「ムーラン・ルージュ」を舞台に燃え盛る、ジプシー劇作家・クリスチャンと公爵との恋の鞘当て。

■「スナッチ」 (2000年 米) ★★★★☆
監督/ガイ・リッチー 出演/ブラッド・ピット、ベネチオ・デル・トロ
□みどころ
 ロンドンを舞台に、86カラットのダイヤを巡ってならず者たちと獰猛な一匹のワン公が入り乱れて繰り広げるおかしなおかしな大争奪戦。
 本人の強い希望で出演叶ったブラピは、ロンドン郊外在住のパンキー(アイリッシュ系ジプシー)で、全身に刺青を施した素手ボクシングのチャンプというクールな役どころ。ロンドン市民にも理解不能なジャンキーな言葉を話し、賭けボクシングに駆り出されて""二悶着""を起こす。
 息つく暇ないスピーディーな展開で、抜群の面白さ。大推薦。

■「フェリックスとローラ」 (2000年 仏) ★★★★
監督/パトリス・ルコント 出演/シャルロット・ゲンスプール
□みどころ
 愛の伝道師・ルコントが、一級のサラブレッド、C・ゲンスブールを擁して描く愛の神話。
 移動遊園地を経営するジプシー、フェリックスの許にある日、謎めいた女性・ローラが現れ、素性も知らぬまま、二人は深い恋の淵に墜ちて行く。

■「窓からローマが見える」 (1992年 日伊) ★★★☆
監督/池田満寿夫  出演/中山貴美子、クラウディオ・カッシネリ、デリア・ボッカルド、佐藤陽子
□みどころ
 「エーゲ海に捧ぐ」に引き続く池田満寿夫原作・脚本・監督作。全編イタリアロケを慣行。音楽はポール・モーリアが担当。
 ローマで歌を勉強する17歳の日本人少女O(オー)と、妻のあるドン・ファン写真家カルロとの恋とその結末を描く。
 監督のパートナーでバイオリニストの佐藤陽子がジプシー・シンガーの役で登場し、本物のジプシーたちとセッションに興じるシーンが印象的。
 主演の中山貴美子がむっちゃくちゃカワイイ!!今は一体どうしているんだろう。。。
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 いよいよ13日(〜17日)から、北海道・夕張市を舞台に、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭(通称「ゆうばりファンタ」)が開催されます。http://www.nifty.ne.jp/fanta/yubari/sakuhin2003/index.htm
 筆者、昨年は日帰りで宮崎あおいさん出演作二本を観賞しただけでしたが、街全体が映画祭一色に染まるすばらしさに魅せられ、今年はフル参加を決行。Gackt&Hydeの「MOON CHILD」やチャン・ツイイーの「武士」などがプレミア上映され、「シベ超」企画も充実。近場の人はぜひ覗きに行きましょう!

<koala>

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