ゆうばりから、新作紹介 2003/02/24

 2/13〜17まで、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭に参加してきました。
http://www.nifty.ne.jp/fanta/yubari/index.
 寒い日は日中でも−9℃で、連日雪が降るという厳寒ではありますが、大半が地元民と言うことでリラックスした映画スターや監督たちと普通に町や飲食店で出会い、話しかけることができるという雰囲気は独特で、一般客も入場できるウェルカム・さよなら各パーティーや屋外でのストーブ・パーティーなど、とにかくスターとの交流が存分に楽しめるのが最大の魅力。筆者も、さよならパーティーでギャスパー・ノエにサインを頂いてしまい、感激しきりなのであります。きさくな寺島進さんは、ストーブ・パーティで一般客のためにオツマミを運んできて頂いたりと、こっちが気を使う程フレンドリーに節して頂きました。
 映画は、東京ファンタの関連映画祭ではありながら、いわゆる怪奇モノやSFに限らず、幅広いジャンルのコンペ作品や招待作品と接することができ、これが魅力でもあり、映画祭の色をわかりにくくしている問題点でもあります。観る方にはありがたいのですが、授賞となると、ジャンルの全く違う作品をどう比較するのか、基準が曖昧で、その賞の重みには疑問を感じます。

 今日は、この映画祭でプレミア上映された話題作を一挙にご紹介します。

■「リロ&スティッチ」(2002年 米 アニメ) ★★★
監督/クリス・サンダース
□あらすじ
 破壊プログラムを仕込まれた愛を知らないモンスター、スティッチが脱走して地球に不時着。犬に化けた彼は、姉と二人暮らしする孤独な少女・リロに飼われることに。暴れん坊のスティッチは、リロの深い愛情に触れ、姉と引き裂かれようとする彼女の窮状を目にするうち、愛に目覚めてゆく。。。
□みどころ
 ポケモンとトトロを足して2で割ったようなスティッチのキャラは、日本市場をよく研究した成果と思われ、なかなかカワイイ。ストーリーもハート・ウォーミングで、矢追純一チックなUFOネタも盛り込まれるなど、子供に同伴する大人へのサービスも施されていて、なかなかに楽しめる一作。

■「MUSA -武士-」 (2001年 韓中) ★★★★☆
監督/キム・ソンス
出演/チャン・ツィイー、チョン・ウソン、チュ・ジンモ、アン・ソンギ
□あらすじ
 明が元から中国の支配権を奪いつつある頃。明王朝を訪れた高麗の使節団はスパイの嫌疑をかけられ、西方の砂漠へと流刑に処せられる。途中、元軍に襲われ自由の身になった彼らは高麗への帰郷を目指すが、将軍は元軍に捕らわれた明の王女(ツイイー!)に一目惚れ。彼女を救出し、明王朝に忠心を示して誤解を解くという計を案じる。一方、姫は、身を挺して自分を守ってくれた使節団の奴隷ヨソルを憎からず思う。姫の救出は成功するが、元軍の執拗な追撃に逢い、やがて元に追われた明の領民たちまで抱え込み、姫を巡る将軍とヨソル、そして姫との心中を避けたい使節団員や領民と将軍たちとの確執は限界を超える。そして「最後」の日。。。
□みどころ
 中国からハリウッドに進出したわれらがツイイーが、今度は韓中合作の国際映画のヒロインとして帰ってきた!壮大なドラマと激しいアクションに酔い、ツイイー演じるあまりにハマった姫君の魅力に酔い、まさに夢のような2時間。「北ホテル」を思わせるラストの姫君とヨソルとの会話シーンでは、こみ上げる涙を抑えきれない。
 この作品、オリジナルは4時間の長尺で、中韓国内用のバージョンは2時間半程度あるらしい。これをさらに削って2時間強にしたのが、今回公開された「インターナショナル・バージョン」。

■「バリスティック」 (2001年 米) ★★★☆
監督/カオス
出演/アントニオ・バンデラス、ルーシー・リュー、レイ・パーク
□あらすじ
 元FBIのエクス(バンデラス)は、死に別れたと思いこんでいた最愛の妻の情報を与えることと引き替えに、女性工作員シーバー(リュー)に誘拐された国防情報局総帥・ガンツの息子の奪還を命じられる。こうして非情の殺人マシーン・シーバーとエクスとの死闘が開幕する。その過程で、思いがけず浮かび上がるガンツの正体。そして彼とエクスの妻の消息との意外な接点・・・
□みどころ
 「VERSUS」を彷彿とさせる、対決のためだけの状況設定と、ひたすら打ち続く激しい肉弾アクション。ファイティング・ゲーム世代の典型的作品だ。だが、そこに複雑な状況設定を盛り込み、ドラマ面・心理面も厚く描いた点が高く評価できる。
 ロケは、当初予定していたアジアから、テロを受けて急遽アメリカに変更されたようで、孤児を養成した殺人マシーンという設定や、市街戦の設定などと実際の背景との違和感は否めない。しかし、大小火器をふんだんに使用しての激しいアクションの迫力は満点で、ぜひ大スクリーンで楽しみたいところ。

■「福耳」(2002年 日) ★★★☆
監督/瀧川治水
出演/宮藤官九郎、田中邦衛、司葉子、坂上二郎、谷啓、宝田明
□あらすじ
 あこがれの看護婦を追って老人養護施設に就職してきた男は、入所早々、施設で死んだ老人の亡霊に遭。挙げ句、その亡霊に取り憑かれて、看護婦との間を取り持つことと引き替えに、老人があこがれる施設仲間の女性(司)への思いを遂げる手伝いをさせられる。
□みどころ
 純粋に面白い。精力ギンギンな老人施設の恋の相関図を、古き良き映画俳優たちが同窓感覚で演じる様は、観ていて実に楽しい。久方ぶりの銀幕登場となる司葉子の衰えを知らぬ脚線美と、田中邦衛とのダンスシーンがみもの。

■「MOON CHILD」 (2003年 日) ★★★★
監督/瀬々敬久
出演/HYDE、GACKT、ワン・リーホン、ゼニー・クオック、山本太郎、
寺島進
□あらすじ
 Gackt原案。日本崩壊後の近未来アジア某都市を舞台にした、ヴァンパイアと日中少年ギャングたちの友情と決別の軌跡。
□みどころ
 吸血鬼という存在を中心に据えたファンタジーと言っていいストーリーだが、とにかく主演のGacktとHydeが見せる無国籍的な怪しい美しさに魅せられて、奇想天外な設定も抵抗無く受け入れられてしまうのだから、やはり映画にとっての俳優の魅力が占める位置というのは大きい。
 日本が誇るビジュアル系ロッカーニ大巨頭の共演。演技をしている彼らを見る、というのもなかなか不思議なものなのだが、さすがGackt自ら書き下ろしただけあって、彼らのイメージを損なうことなく、かつ、音楽シーンで見るよりも遥かに美しい世界が展開する。正直、一人でもそんじょそこらの女の子よりはよっぽど美しい彼らが二人束になると、それだけで世にも耽美的な世界が広がり、夢見心地になってしまう。そしてあの、あまりに美しいエンディングと来たものだ!いやはや、恐れ入ったの一言。ロックスターのお遊びじゃん?なんて軽く見たらびっくりすること請け合い。

■「007 ダイ・アナザー・デイ」(2002年 米) ★★★★
監督/リー・タマホリ
出演/ピアース・ブロスナン、ハル・ベリー、トビー・スティーヴンス
□みどころ
 007シリーズ第20作んじして40周年となる記念碑的作品。
 日頃こうした作品はとんと見ない筆者だが、この作品に限っては、見る価値十分あり、と断言したい。まずはマドンナの同名タイトル曲と完全にシンクロしたあまりにカッコいいオープニング・タイトルで度肝を抜かれる。ツカミはこれで十分。洋楽嫌いの筆者でも、このサントラが欲しい!!とこのオープニングだけで思ってしまったのだから。
 蓋を開けてみると、北朝鮮の海岸にサーフィンで侵入するスパイたちで始まり、金日成がモデルとも思える北朝鮮の幹部とその危険な息子が登場し、顔がすりかわるという、ミッション・インポッシブル2ばりの奇想天外なストーリー、ミステリアスな氷の国・アイスランドを舞台にしたド迫力アクション、見えない車と、従来の敢えてレトロを狙った演出とは打って変わった近未来的な設定で、観客を見事に虚構の世界に導いて行く。
 ボンド・ガールたちも、今回は皆が皆プロのスパイで、いつになく手ごわい。それでいて、ボンドの<あり得ない>サバイバルぶりや、国際的スパイとは思えない女に対するスキの多さはそのまま。
 記念作とあって、過去作で使われたさまざまなスパイ・アイテムが一挙登場するというサービスカットもあって、実にサービス精神豊か。

■「As Far As My Feet Will Carry Me(仮題)」(2001年 独)★★★★
監督/ハーディ・マーティンス
出演/バーナード・ベターマン、ミシェル・メンデル
□あらすじ
 終戦後、極寒のシベリア東部に抑留されたドイツ軍将校が、家族に会いたい一心で脱走し、どこまでも続く白く不毛な大地を、様々な人との出会いを重ねつつ3年かけて、14000キロ余り踏破するという、実話に基づく壮大な脱出劇。
□みどころ
 僅かな希望と強い意志で行動する主人公とは裏腹に、ホワイトアウトした光景からは「絶望」というものを映像として実感させられる。
 この世から消えつつある、戦争を知る世代。その貴重な体験をフィルムに刻んで後世に伝えたい・・・この思いが、監督を動かし、一年半にも及ぶロシアでの長期ロケに俳優たちを駆り立てた。テイストから言っても、ドラマというより、余分な脚色が一切省かれた正攻法の記録映画に近い。ロード・ムービーのメッカ、ドイツならではの作品、とも言えよう。
 タイトルは仮題で、恐らく邦題が付けられての公開となるだろう。興味ある向きは、監督名をしかと記憶に止められたい。

━…━…━…━…━…━…━…koala's Info ━……━…━…━…━…━…
 おまけ。
■「青の炎」(2003年 日) ★★★
監督/蜷川幸雄
出演/二宮和也、松浦亜弥、鈴木杏(特別出演)、秋吉久美子、中村梅雀、山本寛斎
□あらすじ
 家族(=母と妹)思いの頭のいい少年。その平和な暮らしは、離婚したはずの継父の突然の「帰宅」によって瓦解する。酒と暴力で家族に影を落とし、傍若無人な振る舞いで和を乱す憎き存在。しかし少年は、母が彼を「受け入れた」ことの深い「理由」を程なく知ることとなる。そして少年は彼の完全なる殺害計画を実行に移す。うまく行ったかに見えた計画だが、後にわずかな綻びが露呈し、少年は新たな「計画」の実施を迫られる。そんな彼の一部始終を、教室の片隅からじっと見つめる無口な少女の目と、少年の中に大きな秘密の存在を嗅ぎ付けたベテラン刑事の鋭い目が、彼を破滅へと追い詰めて行く。
□みどころ
 「sweet sixteen」と「リリィ・シュシュ」のハイブリッドといった感じのストーリー展開で、屈折した少年の心の裏側に迫ろうとする。
 松浦・二宮という両新人アイドルを主役に据えた本作。究極のアイドル映画を撮りたい、という監督の思いとは裏腹に、二人の着実な演技によって、いわゆるアイドル映画のカテゴリーには片付けられない、そつのない作品に仕上がっている。、演出面では、朗らかアイドルの松浦に一切笑顔を見せさせず、彼女の魅力的な「目」の強さを十二分に生かした点が効果的だった。二宮も、細かい演技には未熟さもあるが、どこにでも居そうな、貧弱で目立たない少年が持つ暗いパワーをよく表現している。
 音楽は東儀氏で、少年の中で静かに進行する衝動を見事に表現。エンディング曲も、歌詞の内容が本編にあまりに符合していて、感服。こうした周辺演出効果で、映画としては満足感の高いものとなっている。

<koala>

koala TOP koalaの映画三昧 TOP koalaのミニシアター 映画メルマガ「movie times」 掲示板