名作発見! 「ラスムス君の幸せをさがして」&「女はバス停で服を着替えた」 2003/03/23

 相変わらず、土壇場まで映画館廻りをしていて原稿が遅れています(^^ゞ(って読者には関係ないか)。さて、今日は久々に掘り出し物の名作を見つけたので早速のご報告です。

■「ラスムスくんの幸せをさがして」(1981年 スウェーデン) 
監督/オル・ヘルボム、ロルフ・ハスバーグ オススメ度:★★★★★
出演/エリック・リンドグレーン、アラン・エンドワール
公式HP:http://www.tdf.toshiba.co.jp/tdf/rasmus/
上映情報:http://www.walkerplus.com/tokyo/latestmovie/mo1762.html
上映館:現状、首都圏ではシネリーブル池袋のみ

□あらすじ
 退屈な孤児院を脱走した少年ラスムスは、自力で里親を探す旅へ。泊まった干草小屋で彼は、アコーディオン片手に放浪するおじさん、""パラダイス""・オスカルに出会う。ほどなく意気投合した二人は、相棒として道を共にすることに。道中、様々な危機に遭遇するが、力を合わせてそれらを乗り越え、二人の絆はますます深まって行く。でも、ラスムスの目的は里親探し。ふたりの別れの日は迫っていた。さて・・・

□みどころ
 「ロッタちゃん」シリーズでブレイクしたスウェーデンから、またまた素敵なファンタジーがやってきた!そう、原作は、この「ロッタちゃん」シリーズや「長くつ下のピッピ」で知られるスウェーデンの童話作家アストリッド・リンドグレーン。
 ギャングも警官もフーテンも、そしてシブチンな貴族も登場するのだけれど、すべてのことにとてもとても寛容な社会の温かさが、この二人の冒険をやさしく見守ってくれる。そして、二人は毎日毎日歩き通すのだが、そのあちこちで孤児院の面々と遭遇することからみても、意外に大した距離を移動していない。こうした「小冒険」ぶりは、後に明かされるオスカルの秘密へとつながって行く。森と湖の国・スウェーデンの、あまりにも美しい風光の中、最後まで結末を予想させないハラハラドキドキの物語が展開する、どこまでも優しい優しいおとぎ話。
 これはお国柄なのだろうか、ロッタちゃんにも共通する、ゆったりとした独特のマが何とも心地よい。そう言えば、お隣のフィンランドの、アキ・カウリスマキ監督作品にも、毛色はちがうけれどやっぱり独特のマが。これにひとたびハマると、抜け出せない。
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 さて、この作品、製作年をみてわかる通り、ロッタちゃんと同じく、作られたのは約20年前。スウェーデンはやっぱり遠い国。ロッタちゃんの成功がなければ永久に観ることができなかったかもしれません。
 スウェーデン映画で思い出すのは、スウェーデン出身の名女優イングリッド・バーグマン初期の主演作「スウェーデンイェルム家」「六月の夜」「女の顔」「一夜かぎり」「ムングブローの伯爵」「ワルプルギズの夜」「ドル」(すべてビデオ化され、ツタヤ新宿店などではレンタルもされています)や、脱走軍人とサーカス団の娘との駆け落ちを描いた名作悲劇「みじかくも美しく燃え」(1967年;ボー・ビーデルベルイ監督)。この機会にスウェーデン映画、究めてみてはいかがでしょうか?

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 おまけ、と言っては何ですが、邦画にも地味ながら名作を発見。こちらは新作です。
■「女はバス停で服を着替えた」 (2002年 日) ★★★★
監督/小沼勝
出演/戸田菜穂 遠藤憲一 中村麻美 北村和夫 宮本大誠 モロ師岡 
上映館/渋谷ユーロスペース(レイトショウ)
公式HP/http://www.argopictures.jp/lineup/onnaha.html
□あらすじ
 拭い去れない過去と決別すべく、男は都会と最愛のダンスから離れ、もはや係累もわずかとなった郷里に舞い戻って蕎麦職人の修行に没頭する。そこへ、ある女が、都会の香りを漂わせて追ってくる。。。
□みどころ
 年々演技にも身のこなしにも色艶を増す旬の女優・戸田菜穂、激しさを内に秘めた無骨な男の静けさ、と言った役どころでここのところ新境地を開拓した遠藤憲一、クールな外見と素朴な内面を見事に演じ分ける最も注目すべき若手女優の一人、中村麻美(「白い船」「東京ゴミ女」)、そして笑顔の内側に男の哀愁を宿すモロ師岡。この四人の俳優たち、いやさらに、老いて尚強い心根を宿す北村和夫を合わせて五人の魅力を最大限に引き出した小沼マジック。過去を生きる二人と今を生きる二人。そんなニ世代の男女関係の対照も素晴らしい。思えば、放映中の大ヒットTVドラマ「GoodLuck」でも、これと良く似た好対照なニカップルが描かれている。ドラマの定番、定石と言えばそうなのかもしれない。でも、それをあざとく感じさせないすがすがしいばかりの小沼演出はどうだ!渋谷の片隅でレイトショウ興行されるのはあまりに勿体無い。
 小沼監督と言えばピンク映画の巨匠。確かに本作にも、監督の「過去」を想起させる愛のシーンはある。でも、それは見事にストーリーと融和していて、いわゆるポルノ映画のような違和感はないので、安心して鑑賞できる。

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