アーシア・アルジェントの魅力炸裂!「Bモンキー」 2003/05/14

 アーシア・アルジェントという女優、知っていますか?ホラー映画のファンなら、かのイタリアン・ホラー映画の巨匠ダリオ・アルジェント監督の娘、と言えばわかってもらえるでしょうか。ハリウッド系では「トリプルX」に出演。最近は監督にも挑戦するなど、言語圏や女優の枠を超えて活躍の場を広げています。
 そんな彼女がまさにハマリ役を演じている「Bモンキー」という作品が、撮影から6年、アメリカでの公開から4年を経て(すでに米国ではDVDが発売されている!)ようやく日本公開されています。アルジェント・ファンの筆者とあって、公開翌日に早速観に行ったのですが、これがまたすごい秀作で、正直びっくり。あんまり期待していなかっただけに、思わぬ拾い物。
 今回は、その「Bモンキー」ほか、彼女の出演作からオススメのものを紹介してみます。
http://www.stingray-jp.com/allcinema/prog/show_p.php3?num_p=39146
■「Bモンキー」 (1998年 英) おすすめ度:★★★★
 監督/マイケル・ラドフォード
 出演/アーシア・アルジェント、ジャレッド・ハリス、
    ルパート・エベレット、ジョナサン・リース・マイヤーズ
 公式HP:http://www.b-monkey.jp/
 上映館:http://www.b-monkey.jp/theaters/
□あらすじ
 刺激に飽きて、悪事から足を洗おうと考え始めていたイタリア人少女と、変化のない毎日にいつか訪れる刺激を待ちつづけていたイギリス人青年は、夜更けのバーで運命的に出会い、恋に落ちる。動と静。正反対の二人の脆い「相互理解」の上に構築された愛の生活は、彼女の「過去」の乱入で破壊されてしまうのだろうか?激しい刺激を求め、愛には命さえ代償に求める少女の魂の叫びに、青年は応えることができるのか?そして少女の仲間たちが迎える結末は?急展開するクライマックス、思わず両手のこぶしに力がこもる!
□みどころ
 何と言っても、あまりにはまり役だったアーシア・アルジェントの素晴らしさ。スタッフや監督は、この本の映画化に際し、900人にも上る女優をオーディションしたが、アルジェントに勝る女優は見あたらない。しかし、アルジェントは脚本とは異なるイタリア人。そして彼女の魅力は、遂に彼らに脚本の設定を変えさせてしまった。それほどに惚れ込まれたアルジェントは、優美な外見とは裏腹に、激しい口調で威圧し、必要とあらばためらいなく引き金を引き、武器の始末も完璧な、それでいて愛なしでは生きられない凄腕の女ギャングを、まるでその人であるかのように体現してみせる。圧巻である。惚れ惚れである。
 共演陣も素晴らしい。それも、個々の俳優がと言うよりも、キャスティングがハマリまくり。悩める小学校教師兼病院の深夜DJ(こんなサービス&職種があるなんて!)を演じたジャレッド・ハリス、ヤク売人に没落した富豪御曹司を演じたルパート・エヴェレット、そして、少女が深く愛するヤク中少年を演じたジョナサン・リース・マイヤーズ。影のあるこれらイギリス俳優たちが、物語に重みを与えてくれる。
 少女や仲間たちがイタリア出身であるという設定も、半ば無理矢理変更したものにしては、「マフィア」という響きの持つイメージと妙に重なって違和感はない。ただ一つ、ラストの処理は、もうすこし未来へ含みを持たせてもよかったのでは?という気がしたが、これはもう、趣味の問題だろう。
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■「雨上がりの駅で」 (1996年 伊) おすすめ度:★★★★
 監督/ピーター・デル・モンテ 共演/ミシェル・ピコリ
□あらすじ
 家を出てローマで気ままな暮らしをする19歳の少女は、ある日アルツハイマーを発症した老教授の尾行を依頼される。彼に付き従ううちイタリア中を旅するハメになった彼女は、何もわからないと思っていた老教授の脳裏に存在する自分自身を知り、それをきっかけに自分を取り戻して行く…
□みどころ
 少女版「セント・オブ・ウーマン」(アル・パチーノ主演)とでも言おうか。あるいは、同じくアルツハイマーの老人と少年との交流を描いた「約束」(ミシェル・セロー主演/ドニ・パルティオ監督)にも通じる、少女の自分探しの旅物語。「老人の尾行」が少女自身の存在を求める旅に変わって行くストーリーの妙。少女が老人の笑みを希求するラストシーンが特にいい。
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■「スカーレット・ディーバ」 (2000年 伊) おすすめ度★★★
 監督・主演/アーシア・アルジェント
□あらすじ
 若くして高い評価を受けたイタリア人女優アンナは、底知れぬ孤独と不安を癒すべくドラッグとセックスに溺れて行く。そんな中で彼女はオーストラリア人ミュージシャンに出会い、一夜で激しい恋に落ち、未来に光明を見出すのだが・・・。
□みどころ
 昨年3月5日発行ののメルマガで紹介済みなので多くは書かないが、
(http://www.asahi-net.or.jp/~ns8m-hgc/movie/column/COL111.HTM)
「雨上がりの駅で」でアーシアを知った筆者としては、彼女の変貌ぶりに言葉を無くした。しかも、ストーリーは、極めて自伝的。そして「Bモンキー」は、「雨上がりの駅で」とこの「スカーレット・ディーバ」でのアーシアの魅力が融合された、まさに当たり役であることがよくわかる。
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 その他、「王妃マルゴ」では、非業の最期を遂げる貴婦人の役を好演。また、父、ダリオ・アルジェントの監督作「オペラ座の怪人」(1998年 伊・ハンガリー)(http://www.asahi-net.or.jp/~ns8m-hgc/movie/db/DB903.HTM)ではクリスティーナ役を演じている。父の監督したホラーをはじめ、その他出演作は
http://www.stingray-jp.com/allcinema/prog/show_p.php3?num_p=39146
を参照されたい。
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■「サイドウォーク・オブ・ニューヨーク」 おすすめ度★★★☆
 監督/エドワード・バーンズ
 http://www.uipjapan.com/phej/sidewalks/
 上映館:渋谷シアター・イメージフォーラム
□みどころ
 ニューヨーク・マンハッタンを住処にする6人の男女を巡る愛とセックスに関するある調査。
 何れも愛とセックスについて日々悩み多き6人の日常をスナップしつつ、各人に随時街頭インタビューを仕掛ける。まるで6人のプライベートに関する密着取材のような、映画としては実に斬新な表現形態によって、独身者、既婚者、バツイチとバラエティ豊かな男女の本音とタテマエを描き出して行く。なにせ人数が多く、誰が誰かわからないまま冒頭からインタビューシーンが続き、彼らの関係もどんどん込み入ってくるので、途中で追い切れなくなって、集中力が途切れそうになる(要は眠くなる)のだが、登場人物に慣れてくるにしたがって、実はこの6人、きれいに閉じる円形の繋がりの輪を形成していることに気付かされ、俄然面白くなってくる。かといって、6人が一堂に会して談笑、などという三文都会派小説のようなうそ臭い演出が施されているわけでは決してない。輪を形成する各人は、自分の両隣にいる2人ずつしか見知らない。知らずに街ですれ違う、なんていうあざといシーンもない。職業も年齢も生い立ちもばらばらな6人を実に自然な形で結びつけ得た、脚本の素晴らしさにひとまず乾杯!といったところだ。キュートな喫茶店店員を演じたブリタニー・マーフィーがカワイイ。
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■「ミッシング・ガン」 ★★★ 
 監督/ルー・チューアン 主演/チアン・ウェン
□みどころ
 「キープ・クール」「鬼が来た!」の姜文がプロデュース・主演を務める快作。
 妹の結婚式で泥酔し、拳銃を紛失してしまった田舎村の警官。一体誰が「盗った」のか?疑心暗鬼に苛まれ、拳銃が使われることを恐れ、警官は追い詰められて行く。そして、深夜の村に響く一発の銃声!しかも被害者は彼の・・・。残る銃弾はあと二発。標的はわかった。ついに彼は、犯人を捕らえるべく、ある""決意""をする。
 基本的にはサスペンスなのだが、姜文のとぼけた風貌と所作が、実にいい感じで滑稽味を醸し出し、展開に一息つかせる。こうした絶妙なバランス感は、今村昌平の作風に通じるものがある。


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