ファン感激!シャルロット・ゲンズブールのプライベートが映画になった 2003/07/02

 シャルロット・ゲンズブール。フランス・ギャルやヴァネッサ・パラディの楽曲をプロデュースしたことで知られ、映画監督としても有名なフランスの、否、世界の鬼才、故セルジュ・ゲンズブールを父に持ち、イギリス人ながら異国フランスで、そのゲンズブールのプロデュースによって女優として、歌手として頂点を極めたジェーン・バーキンを母に持つ、フランス芸能界随一のサラブレッド。(「ゲンスブール」と表記することもあるようだ)
 そんな彼女のプライベートを題材に、超有名女優を妻に持った男の至福(?)と苦悩の日常を、彼女の夫自らが監督し、実名で描いたコメディが日本に上陸。幼い頃から父の監督作品に出演し、独特の魅力を発揮してきた彼女が、ついに自身の私生活を題材にしたメジャー作品が作られるほどに頂点まで上り詰めたのかと思うと、ファンとしては感慨もひとしお。日本でも賛否両論の二世タレントだけれど、彼女の場合は、父にも母にも直接似ていない、独自のキャラがあったことが幸いしたのだろう。
 では、まずは現在公開中のその作品から。

■「僕の妻はシャルロット・ゲンズブール」(仏) ★★★★
監督・共演/イヴァン・アタル(夫) 共演/テレンス・スタンプ
劇場/渋谷シネ・アミューズ ほか
□あらすじ
 街を歩けばキャーキャー騒がれ、レストランに入ればひっきりなしにサインを求められる一流女優。当然、行動を共にする夫もその巻き添えに。しかも、まわりには妻目当てに接近してくる輩が群がり、自分が取れない店の予約も妻が電話口でささやけばなぜか即OK。いっしょにいたいのに妻は異国でのロケで不在。しかも、共演俳優の魔手が彼女に迫る・・・。誤解が誤解を生んで、ついに二人は破局?!
□みどころ
 当事者ご本人の作品なのに、実に客観的に「有名女優を妻に持った一般人」というシチュエーションが描かれていて、しかもコミカルな演出が絶妙で、劇場内に笑いが絶えないおもしろさ。ロケでのシャルロットの相手役を演じ、夫のヤキモチの元凶となる敵役を、最高に憎たらしくいやらしく演じたテレンス・スタンプが、これまたいい味出してる。「あこがれの女優さんと結婚、いや、おつきあいだけでも、できたらなぁ」などと夢見ている御仁には、ぜひ一見をオススメ。一般人どうしのカップルにも、いろいろと円満交際のヒントが隠されているので、ぜひオススメ。気軽に笑って、何かが心に残る。そんな作品だ。
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 さて、今回はシャルロット出演の過去作からいくつかを紹介してみよう。まずは、かのフランソワ・トリュフォー監督の「大人は判ってくれない」「二十歳の恋」「夜霧の恋人たち」「家庭」「逃げ去る恋」と続くアントワーヌ・ドワネル5部作の女の子版、とも言える、等身大の少女の心象をつぶさに描いたこの4作から。

■「なまいきシャルロット」(1985年)★★★★
監督/クロード・ミレール 共演/ジャン=クロード・ブリアリ
 何事にも興味も自信も持てない13才の少女(シャルロット)が、同い年のピアニストの少女と出会う。彼女に憧れた少女は、彼女との交流を通じて夢のようなひと夏の経験をし、さまざまなことを学び、成長する。どこにでもいそうな、所在なさげな少女をシャルロットが等身大に演じて見せる。少女の心象がみずみずしく描かれており、画像の色使いも美しい。

■「小さな泥棒」(1988年)★★★★
監督/クロード・ミレール 
 少女版「大人はわかってくれない」(フランソワ・トリュフォー)というふれ込みの一作。
 舞台はだから、1950年代のフランス。父のない子として育ち、母親にも捨てられ叔父夫婦に育てられる16才の少女が、止められない「盗み」という行為を通過儀礼にして大人へと成長し、真の愛に出会うまでを描く。
 目線を彼女にしっかりと据えて追った秀作だ。

■「愛を止めないで」(1991年)★★★★
監督/エリック・ロシャン 共演/イヴァン・アタル!
 遠く離れた町に住む恋人に逢いに行くために、小学校のスクールバスを乗っ取った男。 
 設定が素敵。道中恋人との電話の首尾に一喜一憂する男が憎めない。彼を「センチメンタル」と報じるニュース、逮捕されるとわかっている彼を何とか恋人に一目会わせてやろうとする女教師、男になぜかなつく子供たち。。。ちょっと非常識だけど、どこかファンタジックな恋のロードムービー。シャルロットは、電話の向こうの恋人役。 
 ちなみに、彼女とイヴァン・アタルとは、この作品をキッカケに交際をはじめたそう。 

■「愛されすぎて」(1992年)★★★★
監督/ジャック・ドワイヨン 共演/イヴァン・アタル!
 監督は母、ジェーン・バーキンの現在の夫。つまりシャルロットの義父。
 幼なじみアントワーヌと映画監督ポール。二人の男を同時に好きになっても、いいじゃない?そんな私・マリーの、男を試すキメ台詞は、「あなたの子供が欲しい!」。
 当世女の子の揺れる心を等身大に描き出した秀作。微妙に変化するC・ゲンスブールの自然な表情がいい。「僕の妻は・・・」と同じくY・アタルとの共演で、シャルロット演じる女性はどうやら女優っぽいし、父S・ゲンズブールを思わせる下りもあって、「僕の妻・・・」の結婚前の逸話だと思って観るとなおさら楽しめる。

             ★━……‥‥‥‥……━★
 そのほか、オススメをいくつか。

■「ジェイン・エア」(1996年) ★★★★
監督/フランコ・ゼフィレッリ  共演/アンナ・パキン、ウィリアム・ハート
 虐げられた日々を過ごした孤児院を卒業し、富豪の許で家庭教師として雇われた少女ジェイン・エアが、富豪が秘める深い悲しみを知り、やがてその富豪に愛されるようになるまでを描いた名作で、オーソン・ウェルズ&ジョアン・フォンテーンによるオリジナル「ジェーン・エア」のリメイク。
 境遇と不釣り合いなほど美形だった前作でのJ・フォンテーンとは異なり、シャルロットの地味な顔立ちと、感情を抑え、あらゆる欲を消し去った演技は、あまりにこの物語の主人公像と合致していて、思わずストーリーに引き込まれてしまう。孤児院時代の荒んだ境遇に重点を置いていたオリジナルと比べて、本作では卒業後の、富豪宅での日々に視点を据えていて、ただのリメイクではなく、前作を愛する人にも、ぜひ見てもらいたい一作。

■「シャルロット・フォーエバー」(1986年)★★★
監督・共演/セルジュ・ゲンスブール(父)
 貴重な亡き実父の監督・共演作。
 妻に自殺された売れない脚本家スタンは、娘シャルロットを溺愛するが、彼女は母を死なせた父を責め、それが彼を苦しめる。しかし、やがて彼女は父の深い苦悩を知ることに。
 セルジュの前衛的でありながら透明感のある音楽と、シャルロットの美しさが映像を彩る。美しい娘をフィルムに焼き付けて残したかったという父の思いが感じられる私的な一作。

 余談だが、売れない脚本家スタンと言えば、セルジュが監督した「スタン・ザ・フラッシャー」(露出狂スタン)という、同様のキャラを主役し据え、自らがその役を演じた、中年と女学生との恋を描いたロリコン映画があって、こちらもセルジュの幻想的な音楽が素晴らしい。このスタン、セルジュの自嘲的な自己投影なのかもしれない。

■「メルシー・ラヴィー」(1991年)★★★
監督/ベルトランド・ブリエール 
共演/ジェラール・ドパルデュー、アヌーク・グランベール
 少女と娼婦が運命的出会いをし、意気投合した二人は冒険の旅にでる。
映画撮影現場に迷い込んだ二人の旅は、映画のストーリーと混然一体となり、二人の出生の時代へとタイムスリップする。
 かなり飛躍したストーリーだけれど、モノクロとカラーで二人の心象風景を表現し分けた技法と、二人の新進気鋭の女優の競演が魅力的な一作。

■「ルナティック・ラブ」(1992年)★★★
監督/アンドリュー・バーキン(母ジェーン・バーキンの実兄)
 父親に先立たれ、次いで母親も死に、孤児院送りを避けるために母親をコンクリート詰めにして地下室に隠す4人姉弟。秘密を抱え、姉弟の生活を守ろうと協力するうち、仲の悪かった長男・長女のあいだに恋愛感情が芽生える。
 シャルロットがヌードもある倒錯的な役柄に体当たり演技で好演。

             ★━……‥‥‥‥……━★

 このほか、「太陽は夜も輝く」「他人のそら似」といった名作にも出演し、国際的名優との共演も果たしていて、若いけれど演技経験はもうベテラン級なのだ。

<koala>


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