2003年上半期 ベスト5 2003/08/20

 意識してミニシアター系を選んだわけではないのですが、次点を含め、ハリウッド大作やメジャー系邦画の入り込む余地はほとんどありませんでした。もちろん、期待通りの満足度を与えてくれた「バトルロワイアルU」や、インディーズ系監督による「あずみ」「星に願いを。」
「青の炎」「ラヴァーズ・キス」は何れも、期待通りの大満足作でしたが、やはり大衆ウケを狙った作品ということで、深く印象に刻まれるといった、主観的な域に訴えかけるおのには欠けていたように思います。そんな中ではGackt原案・瀬々敬久監督の「MOON CHILD」が、Gacktのアイディアを尊重した制作姿勢が奏功して、日本映画を超越した世界観を見せてくれて、唯一次点組入りを果たしました。次点とは言っても、4位以下の作品間の差はほとんどなく、秀作豊富でなかなかにハイレベルな上半期ランキングとなっています。
 なお、今年1〜6月の半年間に、映画祭も含め劇場で見た作品は83本でした。

1位 「ラスムス君の幸せをさがして」
 20年前の作品だが、日本公開は初ということでランクイン。子供を主人公にした冒険ファンタジーに必要なすべての要素を具えた、まさに完璧な一作。「ロッタちゃん」シリーズも本国公開から9年も経っての日本公開であの大ブレイク。スウェーデンといえば、イングリッド・バーグマンのハリウッド進出前の初期作や、駆け落ちものの名作「みじかくも美しく燃え」など、地味な作品、というイメージだけれど、この国の映画資源の奥深さを改めて思い知らされた一作。探せばまだいっぱい名作が埋もれているのではないかな?

2位 「許されざる者」
 ずっと苦手だった三池崇史監督を根本的に見直すきっかけとなった、男の美学が全編を貫く身震いするほどに素晴らしい一作。加藤雅也をはじめとする""美しすぎる""男優陣、「ヤクザもの」の王道を行くストーリー、そしていつになく控えめな監督の遊び心の三者のバランスが見事に決まった、奇跡のような一作だ。同じく加藤雅也を主役に据えた「荒ぶる魂たち」の関連作ではあるけれど、どこかVシネっぽさから脱却しきれない三池作品の中では異色とも言える完成度の高さで、他作品の追随を許さない。

3位 「マブイの旅」
 あまりにはまり役な山田辰夫の、主人公その人自身ではないかと思わせるほど自然でてらいのない演技と、たっぷり写し込まれた、美しくたおやかな沖縄の風土に心から酔える感動作。都会に「マブイ」=魂を落として沖縄へ死ににきた中年男の再生を描いた作品だが、この作品にこそ、強い「生」を感じさせるマブイが棲んでいる。

4位 「Bモンキー」
 アーシア・アルジェントの魂の演技に尽きる一作。この人の演技は、自身の激しい私生活と交錯し合っているがために、演技ばかりとは思えない凄みがある。

5位 「女はバス停で服を着替えた」
 伝説の名ポルノ監督・小沼勝が描く、深く愛し合いながらも寄り添えない寂しく悲しい男と女の辿る軌跡。笑みに寂しさ漂う戸田菜穂と遠藤憲一の取り合わせがまさにピッタリ。

5位 「バティニョールおじさん」
 悲しみもファンタジーに転化させてしまう、まさにフレンチ・マジック。ナチの迫害劇だって、フランス人の手にかかれば、こんなにハートウォーミングで夢と希望に満ちた世界に昇華されてしまう。感心しきり、大満足な一作。

★次点
「キス★キス★バン★バン」「オー・ド・ヴィ」「MOON CHILD」

★特別賞「Mine」公開してくれ〜
 昨年のゆうばり学生コンペ優勝作。今年、ご当地広島県を中心に劇場公開され、ゆうばり映画祭でも凱旋上映された。目玉ゲストもなかった今年は、まさにこの作品を観るために筆者はゆうばりまで出かけたものだ。それだけの期待を背負って、それを上回る感動を与えてくれたのだから、恐るべき作品力。一刻も早く首都圏での劇場公開を望む。

 

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