ドラッグストアガール ほか 2004/02/20

■「ドラッグストアガール」 おすすめ度★★☆
監督/本木克英  脚本/宮藤官九郎
出演/田中麗奈、、柄本明、三宅裕司、六平政弘、徳井優
□あらすじ
 失恋の勢いで迷い込んだ見知らぬ町で、これまた勢いでドラッグストアでバイトを始めた薬学部所属のバリバリ理系の女子大生が、気が付いたら彼女のファンである中年個人商店主たち相手にラクロスを教えるハメになって・・・
□みどころ
 勢いや思いつきに任せて描かれたような、収拾のつかない奇想天外がストーリー展開で、話が進むにつれいつしかドラッグストアも理系女もどうでもよくなっていて、結末は全く予測も付かないファンタジック・ワールドに突入。終わってみれば、ドラッグストアで働く田中麗奈ではなく、オヤジたちと並んでクロスを左右に振る彼女とルチ将軍のように旅立ったジェロニモ=徳井優の姿が脳裏に焼き付いている。
 ストーリーを真剣に追いかけてもしょうがないので、やっぱり楽しみ方としては、役者揃いの中年オヤジ軍団と唯一の若者として孤軍奮闘する田中麗奈、そして道化役の

が織りなす、個性派俳優たちのコラボレーションに酔う、ということに尽きるだろうか。

■「嗤う伊右衛門〜Eternal Love〜」 おすすめ度★★★ 
監督/蜷川幸雄
出演/唐沢寿明、小雪、椎名桔平
□あらすじ
 伊右衛門が志願して、顔の半分を疱瘡のただれが覆う美女・お岩を家督と共にもらい受けた、という設定で描く、四谷怪談異聞。
□みどころ
 「白い巨頭」の唐沢寿明と「ラストサムライ」の小雪の共演で贈る、京極夏彦原作による深く永遠の愛の物語。「ビッグ・ファット・ウェディング」ではないが、一見醜い妻を娶ると言う行為には、深い打算、もしくは、深く清い愛が潜んでいる(にちがいない)、という、一種の好奇心は、日本だけではなく世界のストーリー・テラーや読者たちの心を捉えて離さない。
 蜷川監督の、舞台演出っぽい切り口上の台詞回しが醸し出す時代感や非現実感と、キャラクターが明確な登場人物たちの相互作用が彼ら自身の人生を魔界へと踏み外させて行く妖しい世界観に酔いしれる一作。
 同じく四谷怪談をベースにしつつ、鶴屋南北の翻案に従って忠臣蔵と融合させた、故・深作欣二監督の手による「忠臣蔵外伝 四谷怪談」とぜひ比べて観賞してほしい。どちらがお気に召しますか。

■「赤い月」 おすすめ度★★★ 
監督/降旗康男
出演/常盤貴子、伊勢谷友介、香川照之、布袋寅泰
□あらすじ
 なかにし礼原作の自伝的小説に基づく、「ワンス・アポナタイム・イン・満州」とでも副題を付けたくなるような、夢と失望の大地を 舞台にした壮大な愛憎劇。
□みどころ
 さすがこうした大作には慣れている降旗監督の確実な演出と、スクリーン映えする常盤・伊勢谷両俳優の魅力で、どっぷりと大陸の壮大なドラマに浸れる作品。
 こういう、一昔前の時代を描いた作品の場合、あまりはっきりとしたカラーで表現されると、妙にウソっぽいというか、ある種の違和感を覚えてしまうことがあるが、まるでそうした観客の気持ちを察したかのように、冒頭部を除くほぼ全編で、極限にまで映像の色味を抑えた処理が施されていて、非常に好感が持てた。そしてその例外が赤色。エキストラを含め他の出演者には一切この色を使わせない状態で、彼女のみが身につけた赤色の衣装が、ほとんどモノクロと言ってもいい背景の中で際だって見えるという仕掛け。これも、彼女の押さえがたい生への執念と、生のために燃やし続ける恋の炎を象徴しているようで、実に印象的だった。


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