1980 ほか 2004/02/07

■「1980(いちきゅうはちまる)」 ★★★☆ 
監督/ケラリーノ・サンドロヴィッチ 
出演/ともさかりえ、蒼井優  及川光博  田口トモロヲ

□あらすじ
 テクノブームに聖子ちゃんカット。そんな懐かしの1980年を舞台に、既婚・女教師の長女、元アイドルの教員実習生の次女、そして女子高生の三女という、歳も性格も大きく異なる三姉妹を巡る愛のドラマが、同じ高校の中で展開する。

□みどころ  
 関東では公開が終わってしまったが、関西など地方ではこれから公開。
 ともさかりえは、こうしたハスッパな役どころがよく似合う。彼女もそんな自身の特性をよく生かして、「ロッカーのはなこさん」よろしく、実に軽妙に「失踪した元アイドル」をケバく浮気に生き生きと演じていて、なかなかの好印象。蒼井優は、大した演技もしていないのに、立ってるだけで妙な存在感を醸し出している。
 もっとはちゃめちゃな作品かと思ったけれど、けっこう起承転結がすっきりまとまっていて、巧ささえ感じた。最近、このスケールの軽い日本映画に当たりが多い気がする。

■「ミスティック・リバー」 ★★★
監督/クリント・イーストウッド 
出演/ショーン・ペン、ケビン・ベーコン、ティム・ロビンス

□あらすじ
 子供の頃仲の良かった少年3人組の運命は、ある日起きた誘拐・監禁・性的暴行事件の被害者と、連れ去られる彼を見送った2人とに大きく分かれた。そして3人が中年に差し掛かった頃、彼らは、娘を殺された父親、事件を調べる刑事、そしてその容疑者、という形で、再び相まみえることとなる・・・

□みどころ

 最後まで真相が分からない、サスペンスとしての展開の重厚さに加え、S・ペン、K・ベーコン、T・ロビンス三大俳優の夢のような共演が凄まじい迫力と緊張を放つ、見応え満点の作品。主題の脇に描かれた、夫婦の間に横たわる「信頼」というテーマもまた、主題と響き合って重くのしかかる。
 クリント・イーストウッド最高傑作とかいうふれ込みではあるが、そういう能書きよりも、とにかくこの3人の大俳優の素晴らしい競演に酔って欲しい。
 後悔が後悔を呼ぶ展開で盛り上がりも晴れやかさもないが、いつまでも観た者の心に残る作品と言える。

 >─────────────関連作品─────────────<
 本作のモチーフとして「スタンド・バイ・ミー」がよく引き合いに出されるが、筆者が最初に思い出したのは、若い頃の秘められた「事件」が長じた当事者たちを形を変えて苦しめる、という展開がよく似ている、「マークスの山」。決して楽しめる作品ではないけれど、観た後尾を引く感覚では共通している。本作が気に入った人は、ぜひ試して欲しい作品。

■「マークスの山」 
監督/崔洋一 出演/中井貴一、萩原聖人
 名門大学山岳部出身者の連続殺人が発生。今は高い階級にいる彼らには、全共闘時代の内ゲバ殺人と、その首謀者の謀殺という過去が秘められていた。 そして犯人として捜査線上に上った多重人格症の男。彼と被害者たちをつなぐ線は一体何なのか?

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■「ニューオリーンズ・トライアル」 ★★★★ 
原作/ジョン・グリシャム 監督/ゲイリー・フレダー
出演/ジョン・キューザック  ジーン・ハックマン  ダスティン・ホフマン

□あらすじ
 証券会社を解雇された社員が拳銃を手にオフィスを襲撃し、11人の元同僚を殺害し、自らはその場で自殺・・・。この事件で夫を失った妻が、不法に拳銃を売りさばいた銃企業を相手取って損害賠償請求裁判を起こした。この種の裁判で銃企業側は過去負けなし。しかし、一度の敗北は数多の同種裁判を誘起し、銃企業側の損害は計り知れない。そのため、何が何でも勝訴に持ち込みたい銃企業側は、陪審員候補全員のプロフィールを詳細に調べ上げ、有利な陪審評決を勝ち取ろうと、金に糸目をつけない一大作戦に乗り出した。

□みどころ
 原作はジョン・グリシャムの「陪審評決」。原告側弁護士にダスティン・ホフマン、被告側陪審員コンサルタントにジーン・ハックマン。プライベートでは親友同士であるというこの二大俳優が放つ迫真の火花、そして、膨大な資金力と組織力を誇る百戦錬磨の銃企業陣営を敵に回して翻弄しつつ対等に渡り合うジョン・キューザック。単なる原告被告による陪審員切り崩し工作で始まる冒頭部分から、陪審員の中に潜り込んだ目的不明の第三勢力の登場で一気に物語は混迷し、三つ巴、全く余談を許さない展開へ向かう。そして、女工作員に冒頭放たれた「何が君を傷つけたの?」という問いかけに対する回答が、最後の最後に明かされるという構成の妙、周到さ。
 3陣営の描写ががめまぐるしく切り替わり、米国の裁判システムへのある程度の知識も必要となるが、はじめは分からなくとも展開を追うに従って理解できるように作られているので、あきらめずがんばって付いていって欲しい。

 >─────────────関連作品─────────────<
 本作の関連作と言えば迷わず、陪審員モノということで「12人の怒れる男」。また、拳銃社会に一般市民が切り込む、という視点からは、昨年大ヒットした「ボーリング・フォー・コロンバイン」を挙げたい。

■「12人の怒れる男」 ★★★★
監督/シドニー・ルメット 制作・主演/ヘンリー・フォンダ
 スラム街の少年が父親殺しの第一級殺人罪に問われた事件の陪審員に選ばれた12人の男たち。検事側有利の一方的な展開と少年の最悪の生い立ちに、陪審は有罪支持で一発合意と見られたが、一人の男性が証拠の貧弱さと検事による立件の矛盾点を指摘し、有罪の確信が持てないと主張。彼らは証拠の再検討を始め、徐々に無罪派が優勢となって行く。有罪派の主張の根拠を述べるうち、彼ら自身の中の私的な感情や偏見が露呈されて行く。。。


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