ダコタ・ファニング 新作続々「アップタウン・ガールズ」 2004/03/06

■「アップタウン・ガールズ」 (アメリカ) ★★★★ 
監督/ボアズ・イェーキン(「タイタンズを忘れない」)
出演/ダコタ・ファニング、ブリタニー・マーフィ
http://www.foxjapan.com/movies/uptowngirls/

□あらすじ
 幼くして両親を亡くし、膨大な資産を相続したお姫様・・・ってなおとぎ話を地で行く、22歳のカリスマミュージシャン令嬢と、植物状態で死期間近い父親と家庭を顧みないキャリアな母親の間で自分を守ろうとする9歳の少女。パーティで最悪の出会いをした二人だったが、令嬢は後見人に全ての資産を持ち逃げされ、巡り巡って少女の守り役をするハメに。どっちが少女かわからない、ワガママで性格も正反対な二人は、反目し合いながらも、親不在の境遇に育った者どうしの寂しさを分かち合い、次第に互いに心を通わせて行く。

□みどころ
 モロ、ダコタ目当てで日本上陸を心待ちにしていた作品を早速鑑賞。ダコタ見たさという動機の不純さ、そしてコメディということもあって、内容には大して期待もしていなかったのだけれど、えてしてこういう作品に限って、心の虚を突かれてハマってしまうもの。で、ハイ。大泣きしました。まさか、こんなにも深層心理を掘り下げた作品とは。
 ブリタニ・マーフィーが子供大人を、ダコタが大人子供を、素晴らしいイキとキレ、テンションで演じ合い、年齢差を全く感じさせない友達同士のような会話の掛け合い、たたみかけ合いがとても楽しい。わかりやすい伏線を張ったギャグの応酬も面白く、ガハガハ馬鹿笑いしていると、突然フッと、強気の裏に隠された寂しさ、切なさが顔を覗かせて、無防備に泣かされてしまう。そんな作品。ブリタニーは、キャリスタ・フロックハートを思わせる、あざとさの全くない一級のコメディエンヌぶりで、この天才子役相手にタイマン張っている。

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☆ダコタ・ファニングには、あのオースティン・パワーズで一世を風靡したマイク・マイヤーズとの共演を果たしたコメディ「ハットしてキャット」の日本公開が控えている。おバカ作品ということで、ラジー賞に7部門もノミネートされ、うち一部門を獲得してしまうという不幸(!?)に見舞われたので、公開時期や扱いがどうなるかは予断を許さないが、アメリカではそこそこのヒットをしているので大丈夫でしょう。☆
http://www.uipjapan.com/thecat/index.htm
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■「悪い男」 (韓国) ★★★★★
監督/キム・ギドク(「魚と寝る女」)
出演/チョ・ジェヒョン、ソ・ウォン

□あらすじ
 ヤクザが、ふと街で見かけた女子美大生に惚れてしまう。彼はその場で、しかも彼女の恋人の目の前で彼女の唇を激しく奪ったあと、彼女を罠にはめ、娼婦へと堕とすことによって強引に自らの世界に引きずり込み、屈折した愛を成就しようとする。そして彼女がその愛に気付き受け入れたとき、想像も付かないような愛の新世界が具現する・・・

□みどころ
 壊れた男の色気と屈折した恋情を全身で表現するチョ・ジェヒョンはさながら、火野正平か。
 選曲の秀逸さと娼館街の極彩色に導かれて、韓国映画嫌いにもかかわらず公開早々観てしまった本作。いくつかあった終幕の契機をやり過ごしたどり着く、予想もつかない驚愕のラストが、それまでの過程を見守ってきた観客にはどこか、予定調和のようにさえ感じられてしまう。この、観る者の社会常識に対する概念を破壊してしまいかねない凶暴さこそが、この作品の魅力だ。

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☆「魚と寝る女」以外は日本未公開だったキム・ギドク監督作品だが、「この「悪い男」の公開、ヒットを契機として、今年中に続々とビデオ/DVDあるいは劇場で公開されることとなった。

・第3作「青い門(原題)」 ビデオ/DVD化
・第4作「魚と寝る女」 劇場公開済み/ビデオ化済み
・第6作「受取人不明(原題)」 2004年劇場公開予定
・第7作「悪い男」 公開中
・第8作「コーストガード(原題)」 2004年劇場公開予定
・第9作「春夏秋冬・・・そして春(原題)」 2004年劇場公開予定
・第10作「サマリア(原題)」 
  ベルリン映画祭銀熊賞(監督賞)受賞 / 2004年韓国公開予定

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■「ルビー&カンタン」 (仏) ★★★
監督/フランシス・ヴェベール(「メルシイ!人生」「ジャガー」)
出演/ジェラール・ドパルデュー、ジャン・レノ

□あらすじ
 バカでデブて無類のおしゃべり好きな泥棒・カンタンと、ボスの金を強奪した無口で孤独を愛するギャング・ルビー。ルビーの寡黙を「聞き上手」と勘違いしたカンタンはルビーを親友に祭り上げ、挙げ句にルビーを連れて脱獄してしまう。こうして、警察とボスの追っ手から逃れての、チグハグコンビの逃走劇が始まる!

□みどころ
 豪華な共演で贈るおバカなB級コメディ。しかも、オープニングタイトルにはデカデカと「一万円札」が踊り、そのまま円にまつわるひと騒動で幕を開けるという、日本客へのサービス精神も欠かさない。
 原題は「Tais Toi」(テイ・トワ=うるさい!)。この題通り、腹が立つほど鬱陶しいけどどこか憎めないウスラバカと、女を奪われ(と言ってもボスの女房なのだが)復讐に燃える暗い男ルビーが、何故か互いに助け合いながら繰り広げる珍道中を、カンタンに合わせてヘラヘラゲラゲラ、いっしょに笑いまくって楽しみましょう!

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■「コンフィデンス」 ★★★
出演/ダスティン・ホフマン、アンディ・ガルシア、レイチェル・ワイズ
□みどころ
 映像にもダマシとヒントの仕込みが随所に施されている、という触れ込みのせいもあって、最後の最後まで、誰が味方で誰が敵で、誰が最後に笑うのか、全く予想できない展開に、集中力が途切れないまま一気に最後まで見終えてしまう。
 主人公は詐欺師。同じ詐欺師でも、警官まで仲間に引き入れて、映画用の人工血糊まで使っての大芝居を仕組んで、一人の男を騙し抜いてしまうという、芸術的な詐欺をやらかす切れ者だ。
 冒頭の一件で、すっかり用心深くなってしまった観客は、目の前に転がっているのがどうみても死体でも、「実は生きているのでは?」なんて勘ぐってしまう有様で、いいように制作サイドの術中にハマってゆく。
 ダスティン・ホフマンとアンディ・ガルシアの共演に、レイチェル・ワイズという一級マドンナの存在は、「オーシャンズ・イレブン」を彷彿とさせるゴージャスさ。それでいて、ツクリはB級っぽいのだから、なかなかクールだ。
 ラストでは親切に種明かしが用意されていて、そこまで細かく映像を見ていなかった自分が悔まれる、という寸法。イヤな終わり方ではないし、ヒネりすぎでもない。見て損はない一級の娯楽作だ。

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