ホテルビーナス/花とアリス/eiko 2004/03/20

■「ホテルビーナス」 オススメ度★★★★☆
監督/タカハタ秀太
出演/草薙剛、市村正親、つんく♂、中谷美紀、パク・ジョンウ、コ・ドヒ、チョ・ウンジ、イ・ジュンギ、香川照之 
□あらすじ ///////////
 とあるアジアの辺境の町の、そのまた片隅にあるカフェ&ホテル「ビーナスカフェ」。慈悲深い店主・ビーナスを頼って流れてきた、様々な「事情」を抱えた「迷える子羊」たちが片寄せ合って暮らすこのホテルにまた、暗い目をした中年男と、彼には不釣り合いな物言わぬいたいけな少女の二人連れが、宿を求めてやってきた。住人たちがそれぞれのやり方でこの二人の「事情」を知り、心を開かせようとする中で、それまで不干渉だった彼らの間に不思議な連帯感が生じ、それが支えとなってそれぞれがそれぞれの力で「事情」を克服してゆく過程を、ラブ・サイケデリコの小粋なナンバーをバックに、見事に統一し、貫徹された独特の世界観で描き出した、おしゃれな一本。
□みどころ ///////////
 日本人監督に日本人主役を配しながら全編韓国語で表現することで演出された無国籍感に、ラブ・サイケデリコのこれまた無国籍感あふれるなサウンド、そして時代感さえ消し去るモノトーン映像。これらのコラボで、邦画はもちろん、外国映画を含めても今までに観たことのない世界観を現出。この独特のトリップ感に浸るだけでも一見の価値大。なんともはや、とんでもない新人監督の登場である。そしてその世界を演じる俳優陣の配役も見事だし、演者たちもまるで映画の雰囲気を楽しむように、その映像世界を存分に表現していて、実に小気味いい。特に性別不詳のビーナスを演じた市村正親の演技と存在感は秀逸の一語に尽きる。そしてまた、こうした感覚的な作品でありながら、物語性もしっかりしていて、決してカルト映画化していないところもまた素晴らしい。
 惜しむらくは、ゲスト出演故に現場の雰囲気になじみ切れていない香取慎吾の登場シーンと、草薙剛が本名で登場したりチョナン・カンを思わせる役名を持っていたりする点とが、せっかく統一された雰囲気に風穴をあけてしまっているところ。まぁ全体の出来映えからすればご愛敬というところか。
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■「eiko」 オススメ度★★★★
監督/]加門幾生
出演/麻生久美子、沢田研二、阿部サダヲ、袴田吉彦、南果歩
□あらすじ ///////////
 人を疑うことを知らない無垢な女の子・エイコと、訳ありの「ボケ」老人・エノキが偶然出会い、それぞれがそれぞれの都合で疑似親子を演じ合う中で、いつしか実の親子以上に強い思いやりと絆で結ばれ、互いが互いに、忸怩(じくじ)たる現状を精算し「人生の転機」の引金を引き合って新たな人生へと踏み出して行く、都会のファンタジー。
□みどころ ///////////
 名女優・麻生久美子の魅力を堪能することの出来る、ファン垂涎・久美子尽くしの一本。話の流れは、どこか「東京ゴミ女」に似て、起承転結が明快。淡々と進むかに見せかけて、突如アッと驚く展開を見せるストーリーに知らず知らずに引き込まれ、ファンタジックな脚色にほのぼのさせられて終幕を迎える。来館時は重かった足取りも、人生の糧をシカとつかんだヒロインに勇気づけられて、劇場を後にする時には軽やかに、力強くなっていること請け合いだ。池袋の片隅だけでひっそりと上映されているのは実にもったいない、まさに掘り出し物。ボケ老人を演じる沢田研二、というのもなかなか見物だ。
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■「花とアリス」 オススメ度★★★
監督/岩井俊二
出演/蒼井優、鈴木杏、広末涼子
http://www.hana-alice.com/
□あらすじ ///////////
 記憶喪失(?)の先輩と、彼に恋した後輩の少女ハナ、そして彼の元カノに仕立てられたその親友アリスが繰り広げる、キュートでちょっぴりコミカルな学園ラブファンタジー。
□みどころ ///////////
 「キットカット」のタイアップ企画として、ネスレ・ブレークタウンシネマ(http://www.breaktown.com/)にてネット公開されていたショートフィルム版全三章四話を再構築。
 数多のインディーズ監督に深く愛される二大若手女優、夢の共演作。可憐さで攻める優と、女を捨てた(?)演技で対抗する杏の競演は見応え・見どころたっぷり。岩井監督の、どこか現実離れした純な映像美も健在だ。広末涼子をはじめ、ちょい役で登場する「岩井組」俳優たちの豪華な顔ぶれも楽しい。
 ショートフィルム版もまだ見られるので、メイキングと合わせて比べてみると、どういう風にして断片的な物語から全体が組みられていったのかがわかり、さらに楽しめる。
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■「きょうのできごと」(再掲)  おすすめ度★★★☆
監督/行定勲
出演/妻夫木聡、伊藤歩、池脇千鶴、田中麗奈、佐藤仁美、山本太郎
□あらすじ /////////////
 友人の引越祝いに集まった若者たちを軸に、何気ない一日に起こった社会の、そして個々人の様々な出来事をコミカルに、叙情的に描き上げる、行定監督お得意の群像劇。
□みどころ /////////////
 昨年末の東京国際映画祭レポートで紹介した本作がいよいよ一般公開される。
 舞台は京都で、出演者たちは全員、全編関西弁での演技。役者の大部分は関西以外の出身だが、現場での丁寧な方言指導の甲斐あって、ネイティヴから観ても問題ない程度に全員見事にイントネーションをマスター。ほのぼのとした掛け合いが耳に心地いい。
 原作自体が平板なものらしく、決して起伏に富んだ展開ではないのだが、それでも、原作にない「難破鯨」と「ビルの隙間に挟まれた男」のエピソードの挿入が奏功して(これらがなかったら、さぞかし退屈な映画だったろう・・・)、集中力が途切れずに最後まで観賞することができた。少し冗長にも思える時の流れがそのままに、「考えてみればいろいろあった一日」の長さを身を以て感じさせてくれる。「かつての小津作品のように、現代の若者たちの何気ない日常を描いた作品を撮ってみたかった」という監督の意図は、十分に果たせたのではないだろうか。
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☆レスリー・チャン追悼特集開催(4/3〜4/16)
 東京池袋 テアトル池袋にて http://www.thea-ike.com/les.html
 4月3、4、16日 キラーウルフ/白髪魔女伝
 4月5、6日 ラッキー・ファミリー
 4月7、8日 幸せはイブの夜に
 4月9〜11日 ハッピー・ブラザー
 4月12、13日 恋はマジック
 4月14、15日(水) 歌って恋して

☆特集上映「増村保造と若尾文子」開催
 東京渋谷・ユーロスペースにて http://www.eurospace.co.jp/newsmov.htm
 3月27日(土)〜29日(月)  『青空娘』  
 3月30日(火)、4月1日(木) 『最高殊勲夫人』  
 4月2日(金)、3日(土)   『偽大学生』  
 4月4日(日)〜6日(火)   『妻は告白する』  
 4月7日(水)〜9日(金)   『刺青』  
 4月10日(土)〜12日(月)  『赤い天使』   
 4月13日(火)、14日(水)  『妻二人』  
 4月15日(木)、16日(金)  『氾濫』  
 4月17日(土)、18日(日)  『爛』  
 4月19日(月)、20日(火)  『美貌に罪あり』   
 4月21日(水)〜23日(金)  『「女の小箱」より 夫が見た』   
 4月24日(土)、25日(日)  『積木の箱』   
 4月26日(月)〜28日(水)  『卍』   
 4月29日(木)、30日(金)  『濡れた二人』   
 5月1日(土)、2日(日)   『からっ風野郎』  
 5月3日(月)〜5日(水)   『清作の妻』  
 5月6日(木)、7日(金)   『千羽鶴』  


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