リアリズムの宿/チルソク 2004/05/01

■「リアリズムの宿」 (日) おすすめ度★★★☆
 監督/山下敦弘(「どんでん生活」「バカのハコ船」)
 原作/つげ義春(「無能の人」「ゲンセンカン主人」「ねじ式」)
 出演/尾野真千子(「ユリイカ」「ギプス」)、山本浩司、長塚圭史
 http://bitters.co.jp/yado/
□あらすじ
 友人の誘いに応じて初冬の鳥取に旅に来た脚本家と映画監督。ところがその友人は大幅に到着が遅れ、互いにほとんど面識のない二人は金もないまま、見知らぬ田舎町でぎこちない珍道中を繰り広げる。そして途中、突如現れ、そのまま道連れとなった謎の美少女がかすがいとなって、彼らは次第に心を通わせ始める

□みどころ
 原作はつげ義春の「リアリズムの宿」と「会津の釣り宿」。
 「バカのハコ船」の山下監督が、常連のインディーズ王・山本浩司を主役に据え、つげ義春の独特の世界観をそのままに、なかなかの巧さを見せつつ映像化。ちょっとした手違いで生まれた幻のような数日間を、尾野真千子演じる謎の少女が象徴。ラストの、「夢の終わり」を強く印象づける演出との対照も見事。ほのぼのとした印象を残す快作だ。監督前作での冗長さや唐突さと言った、私作臭さ、自主映画臭さも払拭。なかなか完成度の高い仕上がりで、一見の価値大ありだ。
 3年前に「ギプス」で助演したあとは、チョイ役で2本の出演があるのみで、最近では「レイク」のCMで見かけるだけになっていた尾野真千子嬢にとっては久々の準主役。彼女のミステリアスな持ち味が役柄にピッタリとハマって、まさに本作品の要。これを機に再注目され、スクリーンに本格復帰してほしいものだ。


■「チルソクの夏」 (日) おすすめ度★★☆
 監督/佐々部清
 出演/水谷妃里 上野樹里 桂亜沙美 山本譲ニ 夏木マリ
 http://www.chirusoku.jp/

□あらすじ
 26年前の七夕の日、韓国・釜山で行われた関釜親善高校生運動競技大会を舞台に花開いた、日本人女子高生と韓国男子学生との恋。今以上に激しかった両国の大人たちの相互不信と嫌悪感に根ざしたそしりにも、人生の転機・高校三年生という状況にもくじけることなく、二人は一年間、文通によって恋を温め続け、遂に翌年の七夕、今度は下関で行われた親善競技会で再会する。国境や偏見を越えたこの恋を、当時懐かしの流行歌をふんだんに取り入れて描く青春ドラマ。「チルソク」とは韓国語で「七夕」のこと。

□雑感
 思い出は美しすぎて・・・。現在の視点で描くからこそ、思い出は純化されてただただ美しい。親友の恋を支える揺るぎない友情。恋にときめく純粋な女子高生たち。親思いの娘。貧しくとも、娘の幸せを願う親。海峡を越えた国際恋愛に反対する双方の親たちも、どこか控えめで、常に子供の心を気遣いながら義務のように故無く相手国民に対する敵対心を口にするように感じられる。日韓を取り巻く時代背景はそれなりに取り入れられてはいるが、この二人の間に立ちはだかる障壁は、これほどに燃えた恋をあっさりとあきらめるほどのものとも思えないのだが。
 主人公の親友を演じた上野樹里がいい。友情に、恋に、スポーツに、全身でぶつかってゆく彼女の姿は、古き良き青春そのものだ。それに引き替え、主役の水谷妃里は、役柄のせいもあるとは言え、感情表現に乏しく、彼女がタブーを破って世紀の恋に燃えているという実行動とのギャップが大きい。この主役の低体温と、上述の演出不足のせいで、どうも今ひとつ感情移入できずに終わってしまった。この作品を十分に楽しむには、何か共感できる体験や、主題歌「なごり雪」に対する思い入れなど、見る側の個人的要素が必要なようだ。

★関連作品 記事
 ■「1980(いちきゅうはちまる)」
  http://www.asahi-net.or.jp/~ns8m-hgc/movie/db/DB2044.HTM
 ■「昭和歌謡大全集」
  http://www.asahi-net.or.jp/~ns8m-hgc/movie/db/DB2016.HTM


■「フォーチュン・クッキー」 (米) おすすめ度★★★★
  1月に一度紹介しましたが、連休明けに本邦公開が決定したので再掲。
 監督/マーク・ウォーターズ
 出演/ジャミー=リー・カーティス、リンゼイ・ローン、マーク・ハーモン

□あらすじ
 互いに理解し合えずに対立する母娘は、ある中華料理店の女主人がかけた魔法によりその体が互いに入れ替わってしまう。そうして無理矢理相手の日常を生きることを強いられるうちに、お互いにそれぞれの立場や悩みを身を以て理解し、壁が取り払われて行く。

□みどころ
 かつてジョディ・フォスターが出演した「フリーキー・フライデー」(日本未公開)のリメイク。アメリカでは本作も同タイトルで公開されていたのだが、日本公開ではタイトルが変更された。これ、なかなか上手い邦題だと関心。
 ショウビズでは、俳優の降板劇があったこととか、興行収入が今ひとつだとか、あまりいい評価をしていなかったこの作品、確かに有名どころも特別のカワイコちゃんも出ていないけれど、原作の良さもあってか、ドラマはしっかりしているし、コメディとしてのキレもノリも抜群で、これが意外にもすごく面白いのだ。クライマックスにかけての手に汗握る展開も、観ていて大いに盛り上がること必至。友達や恋人を誘ってみんなで観に行くのにモッテコイの快作だ。こういうコメディはノリと台詞のマが勝負なので、もし可能なら割り切って日本語吹き替え版で楽しんで欲しいところ。

<koala> sxac0654@yahoo.co.jp
映画三昧:http://www.asahi-net.or.jp/~ns8m-hgc/movie-main.htm
 ━…━…━…━…━…━…━ koala's Info ━……━…━…━…━…━…
 ━…━…━…━…━…━…━ koala's Topic ━……━…━…━…━…━…
■「下妻物語」 おすすめ度★★★★☆
 試写会で一足先に鑑賞。カゲキな予告編を見る限り、大当たりか大ハズレかの両極端だろうなぁと、コワイモノミタで臨んだお披露目だったが、いやはやこれが面白いの何の。タダで見せてもらって申し訳ない!という感じの快作だった。5月下旬公開予定。
 ━…━…━…━…━…━…━ word of mouth━……━…━…━…━…━…



クチコミ
<キルビル2>
一作目とは話のつながりもほとんどなく、舞台も専らアメリカ。それでも、「修羅雪姫」や「女囚さそり」の梶芽衣子をモチーフにした不死身の女復讐鬼、というコンセプトは健在。ゴダール風なパロディも登場し、タラ・ファンなら大満足。前作同様、3曲10分以上あるエンドロールは必見(必聴?)。全世界に梶芽衣子の歌声が流れるのだ! ★★★☆

<コールドマウンテン>
南北戦争に出征した愛しい人を南部の農村で待ちわびる女。「ジャック・サマースビー」など数々の名作で使い古されたテーマで、ニコール・キッドマンの年に似合わない役柄にも「?」ではあるが、ドラマと演技には大満足。
★★★☆

「ディボースショウ」
夢の共演で贈る、超お安いドタバタコメディ。ある意味、ハリウッド映画の贅沢さを実感できるかも?! <koala>★



koala TOP koalaの映画三昧 TOP koalaのミニシアター 映画メルマガ「movie times」 掲示板