koalaの2000年ベスト5 2000/12/25

第1位:「初恋のきた道」 演出力No.1
 感賞直後の興奮とかなんとか言っていながら、今世紀最後に観た本作が一気に今年のベスト作に踊り出てしまった!
 封建的な革命間もない中国辺境にあって、身分の違いも社会的な奇異の目をもものともせず、命を賭けて恋を成就させ、一生を初恋の時のままに過ごした一人の女性を、雄大な情景描写と綿密な事物設定によって描いた感動作。物語自体はもとより、監督の演出力にとにかく「やられた!」と驚嘆させられる。

第2位:「アメリカン・ヒストリーX」 社会派No.1
 アメリカにおける人種問題を、黒人の存在が白人に与えた痛みという視点で語ったタブー破りの問題作。鑑賞後9ヶ月を経た今も雄叫びを上げるE・ノートンの姿は脳裏に焼き付いたまま。ストーリーの社会性と、鬼気迫るノートンの演技との両面から、20世紀最後の年の代表作として後世に語り継ぐ価値は大きい。上半期の順位を逆転しての一位獲得。

第3位:「スリーピー・ホロウ」 ""A級ホラー""No.1
 霧立ち込める深い森のはずれ、巨大な古木の洞穴から馬を駆って勢い良く踊り出す首無し騎士!「バロン」さながらのこのシーンは、数ある映画100年の遺産とともに、伝説となって人々の記憶に残り続けることだろう。色味を抑えた格調高く美しい映像の中で、浮き世離れしたC・リッチ&J・デップというこの上無いキャスティングを得て繰り広げられるおどろおどろしい妖怪の伝承は、ホラー映画というジャンルに対する従来の概念を破り、まさに""A級ホラー""とも呼ぶべき芸術的境地だ。

第4位:「ひまわり」 みずみずしい系No.1
 koalaが提唱する「瑞々(みずみず)しい系」なる、女性を中心に据えて透明感溢れる映像によって若者の心象を綿密に描き出す日本映画の新ジャンルに属する今年のベスト。自分探しを続けた挙げ句果てしない孤独感の前に力尽きた若い女性の思いを、集った旧友や恋人たちが想い出語りを通じて逆に辿り明かそうとして行くという展開の中で、他人に対して本気で接することを避ける現代の心の闇を描き出す。この主題に対して、主人公の生死さえ確信させない多層構造を成すミステリアスな味付けが絶妙のマッチングを見せる。とにかく、少なくともミニシアターファンだけにでも騙されたと思って一度観てもらいたい、意外性ある一作。

第5位(同率):「ANA+OTTO」 映像美No.1
 幼少期から青年期へ、そしてスペインから極北ラップランドヘ。広大な時空間に渡って数奇な運命に導かれて交錯し合う一組の男女の人生と愛の軌跡。「大いなる遺産」を彷彿とさせる壮大なストーリーと、寡黙でクールな映像の神秘性とが見事に融合。過去に類を見ない新境地を開拓し得た記念碑的作品。

第5位(同率):「シベリアの理髪師」 ドラマティックNo.1
 今年後半のベスト1は文句無しにこの作品。CGなどの技巧や作家性の過剰の陰でストーリー性がなおざりにされがちな近年の作品傾向の中で、まさに目から鱗、映画的な「ドラマ」とはこういうモノだ!と言わんばかりに、ロシアの巨匠は真っ正面からの正攻法で国際映画界に動議を提出した。先人が築いた技法を綿密に駆使しての編集の妙、そこから来るキレのある映像。それに支えられて軽快に展開する物語を心行くまで堪能して欲しい。

次点:「TAXi2」 アクション・コメディNo.1
 連作モノの、前作を知る者だけに許されるウチワ受けの至福を改めて認識させられた。第一作よりも第二作が圧倒的に面白いというのも実に珍しい。前作は本作のネタフリにしか過ぎないなんて!本年、koalaが鑑賞した中で最も娯楽作としてストレスなしに楽しめたのはこの作品。

<koala>

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