ロスト・サン 2000/08/01

■あらすじ
 暗い過去を背負って生きる私立探偵の男が、捜索を依頼されたターゲットを追う中で遭遇した少年売買という忌まわしい組織犯罪に自らの心の傷を呼び覚まされ、依頼人の意向を逸脱し自らの護身も顧ずに組織根絶へと暴走して行く。

■感想
 koala愛するN・キンスキー(「テス」「パリ、テキサス」)の出演作&彼女とフランス映画界を代表する俳優D・オートイユ(「八日目」「橋の上の娘」)との共演ということで、期待たっぷりの鑑賞。 

 本作のみどころは何と言っても、主人公の私立探偵を演じたオートイユが見事なはまり役であること。暗く抑えた演技によって、強大な相手に一切の見返りも護身も求めない私戦を仕掛け、組織を震え上らせる主人公に見事なリアリティを持たせることに成功している。
 そして、決して笑い合うことなくも彼と信頼を交わすターゲットの恋人役カトリン・カートリッジ、パリ時代から彼と長年心の友として支えあう関係を続け、非情にも彼の情熱の犠牲となってしまう娼婦ナタリーを演じたドニクールの二人の助演女優とオートイユとのコラボレーションも素晴らしい。カートリッジとオートイユ、凍った心で寄り沿う二人の何と絵になることか(ちょっと「ポーラXを思い出した」)。一方のドニクールは、その美貌によって、命が失われたことによるグザヴィエの空虚感お観客のものとして強く印象付ける。

 家族の誰かが怪しいにしても、それが誰であるかを悟らせない展開の巧さも光る。
 残念なのは、クライマックスでのグザヴィエとオーストリアとの対決シーンに盛りあがりが欠けたところと、組織側の登場人物に主人公と渡り合うだけの力量が欠けていた点。オートイユの一人相撲になってしまった感がある。

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