愛のコリーダ2000 2000/12/03

■「三文役者」(2000年日) 評価 ★★★★☆
監督/新藤兼人
出演/竹中直人、荻野目慶子、乙羽信子、殿山泰司、真野きりな
□あらすじ
 ご存知名脇役、故・殿山泰司(タイチャン)の一代記である。
 彼をこよなく愛し、多くの作品を共に作った新藤監督の手による。物語をナビゲートするのは、新藤監督の亡夫人である女優・乙羽信子。この構想のため、監督は夫人存命中にショットを撮りためていたのだ。
□みどころ
 戦争を挟んで苦労を共にした正妻と、大恋愛の末結ばれた内縁の妻(荻野目慶子)と、役者仲間や監督たち。酒に溺れては失敗を繰り返すタイチャンだが、彼の不思議な人間の魅力が取り巻く人たちの心を捉え、こよなく愛された。
 そうした彼の破天荒な人生を演じて見せるのは竹中直人。これがまたよく似ているのだ。モノマネと言えばそうであり、それは映画においては禁じ手でもあったりするのだが、容貌や声質を含めここまで似ていると、もはやそういう批判は当たらず、タイチャンが甦ったかのような錯覚に襲われすらする。ひとりの稀代の<映画バカ>を送る映画葬だ。

■「愛のコリーダ 2000」(1976 仏) 評価 ★★★★ 
監督/大島渚  (フランス映画であることに注目!)
出演/藤竜也、松田英子、殿山泰司、小山明子
□あらすじ
昭和初期に実際にあった狂気の愛の事件=阿部定事件をもとに、人を真に愛するということの意味を問い掛ける衝撃作。
□みどころ
 この作品について今更どうこう言う必要もないだろう。昭和の日本映画を代表する作品の一つであり、製作当時本国フランスでは「L'Empire des Sens」(=官能の帝国)という題名で完全版公開され、大ヒットを記録したのだが、日本では当局の課す様々な制約から大幅なカットと酷いボカシを強要され、芸術的価値を奪われてしまったという、日本映画史における痛恨の一作でもある。
 それだけに、製作者サイドがこの作品の日本での完全公開に賭ける執念は並々ならぬものがあり、21世紀入りを目前に控えた今、ノーカットかつ必要最小限のボカシのみによる、ほぼ完全な形での本邦公開が実現した。
 筆者は15年ほど前、大学祭の上映企画で日本版を観たのだが、まともに見えるのは""きっつあん""が""さだ""の長襦袢で歩くシーン(このシーンは一番色っぽくて好きなシーンではある)などほんの一部のみで、画面全体に及ぶボカシ処理の連続はとても鑑賞に耐えるものではなかったのを覚えている。それだけに、今回鑑賞したこの完全版は、全く別の作品を観るような新鮮さを覚えた。
 製作当時の公開版を観た人も、ビデオで観た人も、全く知らない人も、ぜひ映画館の大スクリーンでその目に究極の愛の軌跡を焼き付けて欲しい。

<koala>

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