スナッチ

■「スナッチ」（2000年　米）　評価　★★★★
監督／ガイ・リッチー
出演／ブラッド・ピット、ベネチオ・デル・トロ、デニス・ファリーナ、ビニー・ジョーンズ、ラデ・シェルベッジャ、ジェイソン・ステイサム
＜３／１０から全国ロードショウ＞
　
□あらすじ
　ロンドンのダウンタウンを舞台に、８６カラット！のダイヤと現ナマを巡って大物・小物のならず者たちと一匹の猛犬が入り乱れての争奪戦を展開する。そして、彼らを繋ぐ賭けボクシングの行方とパンキー・チャンプのプライドの折り合いや如何に？

□みどころ　
　イギリスの新鋭ガイ・リッチー監督による「ロック、ストック＆トゥー・スモーキング・バレルズ」に続く第二作。脚本も彼が担当している。
　いやぁ、文句なくこれは面白い！　複数の獲物をさらに多くのならず者グループが奪い合い、次々と持ち主が移り変わってゆくという椅子取りゲームのような楽しさと、見るからにコワモテの連中（よくぞこんな俳優を揃えたものだ）と一見〝ヘナチョコ""素人との互角な渡り合い、という意外性はデビュー作そのままに、今作ではブラピ演じるパンキー（ロンドン郊外で共同生活するアイリッシュ系のジプシー）の素手ボクシング・チャンプをならず者たちの資金源である賭けボクシングに駆り出すという一大イベントをもうひとつの柱に据えて、さらに混沌度がアップ。
　この痛快感は、クエンティン・タランティーノ以来の新鮮さ。久々のナンセンス・バイオレンス・ムービー作家の出現だ。
　テイスト的には、タランティーノに「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」のような乾いたジャーマン・バイオレンスと、「バッファロー'６６」のＶ・ギャロの緩急の妙、そしてフィンランドの鬼才アキ・カウリスマキの＜対峙＞の可笑しみを加味したような、なんとも絶妙なバランス。それは決して、無難とか寄せ集めとかいうのではなくて、むしろ正反対に、病み付きになるほどの個性を放つ。
　場面展開のスピーディーさも更に洗練されていて、旅行嫌いの登場人物のロンドン→ニューヨーク移動は、出国スタンプ押捺１秒、コンコルドのワンカット１秒、入国スタンプ押捺１秒、計３秒の瞬間移動。電話も画面を分割しての話し手・受け手の同時進行。お宝奪取を図る者達のイライラ度がモロ伝わってくる。
　主役と言える人物は特になく、登場人物はとても多くて、外国人の顔を覚えるのが苦手な人（koalaも！）には辛そう・・・いや、心配ご無用！　そのために、かどうかは知らないけれど、それはそれは濃い顔の俳優たちを揃えてあるので、全然大丈夫。
　それにしてもこの作品でのブラピはイケてる。脚本を見た彼は自らこの役を志願して出演にこぎつけたそうだが、その意気込みが伝わってくる。パイキーの話す英語はロンドンの都会っ子でも聞き取れないほど訛りが強いらしいのだが、彼は辛うじて英語だ、とわかる程度のそんなパイキー・スラングを駆使してならず者たちを煙に巻く。そしてママ思いで仲間思い、一見軟弱に見える彼がひとたび拳を握ってリングに立てば、百発パンチを浴びてもびくともせず、相手を倒すには一発で十分という無敵ぶり。しかも意外や意外のクライマックス！！　もう、カッコ良すぎ。「ファイト・クラブ」が中途半端な脚本で失敗に終わっているだけに、彼も今作で面目躍如、というか、本人が一番満足しているのではないだろうか。
　こういうパターンは見飽きるということがないので、早く次の作品が観てみたい。純粋にそう感じさせる快作だ。マニア的なファンが誕生しそう。

　ところで、本作を二倍楽しむためには、ぜひ監督の原点である処女作「ロック、ストック＆トゥー・スモーキング・バレルズ」（レンタル中）を観てから劇場へ向かわれることをお奨めする（↓）。

オフィシャルサイト（日本）
http://www.snatch-jp.com/
オフィシャルサイト（アメリカ；英語）
http://www.snatch-themovie.com/

********************　おまけ　********************
■「ロック、ストック＆トゥー・スモーキング・バレルズ」（1998　英）
監督／ガイ・リッチー　　評価：★★★☆
出演／ニック・モラン、ジェイソン・ステーサム、ジェイソン・フレミング、デクスター・フレッチャー、スティング、スティーヴン・マッキントッシュ、ヴィニー・ジョーンズ、レニー・マクリーン、Ｐ・Ｈ・モリアーティ
□あらすじ
　お宝古式銃と大麻と現ナマとを巡って、大物小物の悪者たちが入り乱れての真剣で間抜けな争奪戦を繰り広げる。
□みどころ
　覚えきれないほどのならず者たちが一喜一憂悪運幸運、勘違いやら間の悪さやらがあだとなり、また幸いし、優位が目まぐるしく入れ替わる。はたして誰が最後に笑うのか、まったく予測がつかない面白さ！。

＜koala＞