パップス 2000/08/11

■「パップス」(1999年 米) 評価 ★★★☆
監督/アッシュ
出演/ミーシャ・バートン、キャメロン・ヴァン・ホイ、バート・レイノルズ、アダム・ファラー
受賞/'99ゆうばり国際ファンタスティック映画祭審査員特別賞
<シブヤ・シネマ・ソサエティほかにて公開中(8/13現在)>
 
■みどころ
 待望のミーシャ・バートン(「キャメロット・ガーデンの少女」「シックス・センス」)第二回主演作。ハリウッド初主演作。総合プロデュースはあの奥山和由氏。いわゆる「Team Okuyama」レーベルである。 
 テーマはまさにタイムリー。閉塞観に苛まれた少年少女の狂気だ。日本でも、少年による理由無きバスジャックや尊属殺人、強殺などが頻発しているが、一足先にこうした状況を体験し始めたアメリカの片田舎を舞台に、なんとなく手に入れた拳銃を持って、通学途上のふとした思いつきで、13才のカップルは銀行へ乱入する。二人でどこか遠くへ行きたい。そんな夢のような願望はあったにせよ、およそ銀行強盗の動機となるようなものは二人の心中に見当たらない。要求はと聞かれても、ピザが欲しい、MTVに出たい・・・。ただただ、少年は込み上げるやり場の無い激しい怒りを人質に、そして包囲するFBIにぶちまけるのみ。
 映画は、ほぼ全編が銀行内に立てこもる二人と大人たちとのやりとりに終始する。そこから伝わるのは、子供と大人を繋ぐ共通言語の悲劇的な欠如。猛る少年の怒りは大人たちには響かない。そして、自分勝手な保身しか考えない大人たちの説得はキレた少年の心にひたすら空々しい。

 「現代版ボニー&クライド」などと呼ばれているが、あーいうヒロイズムや、死へ突き進むような収束感もない。でも、冗談か本気かつかないうちに、状況は確実に,「現実的に」、悪化。そして、容赦ないシビアな結末に、観客は凍り付くことになる。

 主演のkoala愛するバートンは、暴走するボーイフレンドにとまどいつつも従い、彼を時に母のようにやさしく見守る少女を余裕の演技で好演。物静かな彼女が拳銃片手に並み居る狙撃兵の前へ進み出で、父親を罵倒し、群集に札束を投げつける。このスイッチ感がイイ。

 強盗カップルに荷担する言動をとる湾岸戦争傷痍帰還兵を演じ、いまひとつぱっとしない助演陣の中で一人気を吐いたアダム・ファラーはレオナルド・ディカプリオの義兄。

■おまけ〜下北沢の短編映画館<トリウッド>上映作品から〜
☆「王手飛車取り」(9/15まで) 
監督:ジャック・リヴェット
出演:ヴィルジニー・ヴィトリ、アンヌ・ドア、エチエンヌ・ドワノー、ジャン=クロード・ブリアリ、ほかヌーヴェル・ヴァーグ監督たち
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 夫婦それぞれの不倫の恋の駆引き。フランス恋愛映画の真髄が凝縮された胸踊る作品。仏画ファンは急げ!8/26からはゴダールの絶品短編「男の子の名前はみんなパトリックっていうの」もニュープリントで併映開始。

☆CGアニメ傑作集から「彼女と彼女の猫」(8/25まで) 監督:新海真
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 上映全4作は何れも国内受賞作。中でも、拾われた猫の目線で飼い主の一人暮しの女性との日々を描いた「彼女と彼女の猫」は、CGという世界を越えて、アニメとしても最高峰に位置すべき鳥肌ものの秀作。

☆フランス短編映画特集から「信頼できる筋によると・・・」(8/25まで)
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 上映全6作品のなかから。ゴシップが飛び交うパーティー会場のスナップ。イザベル・カレ、エレーヌ・ドゥ・フジュロールというスター女優が出演する豪華作。

<koala>

ミーシャ・バートンFC:http://www.asahi-net.or.jp/~ns8m-hgc/movie-barton.htm

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