ルナ・パパ 2000/07/30

■「ルナ・パパ」(1999年 独・墺・日) 評価 ★★★☆
監督/バフティヤル・フドイナザーロフ
出演/チュルバン・ハマートヴァ、モーリッツ・ブライプトロイ、メラーブ・ニニッゼ、アト・ムハメドシャノフ
受賞/1999年ヴェネチア国際映画祭正式招待作品
   1999年東京国際映画祭最優秀芸術貢献賞受賞
<シネスイッチ銀座 ほかにて公開中>
 
■あらすじ
 憧れのドサ回り劇団の公演に遅れて見逃した夢見る少女の純潔を奪った月夜の情事。終えても今だ夢の中の彼女を現実に引き戻したのは妊娠という事実。閉鎖的なイスラムの土地で未婚の母などもっての外。厳格な父と知恵遅れの兄との三人で、父親探しの行脚が始まる・・・。 

■感想
 独・墺・日の合作であって、監督・俳優に中東ロシアの人材を配した異色作。ただし、兄を演じたモーリッツは「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」で認められ、「ラン・ローラ・ラン」で高い評価を得たドイツ人俳優。
 展開や作風は、土地柄を反映してイランとインドの融合型と言っていい。漲る温かさ、家族愛はイラン映画の、宗教色やダンサブルなところはインド映画の特徴を示している。

 今までに見たことも無いような掟破りの展開と演出に戸惑うことしきり。ファンタジーのようでいて妙に現実的でもあり、突拍子も無いが魔法でも無い数々の出来事はどう受けとめていいやら。しかも、飛躍に満ちた展開。
はっきり言って、唖然と過ごした1時間半だった。

 が、映し出されるタジキスタンの風物は目に新鮮で、主演のチュルバンは、若き日のオリビア・ハッセイを彷彿とさせる美貌と愛嬌でスクリーンを和ませてくれる。彼女の愛くるしい瞳のおかげて、村人たちの冷たい仕打ちも月夜の真実も、御伽噺のなかの出来事に思えてくる。
 演技力という点ではやはり、知恵遅れだけど変に霊感がある妹思いの兄を演じたモーリッツに尽きる。主人公のチュルバンとともに、彼が見せる脳天気だけど純粋な行動がいつも展開を和ませてくれるし、辛い境遇の妹の心の拠り所ともなっているので、訳がわからないながらついつい応援したくなってしまう。

 そうそう、母と共に旅立ったお腹の中の息子が物語りをナビゲートするという設定もなかなかおもしろい。

 こうしていろいろ思い起こして行くと、なかなか見所が多い映画ではある。意外と<忘れ得ぬ映画>として心に残って行きそうな気も。とにかく、「あざとさ」が無いのが何と言っても救い。

 インド・イラン映画のファンにはオススメの一作。

<koala>

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