宋家の三姉妹 2000/01/30

「宋家の三姉妹」(そうけのさんしまい) (1997年 香港・日本合作)
評価:★★★★★(観ないと後悔するゾ級!)
監督:メイベル・チャン
出演:マギー・チャン、ミシェール・ヨー、ヴィヴィアン・ウー、ウィンストン・チャオ、ウー・シングォ、チャン・ウェン、エイレン・チン、ニウ・チェンホワ
受賞歴:香港電影金像奨6部門受賞 
    中国金鶏奨・特別賞、百花奨受賞
    台湾金馬奨3部門受賞
<東京神保町 岩波ホールにてアンコール上映中。
京都みなみ会館など全国の一部ミニシアターでも再映計画アリ>

■ストーリー
 二十世紀初頭、清朝崩壊、辛亥革命から袁世凱独裁、西安事件、日中戦争を経て太平洋戦争後の国共内戦、中華人民共和国による中国開放、蒋介石台湾政府樹立まで、西洋民主主義と民族主義の間を激しく揺れ動いた近代中国黎明期。裕福な実業家・宋家(そうけ)に生まれ、高度な教育を施され、各者各様に中国政財軍閥要人の妻となって中国中枢部に絶大な影響を与えた三姉妹を中心に、史実に基づきながらもドラマティックに、壮大なスケールで描く歴史ロマン。中国原題はズバリ「宋家皇朝」(=宋王国)。

■ みどころ
 一秒一言たりとも見逃せず聞き逃せないほどに綿密に組み立てられ、ちりばめられた台詞や事物。これだけのスケールと物語の期間の長さ、描きこまれている事件の多さにも関わらず、2時間25分という標準的な長さに纏め上げられ、しかも史実とドラマの絶妙なバランスにより、エンターテインメント性をも十分に加味することに成功している。この脚本の完成度の高さには驚嘆を覚える。文字通り寸分の隙もない・・・。
 女性監督チャンと、彼女の公私にわたるパートナー、アレックス・ローの脚本という息の合ったコンビと、着想から5年という歳月をかけた地道な作業の成果と言えるだろう。

 絶品はラスト。クリスチャンであった姉妹の父の形見の聖書に、雨滴にあぶりだされて或る父の書き込みが浮かび上がる。母が末娘の夫となる蒋介石にこれを手渡す際に彼に言った言葉がここで観客の脳裏に蘇る。この心憎いほど見事な演出には、思わず天を仰ぐ心持であった。

「シルクロード」で有名な喜多郎による壮大でいて繊細な音楽も感動を効果的に高めている。

 終演後しばらく、「すごい作品に出会った」という感動と驚きで心の整理がつかず、呆然としてしまった。それほどに見事な作品。

<koala>

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