ハーモニーベイの夜明け 2000/04/28

■「ハーモニーベイの夜明け」(1999年 米) 評価 ★★★ 
監督/ジョン・タートルトーブ
出演/アンソニー・ホプキンス、テオ・コールダー、ドナルド・サザーランド
<新宿シネマ・カリテにて公開中(4・28マデ)以後地方で続々開映予定>
 
■あらすじ
 アフリカの森でマウンテンゴリラを研究し、彼らと行動を共にするうちに遂にその家族の一員となって搾取者=人間社会と訣別したパウエル博士。森で捜索隊を襲って殺害したために狂人として特殊刑務所へ収監されている博士の心象を解明しようと、一人の新進気鋭の精神医学者テオが挑む。果たして博士は人間の心や言葉を取り戻せるのか?解放されるのはパウエルか?それともテオなのか?

■感想
 男性版の「ネル」(J・フォスター)と言っていい。野生に同化して安息を得た人間が現代社会に投げかける問題提起と、その社会が彼に与える苦痛についてを描いた問題作だ。

 ンー、残念!惜しい。
 野人の物語と凶悪犯専用刑務所の物語を融合した着想のよさに、A・ホプキンスが見事に演じた「羊たちの沈黙」以来の強暴な役柄。条件は完璧。しかし、肝心の脚本・演出が甘いのと、若く有能な精神科医テオを演じたC・グッディングがはっきり言ってミスキャストだったことが大誤算。名作になり得た作品がもったいないことに。
 脚本に関しては、一言で言って淡白。何かとものわかりが良すぎる。野人博士の懐柔がスムーズ過ぎるのと、事件の発生がいささか段取りじみている。先を急ぎすぎたのだろう。全般に余裕=タメがないのだ。
 テオ役については、無理に黒人を配する必要はなかったのではないか。出世欲が強いという設定だが、キャラクター的に軽さがあるグッディングではどこか能天気に見えるし、そのために彼が博士によって「解放」される瞬間の衝撃と変容ぶりが十分に伝わらない。細かい演技力が決定的に不足していたこともそれに輪をかけた。
 結果的に、ひとりホプキンスの名演技だけが目立つ結果に終わっている。それでも、「ジョーブラックをよろしく」で引退宣言した彼を銀幕に引き戻したのはこの作品だし、この後も「羊たちの沈黙」続編、「MI2」始め出演作が再び目白押しとなったことの端緒としての功績は世界の映画界にとって大きい。

<koala>

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