聖なる嘘つき その名はジェイコブ 2000/01/11

「聖なる嘘つき その名はジェイコブ」 (1999年 米)
""JAKOB the LIAR""(〜原作邦題「ほらふきヤーコプ」)
評価:★★★
製作総指揮:ロビン・ウイリアムス 
監督:ピーター・カソヴィッツ
出演:ロビン・ウイリアムス、ハンナ・テイラー・ゴードン、リーブ・シュライバー、ボブ・バラバン、アラン・アーキン、アーミン・ミュラー・スタール
<「シネマスクエアとうきゅう」で1/14まで上映中。以後地方上映予定アリ>

■ あらすじ
二次大戦中、ドイツ占領下ポーランドのユダヤ人隔離居住地区(「ゲットー」)が舞台。ドイツ支配の終焉を希求する人々の期待を裏切れず、連合軍攻勢を伝える虚構の「BBSラジオ放送」を彼らに伝えつづけ、ついに自らの「聖なる嘘」に殉じた男ジェイコブの滑稽かつせつない物語。

■ 感想
題名からも大体のネタはばれているので、興味はラストシーンでのジェイコブの身の振り方とその運命に尽きる。そしてそれは、意外なようでもあり、また、予想通りのようでもあった。そこに至るまでの過程を懸命に盛り立ててくれたのが、収容所送りの列車から脱走してきた少女を演じた美少女ハンナの凛とした魅力だった。

■ みどころ
本作はアメリカ製作ではあるが、監督はハンガリー出身で両親を強制収容所送りされた経験を持つ異色の人物。

製作総指揮は主演のロビンが兼任。自己プロデュースだけに、彼のキャラクターにジャストフィットした役どころで、ロビンファンには大満足の一作と
言えるのではないだろうか。

本作で個人的にちょっと残念なのは、意図は不明だがラストシーンでゲットー住民たちのその後の運命を冗談めかしてあいまいにしてしまったところと、主演のロビンが「いかにも」というはまり役過ぎたところ。

住民たちの運命については、本作が悲劇となるのか美談となるのかの決め手だから、明確に断じて欲しかった。
あいまいといえばジェイコブについても、彼が大義のためか、自己のためか、何れに殉じたのかが今一つ明確ではなく、個々の観客に委ねられている。しかしこの点については、何れにしてもその選択肢しかなかったところに彼の悲劇があるのであり、彼に期待した住民たちが彼を知らず袋小路に追い詰めてしまったということなのだ。ジェイコブの悲劇の後でさえ、果たして幾人の住民がそのことに気付いたろう。この辺の無念さにはこちらの胸も詰まる。彼自身の独白にもその悔しさが現れている。

ロビンについては、彼しかいないと言えるほどの適役。しかし、彼には好人物とのイメージが定着してしまっていて、ストーリーが読めてしまうところが若干の難点。A・ドロンを使えとまでは言わないが、「ライフ・イズ・ビューティフル」のベニーニのようにうんとお調子者に仕立ててしまうか、劇中にほのめかされるジェイコブのケチな性格という、狭量さを押し出してラストに意外性を持たせるか、そういうヒネリを求めてしまうのはフランス映画の見過ぎが原因かな?今後そういう翻案が出現すると面白そうだ。

いろいろ書いたが、これだけの夢を人々に与えながらジェイコブが終始控えめなことが、時の流れがこの美談を記憶から消し去りそうな感覚を誘って切なさを倍加させている。

■ 地方上映予定(1/14現在)
シネマスクエアとうきゅう シネマックス千葉 上映中
シネマアルゴ梅田 心斎橋シネマドゥ 12月18日(土)〜
名古屋ピカデリー3 12月11日(土)〜
札幌劇場 12月23日(祝)〜
KBCシネマ(福岡) 正月2弾以降

<koala>

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