ワンダーランド駅で 2000/01/07

「ワンダーランド駅で」 (1998年 米)
評価:★★★☆
監督:ブラッド・アンダースン
出演:ホープ・デイヴィス、アラン・ゲルファント、ヴィクター・アーゴ、ジョン・ベンジャミン、フィリップ・シーモア・ホフマン
<銀座テアトル西友にて大ヒット上映中(1/7現在)>

■賞関係
 '98サンダンス映画祭出品
 '98ドーヴィル映画祭(仏)グランプリ・観客賞受賞

■あらすじ
 アメリカ版「君の名は」とも言える、傷つくことに臆病な大人の男女のちょっぴりビターな本物の「愛」探しの物語。出会えば恋に落ちること必定の二人なのに、なかなかめぐり合わない。映画は、この二人の運命の行く末を、それぞれを取り巻く友人たちの悲喜こもごもと共に静かに、時にコミカルに描いてゆく。

■感想 
 正月明けの映画館は、水曜の1000円均一サービスデーということもあって、立ち見も出る超満員の大盛況。圧倒的に女性客が優勢で、一人で来場している人も多かったよう。

 この映画を観てまず連想したのは、一昨年G・パルトロウ主演で話題を呼んだ「スライディング・ドア」。ストーリーは全然違うけれど、主人公たちの見せるどこかドライで地に足のついた恋愛感や、都会的でオシャレな雰囲気は共通するものがある。この「ス・・・」を観て共感を覚えた人なら、本作も楽しめるんじゃないかな。

 本作の独特な大人の雰囲気を醸し出し、盛り上げてくれるのが、全編に流れるボサノヴァのつくるJazzyなムード。主人公女性が母に出された恋人探しの新聞広告や、それに応募し、結果を賭けのネタにする主人公男性の友人たちといった、観ようによっては下世話な世界も、ファニーな悪徳集団の登場も、このBGMが静かに包み込んでくれて気にならない。なぜか、二人の心象を追うことに集中できてしまうのだ。

 ストーリーは、調和性と女性のキュートさが垣間見えるラストシーンを除けば、かなりのフレンチテイストが漂い、フランスで高い評価を受けたのも頷ける。

 突然男に捨てられた、恋の偶然を信じない女と、人生にストイックであろうとする男。夢は程々に叶い、程々に挫折を味わった、もうそんなに若くはない美男美女の運命は、間近で交錯しつつもなかなか重ならない。時間的にも空間的にも、とっても近いところに居るのにすんでのところで横槍が入って出会えない。

 映画は観客を、こんな二人が果たして出会えるのかどうか、やきもき見守る「神」に仕立ててしまう。そして、見知らぬこの二人の出会いのドラマをラストに引っ張りつつ、二人の満たされない日々を、二人の愛すべき友人たちの悲喜こもごもとともに、それぞれに静かなタッチで丁寧に、時にコミカルに描き出して行く。彼らの出会いを求める営みは二人の距離を巧みに近づける。でも出会うところまではなかなか行き付かない。でも、幾度かのニアミスで、まんざら初対面でもなくなっている。この辺の力加減が、退屈もせずあざとくもないという微妙な線をキープしていてなかなか巧み。
 そして、ラストにはそのエピソードがちゃんと伏線としてさり気なく生きてくるという仕掛も、王道ながらプロの仕事を感じさせる。

 主演の二人は、地味なことが逆にリアリティを感じさせて、なかなかの人選。嫌味のない美男美女、と言ったところ。

 監督は、インディペンデント界で次世代を担うとの呼び声高い新鋭。TVなどの経験はあるが、映画では本作が二作目となる。

<koala>

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