ANA+OTTO 2000/01/13

「ANA + OTTO」 (1998年 スペイン)
評価:★★★★☆
監督・脚本:フリオ・メデム (第4回監督作)
出演:ANA/サラ・バリエンテ→クリステル・ディエス→ナイワ・ニムリ
   OTTO/ペルー・メデム→ビクトル・ウゴ・オリベイラ
                      →フェレ・マルティネス
映画賞:1998年ヴェネチア映画祭、1998年トロント映画祭、
    1999年サンダンス映画祭 各正式出品
<恵比寿ガーデンシネマにて国内独占上映中(1月現在)>

■ あらすじ
 陽光のスペインから極北のラップランドへ。偶然に満ちた不思議な絆で結ばれた少女ANAと少年OTTOの人生は、時に激しく絡み合い、相離れ、また寄り添う。幼少期から青年期の20年間に及ぶ二人の軌跡を、月光の下にいるような独特の静寂でクールなタッチで描く異色ラヴ・ファンタジー。

■ 感想 
 これはツボにはまってしまいました。好きとしか言いようがない。独白が中心でほとんど会話らしい会話がないのに、二人の間に流れる感情が痛いほど伝わってくる。昨年公開されたフランス映画「視線のエロス」にも通じるこの息詰まる雰囲気がたまりません。
 年初から目白押しの話題作連に埋もれて客入りもまばら、ノーチェックに近いこの作品ですが、ヨーロッパ映画が好きな人には超オススメの掘り出し物です。

■ みどころ
 この映画がスペイン映画だ、というのはにわかに信じがたい。全編に漂う寒々しい青い影と沈黙は、極北の地で果てるクライマックスを予言するかのように、北欧の香りが強い。恋心の告白も、差出人も受取人も明かさない紙飛行機の付け文であったり、親密な時間に交わされる眼差しと心の「会話」であったり。ラテン民族特有の開放的で熱情にあふれる言葉によるコミュニケーションは皆無。そして、伝説を聞かされているようにファンタジックな脚色!
 予告編で注目したときも、実際に鑑賞している間も、私はずっとフィンランド映画だと思っていた。

 とにかくこの映画の見所は多い。

 映像面では上に書いた青いトーンのほか、極限まで短く切り詰めた個所とスローモーションのようにさえ感じるほど細かく描写された個所とのメリハリの妙、時間軸を進めたり戻したり繰り返したりと自在で柔軟な表現の妙。

 構成面では、ANNA−side、OTTO−side、そして二人の時間を追うAVEC−sideと、一連のできごとをそれぞれの視点から描いて見せている点。これはよく、心や運命のすれ違いを表現する場合に用いられる手法なのだが、本作ではそれによって逆に二人の以心伝心ぶりと絆の深さを描き出しているところが新鮮。

 物語の素敵さも忘れてはならない。戦争中の敵味方を超えた友情の伝説に由来する""OTTO""命名秘話をストーリーの契機とし、伝説の主のその後の足跡やその子孫とANA+OTTOとの宿命的な結び付きをクライマックスに繋げるという壮大な仕掛けはお見事。ヨーロッパ大陸を股にかけた様々な愛の逸話は、観る者の心に無限の広がりを与えてくれる。

■ 今後の上映予定
 今のところ全くの単館独占上映で今後の他館上映予定もありません。地方の方はビデオ待ち必至かもしれませんね。沈んだトーンと青い色調はぜひ映画館で楽しんで欲しいのですけど。
 上映予定の追加やビデオの発売情報などは、この映画の配給元であるポニーキャニオン( http://www.ponycanyon.co.jp/ )のHPに掲載されるはずなので、興味ある方はぜひチェックを。

<koala>

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