パトリシア・アークエットのグッバイ・ラバー 1999/10/03

「パトリシア・アークエットのグッバイ・ラバー」(米 1998年) 評価:★★★★
監督:ローランド・ジョフィー
出演:パトリシア・アークエット、ダーモット・マルロニー、メアリー=ルイーズ・パーカー、エレン・デジェネレス、ドン・ジョンソン、ヴィンセント・ギャロ
カンヌ映画祭正式招待作品
<新宿・シネマミラノほかで公開中>

■あらすじ 
愛か、金か、正義か。答が見つからぬまま、時に快感に身を悶え、あるいは悲しみの涙に暮れながら、P・アークエット演じる可愛くて純真で向上心の強い女の子が「夢」に、少なくともその入り口に辿りつくまでを描いたB級フレンチ・テイストあふれるサスペンス・ラブロマンス(なんじゃそりゃ?)。

■感想
 いやぁ、これは凄い映画だ。ぜひ何の先入観も無く観てみたい。

 始まりは所構わずSEXするスタイリッシュで甘いB級ラブロマンス。不思議な色気を放つサンドラ=アークエットをオモチャに遊んでみた映画なのかと思わせる。それが不倫の香りに染められて、突如危険な色を帯びる。でもまだ、「背徳の甘いワナ」なんて言うコピーが頭をかすめるB級テイスト。

 ところがところが、人が死に、そのあとの加害者たちの異様な冷静さを見せられたところから、流れは一転、陰謀渦巻くサスペンスタッチに変わる。そして、「サウンド・オブ・ミュージック」を愛唱し、成功へ自己暗示を促すテープを暗唱する渦中のサンドラが、その一見子供じみた純粋・無垢さ故に余計空恐ろしい存在に思えてくる。ところが、これが物語のほんの序章に過ぎないところがこの映画の凄い所。

 成功を奈落の底へ突き落とす衝撃の事実が突然浮上。さらなる計画。予期せぬ裏切り。愛か、大金か。そう、これがこの映画のテーマ。両方に決まっている。でも、どちらか一方を選ぶとしたら・・・。
 そして何と、ここに意外な横取り参入者が現れ、この究極の「二択問題」は正義をも天秤にかけての「三択問題」になる。予想外の事態に、サンドラのみならず、観客の我々もアングリ。

 結局、女の子はたくましくて貪欲。どんな悲しみも心の痛みも、大金持ってのお買い物でキレイサッパリ。エンディングはまるでフランス映画のような不合理でステキでハッピーな風景(男の影が無いところがかろうじてアメリカン・テイストか)。意外な人物のキツーイ冗談もとっても有効。

 アークエットの七変化を楽しもうと入った映画でここまで楽しめるとは!まさに掘り出し物、儲けモノの一作。
 ゲスト出演のヴィンセント・ギャロも、「一度見たら忘れない顔」には彼しかいないというほどのハマリ役で、ストーリーの鍵をしっかり握ってます。
<koala>

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