2000/08/23

■みどころ
 カリスマ喜劇女優藤山直美の華麗なる?映画初主演作。監督は「どついたるねん」など、男ものの武骨な作品を得意とする阪本監督。 

 不細工でブタでドンクサイ。で、女。かわいそうだけどゴメンナサイ。男、敬して遠ざくの図である。親には諦められ、妹には疎まれて、35年間のほとんどを自宅に閉じこもって過ごしてきた主人公は、母の死をきっかけに、妹を絞殺して一人家を出る。遅い遅い門出である。それがいきなりの逃亡劇。でも、一端外に出てみると、そこも不幸や孤独に満ち溢れ、それぞれが喘ぎながら細々と暮らしていることに気付かされる。そして、そういった人々は彼女に意外なほどの情を見せる。さらに意外だったのは、縁が無いと思っていた男たちが彼女に優しかったこと。そして、彼女をためらうことなく女として扱ったこと。逃亡という緊張感の中にあっても、彼女は次第に生の喜びを感じて行く。そしてそれが、彼女の更なる逃亡の原動力になってゆく。今までのことは、別に謝らんでエエ。ウチがやったことも、悪いとは思てへん。ウチ、生まれ変わるんや・・・。

 実にグロテスクな映画ではある。あの父・藤山寛美の面立ちそのままに女として生を受けた直美嬢の「顔」が、さらに傷つき腫上がってスクリーンに大写しになる。ウワァ・・・。そこへあの、顔のグロさでは引けを取らない國村隼が登場してなんと二人はカラミ出す。ヒエッ。男もの専科の阪本監督だけあって、展開も編集も荒っぽい。

 でも、観ているうちに、彼女の顔とともに、私たちの心までどんどんどんどん晴れやかになって行く。そして、何とかどこまでも逃げてくれと、いつしか自分の思いを彼女に託していることに気付かされるのだ。

 自虐的な台本をものともせず、かといって力が入りすぎるでもなく、淡々堂々と演じて、共感といたたまれない可笑しさを観客に呼び起こす直美はやっぱりすごい。最初は戸惑っていた場内も、後半はもう大爆笑の連続だ。
そして、どうやって集めたのかと思うほどの助演陣の豪華さにも驚嘆。彼らがみんな、直美を立てつつも個性を発揮して、それぞれのエピソードに強い印象を残してくれている。

 まさに奇作。この映画は、ぜひとも映画館の大画面で「体験」してほしい。きっと主人公のことが好きになる。


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