バッファロー’66 1999/08/25

「バッファロー’66」 
評価:★★★★
監督:ヴィンセント・ギャロ (1998 米)
出演:ヴィンセント・ギャロ
   クリスティーナ・リッチ
   ミッキー・ローク
   アンジェリカ・ヒューストン
   ベン・ギャザラ
   ロザンナ・アークエット
映画館:渋谷シネクイント(公開中)

ストーリー: 

アメフト優勝チームのカケ失敗による借金のカタに無実の罪をかぶり服役したビリー。出所後、カケの敗因となった八百長プレーの主の許へ復讐に向かう彼は、再会する両親にカッコをつけるため行き合わせた娘レイラを拉致、妻を演じさせるが・・・

所感:

ギャロ初監督作。
彼の先鋭的な映像手法が話題となった本作だが、内容はどこまでもキュートなラブ・ストーリー兼ロード・ムービー。映像手法にしても、主人公の心象を少しマンガチックに表現したもので、映画の文法を破るようなものではなく、観ていてとまどいは覚えない。

リッチ演じるレイラがギャロ演じるビリーを見つめる優しくて温かな眼差し。彼女が醸し出すあどけなさと母性が同居するファンタジックな雰囲気がフィルム全体を包み込む。「ベティちゃん」を彷彿とさせるアンニュイでキュートな身のくねり。インスタント写真でのポーズ。ボーリング場でのタップダンス。おねだりして勝ち取った「いっしょにお風呂」。そして寄りつ離れつの添い寝シーン。一生脳裏に焼き付いて離れないだろうこうした情景の断片がいとおしい。

あんな手荒なまねをしなくても彼女は付いて来たかもしれない。それほどに、無意味に焦燥感に囚われる彼を理解し、優しく、そして急速に愛が増して行くレイラの彼への眼差し。気付かぬはビリーのみ。そんな行き違いに観客はやきもきさせられどおし。劣等感と、愛の薄い両親の許での居場所のなさ。それでも親の愛を求めるビリー。それと対照的な復讐心。彼がレイラの存在を認識した途端、彼のこの複雑な心情は一気に瓦解する。急激にスピード感と彩りを増す映像で表現されるラストのこの開放感がたまらない。終映後劇場を後にする観客たちの笑顔が印象に残る。

レイラ役のクリスティーナ・リッチは「アダムス・ファミリー」のウェンズデー・アダムス役で有名。
最近では「アイス・ストーム」にも出演。幼児体型に宿る成熟した女の色香が醸し出す不思議なアンバランス感がこの映画を成功に導いたと言える。

シネクイントのこけら落としとなる単館上映作品で、平日でも映画館は超満員。レイトショーも行われている。ロビーでは撮影衣装やスチール写真などのプレミア・グッズも展示・販売されている。

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