完全なる飼育 | 1999/08/26 |
「完全なる飼育」(1999 日) 評価:★★★★★ 監督:和田勉 出演:竹中直人、小島聖、渡辺えり子、北村一輝、泉谷しげる 原作:松田美智子 上映館:テアトル新宿(終演/ビデオレンタル中) 30年前実際に起きた「女子高生略取誘拐飼育事件」をテーマにした作品。 故松田優作夫人、松田美智子氏によるドキュメンタリーを原作とする。 脚本は新藤兼人が担当。 誘拐された女性と誘拐犯との奇妙な親交を描いている点では、 デニス・ホッパー、ジョディー・フォスター競演の「バックトラック」を 彷彿とさせるが、ホッパーの思い入れが空回りしたこの作品とは比べ物に ならないほどの完成度の高さを見せるのがこの「完全なる飼育」だ。 名匠・新藤兼人の脚本は、この猟奇的ともいえる異常な事件から、 偏執的な「恋」がやがて相手に通じ、「精神と肉体の完全な共鳴」 という理想郷へと至る「純愛物語」を見事に抽出している。 そして、この脚本と「小島聖」という素材をを得た鬼才・和田勉氏は、 小作品としては目を見張る贅沢な俳優陣によって、その構想を十二分に 映像化することに成功している。 そんな中でも、主役の二人(竹中・小島)は完璧なまでに見事な存在感を 見せている。 竹中は、理想を超える「獲物」を前に戸惑い、尽くし、やがて彼女に征服される 中年男を見事に演じている。また小島は、誘拐直後の怯える少女が誘拐犯を愛する ようになる過程で、「守る」立場の少女から「与える」存在の女へと進化してゆく 様を、体温や息遣いを強く感じる生々しい演技で強烈に印象付ける。 監禁の舞台となったアパートの住人である、何れ劣らぬ奇人ぞろいの、 しかし憎めない6人衆が繰り広げるドタバタは、主人公たちの周辺に人間臭さを 漂わせ、ドラマが非現実的な「ファンタジー」になってしまうのをうまく 防いでいる。 ユーモアとシリアスなシーンとのバランスも絶妙。 非常に洗練された快作だ。 <koala> |