枕の上の葉 1999/09/01

「枕の上の葉」 (1998年 インドネシア) 
監督:ガリン・ヌグロホ
出演:クリスティン・ハキム、ヘル、スグン、カンチル
受賞:1998年第11回東京国際映画祭審査員特別賞
   1998年アジア太平洋国際映画祭最優秀作品賞
       同最優秀主演女優賞   


裕福な家の少年とストリート・チルドレン(浮浪児)との交流を描いた名作「青空がぼくの家」に引き続き岩波ホールが送るインドネシア映画。
実際のストリート・チルドレンたちがストリート・チルドレンを演じるというドキュメンタリー形式を取っている。「ママ」を中心とする家族のようなある「共同体」の辿る運命を追う展開に、テレビが流す世相・事件報道を挟み込むことで、社会構造の歪みが生む悲劇を個人的な視点と社会的な視点から描き出すことに成功している。完成度の高さと強いメッセージ性が感じられる。
演出力も高く、演じる底辺の子供たちや大人たちが実に自然な表情を見せている。

この底辺の者たちにも夢見ることを許す余裕があった「青空がぼくの家」に対して、本作品では夢など許されず、命さえも虫けらのように軽く奪い去られて行くという、救いようのない絶望感が満ちている。身元不明のまま、潰えた夢とわずかな遺留品を残してこの世から次々消えて行く子供たちを見るうち、ふと中島みゆきの「エレーン」が脳裏に流れた。救いは、荒れた生活の中でも優しさを失わない子供たちの心と、サロンで「恋はみずいろ」を合唱することで束の間の平穏を満喫するシーン。

インドネシアから紹介される作品は少ないが、部族間の抗争の歴史を描いた叙事詩あり、ドラマあり、メッセージ映画ありと、レベルは高い。

<koala>

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