女は女である 2000/05/05

■「女は女である」(1961年 仏伊合作) 評価 ★★★★ 
監督/ジャン=リュック・ゴダール (カラー作品)
出演/アンナ・カリーナ、ジャン=クロード・ブリアリ、ジャン=ポール・ベルモンド、マリー・デュボア、ジャンヌ・モロー
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■あらすじ
仲良く同棲する自転車選手エミールとショーパブダンサーのアンジェラ。アンジェラが急に子供を欲しがり出したことから、一騒動が持ちあがる。痴話ゲンカの末に親友のアルフレッドが当て馬に担ぎ出され・・・果たして喜劇か悲劇か、結末をお楽しみあれ。

■感想
ゴダール初のカラー作品。脚本自体は「勝手にしやがれ」以前に執筆されていたらしく、ゴダール自身は本作を処女作と位置付けているようだ。

テーマは、子供を産みたがる女。これが熱愛カップルに一騒動起こす。まぁ、女も女なら、男も男である。仲違いして「口を聞かない」宣言のあげく、カップルで夜な夜な書棚を漁って書名で「会話」するなんて、子供の喧嘩みたい。こう言うことを一晩中やってられる時点で、レベルが一緒というか、二人のノリは合いまくり。傍目にはひたすら妬けてしまう「痴話ゲンカ」。ずっとやってろ!ったくー!

とにかく幸福感に満ち、ポップな色彩と、カメラ目線さえ敢えて用いる舞台演劇風のキレのある演出がイケてる素敵なラブ・コメディ。カラーを満喫するように極彩色の衣装に身を包むカリーナは、天衣無縫の天使のように美しくキュート。

当時ゴダールと恋愛関係にあり、撮影直後の3月に結婚するアンナ・カリーナを主役に、自らの私生活を垣間見させるストーリーとなっている。劇中、アンジェラ(カリーナ)は「コペンハーゲンから出生証明書を・・・」というシーンがあるが、実際カリーナはデンマーク・コペンハーゲン生まれである。ガンコで高圧的なフィアンセ、エミール(ブリアリ)は、ゴダールの印象と重なる。

他のヌーベルバーグ映画のパロディもふんだんに折り込まれ、「地下鉄のザジ」の少女や、「ピアニストを撃て」のデュボアが特別出演して自らパロディを演じ、ベルモンドも「家に帰って『勝手にしやがれ』を観なきゃ」などとてらわない粋な演出。恋人たちの家のテレビに映っているのはアニエス・ヴァルダの「オペラ・ムーフ」だそうだ。「突然炎のごとく」のジャンヌ・モローもしっかりパロディに一役買っている。

秀逸なのは、アンジェラが好きな挿入歌として演奏されるシャルル・アズナヴールのシャンソン。結婚後見る影もなく変貌してしまった細君を嘆く歌詞は、アンジェラに愛のマンネリズムを気付かせる。

結局は恋人たちの当て馬役に終わってしまうベルモンド演じるアルフレッドがアンジェラに話す<いつも間違う女の話>もいい。「女は一人の男と正午に北駅で、もうひとりとは2時にイタリア門で待ち合わせる速達を出した。が、直後に、二人への手紙を逆に封入してしまったことに気付いて大慌て。急いで一人の男の許へ走る。手紙はまだ。事情を説明するとつまみ出される。ま、いいか。もう一人の許へ走ると手紙を読んだあと。怒っていない。で、事情を説明すると、やっぱりつまみ出された。手紙のあて先は間違ってなかったのだ。。。」

音楽は後に「シェルブールの雨傘」で一世を風靡するミシェル・ルグラン。歌を歌わないミュージカル、という難しい課題を見事に克服している。

ゴダールといえば難解というイメージがあるが、本作に限っては、時折出てくる文学批評や哲学批評を聞き流せば、エンターテインメント性の高い一級のラブ・コメディとして楽しめる。ゴダール入門に最適。これを足がかりに、「女と男のいる舗道」「男性・女性」「勝手にしやがれ」あたりに手を伸ばせばいかがでしょう。

<koala>

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