少女〜an adolescent 2001/10/03

■「少女 〜an adolescent」(2001年 日) 評価 ★★★★ 
監督・企画・製作・主演:奥田瑛二
出演/奥田瑛二、小沢まゆ、小路晃、夏木マリ、室田日出男、金山一彦
受賞/第56回ヴェネチア国際映画祭「国際批評家週間」正式出品/モントリオール国際映画祭2001「ニュー・シネマ・トゥモロー」正式招待
<渋谷シアター・イメージ・フォーラム、大阪OS劇場CAPにて公開中>
<チネチッタ川崎(10/6〜)/名古屋シネマスコーレ(10/13〜)/金沢シネモンド(10/8〜)公開予定>
 
□あらすじ
 背中一面に刺青を入れた43才の破天荒なスケベ警官と15才の少女との純愛。薄情な母、若き継父の陵辱、転校生の孤独・・・拠り所をなくした少女が警官にした愛の告白は「私とセックス、しない?」だった。

□感想
 奥田瑛二第一回監督作品。美術は出演もしている日比野克彦が担当。原作は連城三紀彦『少女』。
 申し訳ない!koalaテイストにはまり過ぎ!冷静な評価不可能!
 監督は、つい最近若い女の子と関係して年上の奥さんに叱られたばかりの奥田瑛二。懲りてないのか、衝動を映画に昇華させたのか。そこへきて、さすが奥田監督が選んだだけあって、この物語の成立の鍵を握る主演女優に抜擢された新人・小沢まゆの適材ぶりは感涙モノ。彼女を見つけたからこの映画を撮ったのではないかと思わせるほど、その所在無さ、寂しさ、翳り、幼い容貌と成熟した肢体のアンバランス、菩薩のような優しさと夜叉のような妖艶さ。その存在の全てが陽子そのもの。
 中年男と少女の組み合わせと言うことで、「視線のエロス」「フェリシアの旅」のような展開になるのかな?と予想しつつ鑑賞に及んだのだが、意外や、「高校教師」(アラン・ドロン)や「白い婚礼」(ヴァネッサ・パラディ)に近いテイスト。そう、年齢差からくる戸惑いを当人たちに感じない全くの純愛なのだ。フランス映画に疎い方には、野島伸司の「高校教師」を思い浮かべてもらうといいだろう。でも、運命に引き込まれるように恋に落ちるこうした旧作に比べ、本作では、まず片思いした少女が全身全霊を賭けて男に恋を仕掛けるところが新しい。身元も明かさず、書置きを残してホテルから消えるあたり、なかなかの高等戦術。果たして男=警官は心を奪われ、職権を濫用してまで必死に彼女の影を追い求める。してやったりなのだが、実は少女こそが、自分をキレイだと言ってくれて、探してもくれた男に対して愛を確信し、自分を肯定できる喜びをかみしめていたのだ。彼女の愛の契機は、男が、本作のキャッチコピーともなっている、「みんな自分のコトしか考えてない…」という諦観の対極の存在だったこと。素行不良警官でも、知恵の遅い少女の兄やボケた独居老人をさりげなく気にかける優しさを持つ男。あとは関係を続けるだけ?と思うや、物語は世代を超え少女と男を結ぶ恋の因縁をあぶり出し、刺青師という少女の祖父の生業が絡んで、意外な展開を遂げる。この複雑な構図が見え始める中盤からはスクリーンから目が離せなくなり、一気にラストへと予測不能なままストーリーは突き進む。ラスト・・・これがまた一転、作者の意図が痛いほどわかる愛らしい演出で、「三人」のささやかな行く末の安寧を祈らずにいられない。その無垢ぶりは「バッファロー'66」のクライマックスをも髣髴とさせる。

 監督を兼ねる奥田は、初監督作ということもあって力が入ったか、終始自意識過剰気味の演技。しかしそれが次第に、堕落しきった自分を執拗に求める少女に対する主人公の戸惑いと、どこか現実逃避した彼の生き様に重なり、不自然に思えなくなってくるから不思議。
 奥田演じる主人公と少女との恋物語としては、「恋 極道」(1997年/望月六郎監督/夏生ゆうな共演)が挙げられる。本作とは、社会の片隅で身を潜めるように、小さく小さく息づく男女の物語という共通項でくくることができる。これも、荒っぽい作りではあるが、本作に興味のある向きにはオススメの一作だ。

<koala>

koala TOP koalaの映画三昧 TOP koalaのミニシアター 映画メルマガ「movie times」 掲示板