LADY PLASTIC 2001/10/07

■「レディプラスティック」(2001年 日) 評価 ★★★★ 
監督/高橋玄
出演/小嶺麗奈、白石朋也、海津知香、崔哲浩、永倉大輔、力也、西岡徳馬、渡瀬美遊、石田純一(特別出演)、辻よしなり(友情出演)、中島史恵(友情出演)
<新宿武蔵野館(シネマ・カリテ)にて公開中>
http://www.hammers.co.jp/ladyplastic/
□紹介
 深谷用原作「レディ プラスティック」の映画化。
 新進映画監督・赤木と彼に見出された小劇団女優・霧島美映の短くも激しく哀しい愛の物語が、そして彼女の肉体が、彼女の死後30年の時を経て世界的名声を得るに至った監督の手によって再び蘇らされようとしている。。。美映は、日本人でありながらのその青い目によって激しい差別に晒されながら這うように大人になった。が、その目の美しさに魅せられた男が現れた。それが映画助監督の赤木だった。現実界で生の実感を得られない美映はいつしか、虚の世界にのみ生きる女優に憧れを抱くようになっていた。そして、恐らくは儚い自らの命をスクリーンに焼き付けることによって永遠のものにしようと。そして赤木との出会い。彼は彼女の主演作の処女脚本「森の瞳」を彼女と共に部屋に篭城して書き上げ、企画は承認された。が、クランクイン直前に女優の差し替えを言い渡され、失意の美映は自殺。作品の企画もオクラ入りとなった。
 そして30年後。世界的名声を得るに至った赤木は、彼女との秘められた約束を果たすべく、幻の「森の瞳」をクランクインさせた。主演女優の顔型から作られながら美映に瓜二つのレプリカを目にした監督はその瞬間、作品の企画を心に決めた。時を同じくして、出演者やスタッフの周りに怪事件が続発しはじめる。
 物語は、美映そっくりのレプリカを作った特殊メイクアップアーティスト・井上の回想の形式で進行する。そして、それにあわせて、特殊メイクの技法が彼によって事細かに解説される。こうした「思い入れ」の情熱や、一部を除き新進俳優で占められたキャスト、そしてデジタルカメラで撮影してレーザーシネマ技術によって35mmフィルムに焼き付けるという実験的手法の採用、そして幽霊や動くレプリカなどの怪奇現象の映像化のための涙ぐましい努力の跡・・・全編に手作り感とチャレンジ精神が漂い、完成度の高い自主制作映画といった趣で、観ていて楽しくなってくる。
 恋愛ファンタジーとは言え、人形が動いたり幽霊が現れたり、そしてそれらがCGといった""マンガ""ではなく実写画像を主に用いて撮影されているために妙にリアルでかなり怖く、スリラーが苦手な筆者はかなりの恐怖を覚えた。が、それを承知でわざわざ観に行ったのは、久々の映画出演となった主演の小嶺麗奈嬢に引き寄せられてに他ならない。そして、この作品の美映は、彼女でなければ演じることができなかっただろう。小劇団の看板女優、青い目、幻影、亡霊。それらにぴったりとはまり、それでいてオカルトっぽくならずに純愛感を出せる女優。シリアルキラー運転手とバスガイドの純愛を描いた「ユメノ銀河」同様、小嶺嬢がいなければ実現しなかった作品だ。逆に言えば、強烈な個性を持つ彼女を生かす事のできる数少ない脚本でもある。写真展を見てその「笑わない少女」ぶりに惹きつけられたという石井聰亙監督のラブコールで「水の中の八月」に処女出演、そして同監督による稀代の名作「ユメノの銀河」の実現。それから4年のブランクを経ての本作だ。B級作品とは言え、彼女のキャリアを確実にステップアップさせる作品だといえる。
 なお、小嶺麗奈も二十歳を迎え、ここにきて立松和平原作映画化の「光の雨」や金子みすゞを描いた「みすゞ」といった大作への脇役としての出演予定が相次いでいる。古風な出で立ちを備えた彼女なので、大体の役どころは想像がつくが、ぜひまた、その神秘性を生かす事のできる主演作との出会いを期待してやまない。

<koala>

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